02. 2014年11月20日 07:08:40
: jXbiWWJBCA
人間はお金の使い方に習熟していません『お金はサルを進化させたか』著者、野口真人氏に聞く 2014年11月20日(木) 谷島 宣之 「サルから進化してきた人類は知識や道具を持つようになったが、お金について賢くなったとはまだ言えない」 「人類が苦労して手にした、お金に関する理論や手法にどのようなものがあり、どういう効果があるか、分かりやすく解説したい」 こうした思いから、プルータス・コンサルティングの野口真人社長が著書『お金はサルを進化させたか』を出版した。 もっとも苦労したのは「ファイナンス理論、金融工学、確率論、統計論、行動経済学がどういう意味を持ち、どういうものなのか、それぞれどんな関係があるのか、全体像を分かりやすくまとめること」だったという。 (聞き手は谷島 宣之=日経BPビジョナリー経営研究所) 『お金はサルを進化させたか』という題名を最初見て、「お金は人類を惑わし、サル並みにしてしまう」、こう主張されているのかと思いました。 野口 真人(のぐち・まひと)氏 プルータス・コンサルティング代表取締役社長 1962年岐阜県美濃加茂市生まれ。1984年京都大学経済学部を卒業、富士銀行(現・みずほ銀行)に入行。ゴールドマン・サックス証券などを経て、2004年、企業価値評価会社プルータス・コンサルティングを設立、2000件以上の企業価値評価を行う。トムソン・ロイターによる2014年M&Aアドバイザリーランキングにおいて、独立系ファームで国内最高位を獲得。また、ソフトバンク、大和ハウス工業、電通など200社以上の上場企業に対し「業績条件付きストックオプション」導入のアドバイスを実施。著書に『パンダをいくらで買いますか? ストーリーで学ぶファイナンスの基礎知識』(日経BP社)などがある。(撮影:菅野勝男)
野口:人類をおとしめる意図はまったくありません。サルから進化してきた人類はその過程で様々な知識や道具を持つようになった。でも、お金という道具について我々は賢くなったとはまだ言えない。こういうことを題名で表現したかったのです。
この本を読めば賢くお金を稼いだり、使ったりできるようになるのですか。 野口:人類が苦労して手にした、お金に関する理論や手法にどのようなものがあり、どういう効果があるか、そのあたりを分かりやすく解説したのが本書です。金儲けや投資のハウツー本ではありません。 そもそも「必ず儲かる」という話はありません。株式市場や為替市場を正確に予想することは誰にもできません。それでも過去の動きを記録し、ファイナンス理論や統計学を用いれば、将来に向けて判断するときの一助となる予想を出せます。 その予想を受けて、どう判断するか、それは企業や個人それぞれの責任です。何もない状態で決めるより、判断材料があったほうがよいはずです。 ご質問に答えると、賢くお金を得たり使ったりする可能性が大きくなると期待していますが、そうなりますとは断言できません。 お金にかかわる理論や手法の全体像を示したい 人類が手にした理論や手法とは具体的にどういうものですか。 野口:お金には決済手段、価値の尺度、貯蓄手段という三つの役割があります。このうち、ものやサービス、事業や企業の価値を合理的に測る術として、ファイナンス理論や金融工学などがあります。貯蓄とは将来の不確実性への備えです。こちらについては確率論、統計論、行動経済学などがあります。 ファイナンス理論、金融工学、確率論、統計論、行動経済学がどういう意味を持ち、どういうものなのか、できるだけ分かりやすくまとめてみました。そうすることで「ものや事業の価値尺度」「不確実性への備え」「お金に関する心理」に関する先人たちの知恵を紹介できると考えたのです。 それぞれの理論や手法に関する書籍は沢山出ています。1冊に詰め込んだところが特徴ですか。 野口:各理論や手法は密接に絡み合っています。それぞれがどのような関係にあるのか、そういう全体像を示せないか。このことに挑戦してみました。 ご指摘の通り、ファイナンスや確率論、あるいは行動経済学の書籍は沢山出ています。とはいえ専門書は気軽に読めるとは言えません。一方、一般の読者に向けた啓蒙書になると読みやすくするためにファイナンスの世界の一部を切り出して説明していて、全体像がつかみにくい。 全体像といっても複雑なものではありません。ファイナンスの世界ではものやサービスが生み出すキャッシュフローから価値を測ります。想定しているキャッシュフローが将来得られるかどうか、不確実性があります。これをリスクと言います。大雑把に申し上げると、キャッシュフローとリスクから、ものやサービスの価値を導けます。 ところがものを売ったりサービスを手がけたり、行動するのは人ですから、その判断次第で価値が変わってしまいます。ここを追求したのが行動経済学ですね。また中途半端に確率論や統計論を使うと、かえって数字に惑わされ、誤った判断をすることもあります。 価値を導く基本の考え方とそれに影響を与える諸要素と関連理論、これらをひっくるめて全体像と呼んでいます。 ファイナンスは難しくない、学ぶ機会がないだけ お金に関する全体像について、人々の理解はどのくらいあると見ていますか。 野口:ほとんどないのではないでしょうか。多くの方はそうしたことを学ぶ機会がないからです。 私はMBA(経営学修士)のコースでファイナンスを教えています。講義の合間に、勘違いしやすいキャッシュフロー計算の例、錯覚を起こす確率論の例を挙げて質問します。MBAをとろうとしている社会人学生の方でも、ほとんど答えられません。繰り返しますが能力の問題ではなくて、学んでいないからでしょう。 たまたまMBAの例を出しましたが、私としてはごく普通のビジネスパーソンや学生の方に、ファイナンスの全体像を知っていただきたいと思っています。これが本書の執筆動機です。 お金に関する理論や研究、手法の開発はそれなりに進んできていますが、ファイナンスのプロが利用しているだけです。お金を使うことを避けて通れる人はいません。これまで得た知識を一般の方に伝えていく、これはプロの責務だと思います。 「人の金銭的価値はその人が将来稼ぐキャッシュフローから計算できる」といった主旨の記述が出てきます。要するに金持ちが偉いということでしょうか。 野口:違います。人の価値は貯め込んだキャッシュの額ではなく、キャッシュフローを生む力の大きさで決まるということです。意外に思われるかもしれませんが、ファイナンスの世界では人の価値をとても高く見ています。 よく「ヒト、モノ、カネ」と言いますね。これはキャッシュフローを生む力がある順番なのです。ヒトがいてこそ、工場のようなモノはキャッシュフローを生めます。一方、カネそれ自体はキャッシュフローを生みません。 キャッシュフローを生む力をさらに高めるために、企業はヒトに投資をしなければなりません。個人も同じです。限りあるお金をいかに有効に使い、いかに良いタイミングで自分自身に投資するか。この知恵こそが人生を豊かにするのではないでしょうか。 そこで最後の章にファイナンス理論を踏まえた人生論のようなことを書きました。説教をする資格など私にはありませんが、「ヒト、モノ、カネ」の話のようにファイナンスの世界の原則は案外、人生の原則でもあると思っています。 たとえば株式のオプション取引をみると、変動が激しい株のオプションに価値があるのです。強引な類推かもしれませんが、人生の価値も生まれた時から死ぬ時まで、どれほど寄り道したかで決まると考えられます。つまり、リスクがあったほうがよいわけです。 危険な道を行け、ということですか。 野口:リスクという言葉は誤解されています。不確実という意味で必ずしも危険ということではありません。もちろん危険につながるリスクもありますから、リスクマネジメントは必要です。本書に書いたような、価値を高め、リスクをマネジメントする考え方と手法を参考にして、不確実な人生を楽しんではどうでしょうか。 『お金はサルを進化させたか』(日経BP社) あなたはお金を賢く使っていますか? 買い物をするときあなたの脳はどのように働くのか。「お金の正しい使い方」「自分への投資」とは何か。本書は、ファイナンス理論、金融工学、確率論、統計学、行動経済学などを使って、「いかにお金を賢く使うか」を解説します。 「不動産の知識がなくても3分で自宅の価値がわかる」 「人はなぜ当らない宝くじを買うのか」 「銀座と渋谷の土地の値段はなぜ違うのか」 「なぜお金持ちはリスクを嫌うのか」 「なぜギャンブルにはまってしまうのか」 「なぜ人は生命保険に入るのか」 など、誰にでも起こる身の回りの出来事を取り上げながら、その裏に隠れているファイナンス理論や行動心理の理論を分かりやすく紹介。今までなんとなく漠然と行っていたお金について、その正しい使い方について深く考察していきます。 限りあるお金をいかに有効に使い、いかに適切なタイミングで自分自身に投資し、自分を成長させ、人生を豊かにしていくか、そのための知恵を得たい方に最適な1冊です。 http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20141117/273950/?ST=print
[12削除理由]:管理人:関係が薄い長文
|