http://www.asyura2.com/14/hasan91/msg/736.html
Tweet |
アップルを部品納入企業が提訴 他社に技術漏洩させ発注先変更、不当な減額要求の疑い
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141121-00010003-bjournal-bus_all
Business Journal 11月21日(金)6時0分配信
今年8月、アップルへ部品を供給するメーカー島野製作所(東京都荒川区・非上場)が、アップルを相手に独占禁止法違反と特許権侵害で東京地裁に提訴した。
提訴に至るまでの一連の経緯はすでに広く報じられているが、島野は電源アダプタのピン部分などを製造するメーカーであり、年間売上高は約30億円程度と小規模ながらも、技術力の高さには定評がある。アップル以外にも、米インテルや韓国サムスンなどへも製品を供給している。
島野は2006年からアップルとの取引を開始。07年にアップルがスマートフォン(スマホ)iPhoneを発売すると大ヒットし、その生産数量が急増した。そこでアップルは島野に対し複数回にわたり部品の増産を要請し、島野はこれに応じて生産体制を拡充させていった。この時期、アップルは島野に対し、新製品用のピンの開発を要請し、島野は技術流出を避けるために「アップルは島野と類似した製品開発を行わない」という合意の上で商品開発を行い、新製品をアップルに供給した。
しかし12年8月頃から、両社の関係は悪化していく。突如、アップルは新製品用のピンの発注量を激減させたのだ。これについて島野はアップルに説明を求めたが、アップルは「(島野の商品が使われる)電源アダプタの需要が大幅に減ったためだ」と説明していた。しかし裁判における島野の主張によれば、アップルは他メーカーに類似した商品を製造させ発注先を変更していい、島野側はこれまでにも「アップルが合意に違反して技術を流出させ、特許権侵害に当たる」と主張したが、これに対しアップルは「設計図が異なり、合意違反ではない」と説明したという。
島野は受注量の急減のため、大量の在庫と生産ラインを抱え赤字に陥り、取引再開のためにアップルが複数回にわたり要求していた減額要求に応じざるを得なかった。そこでアップルは取引再開の条件として、アップルが島野から購入済みの商品在庫についても減額後の価格となるよう、その差額として約159万ドル(当時のレートで約1億6000万円)をリベートとして支払うことを要求したのだ。
この時のアップル担当者から島野へ送付されたメールが、裁判で公開されている。
「リベートを払ってもらう必要がある」
「159万ドルを6月第1週までにアップルへ支払ってほしい」
「以下の口座に送金してください。バンクオブアメリカの(略)」
年商30億円規模の島野にとって1億6000万円は巨額である。この要求について島野は、実質的に決済まで終了した商品への値下げの強要であり、不当なリベート要求であると主張している。
一連の事態を受け、島野は開発・設備投資費用、生産ライン停止による赤字、不当なリベート要求などを損害として請求。また、特許権侵害対象商品の日本での販売差し止めを求めている。
筆者が取材したところ、本裁判においてアップル側は上記事実について一部事実を否認して争う姿勢であることが確認された。本裁判は現在審議中であり、その行方については現時点では不明だが、裁判で明らかになった事実が報道され大きな反響を呼んでおり、今後の展開に世間の注目が集まる裁判となっている。
●米大手IT企業との取引におけるリスク
筆者は日本企業に対するマーケティング・コンサルティングを多く行っているが、今回のような米大手IT企業から取引について、どう対応するのがよいかという主旨の相談が複数寄せられている。
日本メーカーの中でも特に技術に強い企業の場合、販売先は海外市場が大部分であるケースが多く、中でもアップルのような米大手IT企業からの発注は、発注数量が巨大で、開発要求の難易度も高い。そのため受注する側の企業は巨額投資を行い、独自の生産ラインを構築する必要に迫られる。よって、取引により一時的に売り上げが大きく上がったとしても、技術が社外に流用され発注を急に止められれば、大量の在庫と汎用性のない生産ラインを抱え、大きな損害を被ることになる。まさに一度食べたら要求をのみ続けるしかなくなる、「禁断の果実」となってしまっていることがあるのだ。
このほかにも、品質面のリスクもある。米大手IT企業が新商品開発を行うスケジュールは近年、28週間(約7カ月)ほどであるケースが多い。しかし日本メーカーは部品のリコール等で納入先や消費者に対して迷惑をかけないよう品質検査などの独自基準を設けており、米企業の要求スケジュールに応えて商品を開発しようとすると、その品質検査も十分にできず、品質リスクをはらんでしまう危険性が高い。
これにより発注元企業にとっても、商品の不具合により自社への信頼を棄損しかねないリスクを負うことになる。さらに今回のように裁判に発展すると、コストカットのための理不尽な要求の実態が公開された場合、企業イメージを大きく損なうリスクも負うことになる。結果として、短期的にはコストカットにより利益が上がるかもしれないが、長期的には企業ブランド価値そのものを毀損しかねないリスクを負うことになる。
加えて長期的には、発注先企業に無理な要求を続けていれば、本当の意味での協力関係も築けず、発注元企業の雲行きが怪しくなった時には取引先から一斉に切り捨てられるかもしれない、リスクが高い行為となってしまっている。
上場企業は短期的利益を株主から追求されるが、かといって自社の利益を求めるあまりに、長期的に企業として大切にするべきことを忘れてはいけない。その大切さを改めて考えさせられる裁判ではないだろうか。
昔の日本企業は、自社の目先の利益を追うだけでなく、そのような長期的な視点の大切さをわかっている経営者の人が多かったのではないだろうか。日本企業は長期的な視点を大切にするために、株式持ち合いなどで短期利益目的の株主から圧力がかかりすぎないように体制をつくってきた。そして取引先にも「尊敬される」ほどの対応をしてきたという逸話も数多い。それゆえに日本企業の中には、財務諸表には表せない、取引先との特別に強い関係性を築いた会社もあった。
この大切さを説いて、何のために自分たちが働くのかを語った経営者の言葉に、以下のようなものがある。
「商売や生産は、その商店や製作所を繁栄させることにあらず、その働き、活動によって、社会を富ましめるところに、その目的がある」(パナソニック創業者・松下幸之助)
企業として何を大切にするべきか、考えさせられるニュースではないだろうか。
福留憲治/ブランド・コア代表取締役
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。