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消費再増税延期はアベノミクスの失敗を意味する
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141117-00062220-diamond-bus_all
ダイヤモンド・オンライン 11月17日(月)8時0分配信
消費税率の10%への引き上げを延期するかどうかが大きな政治問題と化している。仮に延期したとすれば、それはアベノミクスの失敗の始まりである。なぜなら現在わが国経済の停滞の要因は、消費税8%への引き上げに加えて、円安でも輸出が伸びない経済構造、公共事業を追加しても資材や労働者の不足により事業が進まないというアベノミクスの第1の矢、第2の矢に想定外の事態が生じていること、加えて第3の矢は全く行われていないことにある。これをすべて消費増税だけのせいにして先送りすることは、アベノミクスの失敗を意味する。
● わが国経済が抱える課題
現在わが国経済の停滞は、消費税8%への引き上げに加えて、円安でも輸出が伸びない経済構造、公共事業を追加しても資材や労働者の不足により事業が進まないというアベノミクスの第1の矢、第2の矢に想定外の事態が生じていることではないか。
第1の矢である異次元の金融緩和で想定されていたストーリーはこうである。金融緩和による円安を通じて輸出が伸び、企業業績が改善され株価も上昇するというものである。しかし現実には、円安による輸出(数量ベース)は増加していないし、1ドル110円台を超える、これ以上の円安は輸入原材料価格の引き上げにつながるので、家計の購買力を奪い望ましくないという見解が出始めた。
デフレ・円高経済の20年で、わが国企業の海外への移転は予想以上に進んでおり、また経常赤字の状況では、わが国経済にとって望ましい通貨レートは安ければ安いほどいい、というものではなくなっている。
第2の矢である機動的な財政政策として行われた公共事業も同じである。
公共事業を拡大して需要を追加し、消費税率引き上げの経済インパクトを緩和しよういうのが想定されたストーリーであった。しかし現実には、資材や労働者の不足などにより公共事業はさっぱり進捗しない。無理やり執行させれば、コスト高で赤字となりかねず、また民間建設事業の足を引っ張ることになる。
このように、わが国経済の抱える問題は、需要不足ではなく、少子高齢化に伴う労働力不足という供給側に要因があることが分かってきた。これへの対策は、消費税増税を延期することではないはずだ。
● なぜ消費税増税が必要とされたのか
今回の消費税率引き上げは、社会保障・税一体改革として行われたものである。その趣旨は、少子高齢化の下でわが国の社会保障を持続可能なものにすること、社会保障の財源を可能な限り、現役世代で責任を持ってまかなうようにすること(後世代へのつけ回しを慎むこと)の2点である。
とりわけ前者においては、これまで消費税収が年金、高齢者医療、介護という高齢者3経費にしか使うことができなかったものを、少子化対策にまで広げたという意義もある。
つまり、一体改革は、わが国の少子高齢化などの社会・経済構造を変えていくことを目的として合意されたもので、短期的な経済情勢とは本来関係がないのである。そうはいっても、増税の結果、経済自体がこけたり、リーマンショック並みの経済変動が押し寄せるようなことも考えられるので、その際には実施時期を見直そうというのが、12年に成立した消費増税関連法の経済条項の趣旨である。
このような目で見ると、7〜9月のQE(GDP速報値)が年率2%前後成長している限り、経済の腰が折れたとはいえず、法律に決められた通り税率引き上げを行うべきだ。
● 国家に対する信認問題
もう一つ大きな問題は、日本という国家への信認の問題である。一度法律で決めたのだが、国民に不人気な政策なので延期する、という決断は、国家の信認を失いかねず、外国の投資家、国際投機マネーに「すき」を見せることになる。
国際投資家の中には、「日本は経常収支が赤字で、国内貯蓄も高齢化で底をついた、巨額の国債発行を国内だけでは引き受けることができない」というストーリーを作り、「日本売り」を仕掛けて儲けようとたくらんでいる連中がいる。民主党政権時代にも何度もこのような仕掛けを行ったが、失敗した経緯もある。
今は、“クロダノミクス”によって、日銀がほぼ無制限に国債を買い支えるので、国際価格が暴落するという事態は生じないが、このような異次元の金融緩和政策には必ず正常化に向けた「出口」が来る。
その際に国債市場で生じるかもしれない、国債価格暴落・金利高騰のリスクは、わが国にとって制御できないものとなる。
経済さえデフレを脱却すれば、増税なしで財政再建できるという意見があるが、金利が正常化する「出口」の姿は、2%の物価目標が達成された時とすると、金利もほぼその程度であろう。
その際、「名目成長率を金利以上に高く維持できれば、経済成長による税収増の方が、国債利払いより多いので、毎年その余剰分を国の借金の返済に充てることができ、その結果財政再建は可能だ」ということになる。
しかし「経済成長が金利より高くなる」ような経済運営が持続可能かどうか。その保証はどこにもない。デフレ脱却という事態が収束すれば、米国のように、「出口」を模索し始めることになるが、その際、金利の急騰(国債の暴落)を食い止めるためには、今から財政健全化に向けた努力が行われていなければならない。
金利が上がれば、わが国財政健全化が吹っ飛ぶくらいのマグマが生じる。1%金利が上がれば、平均的な国債の残存期間は7〜8年程度なので、その年数かかって国債残高に対して1パーセント分増えていく。1000兆円の国債・地方債残高があれば、1パーセントの金利上昇で10兆円の利払いが増えていく。1年当たりに直すと10÷8(国債の平均残存既刊が8年として)=1.25兆円となり、3%上昇すると4兆円弱の利払い増加となる。これに元本の償還が加わるわけで、そうなれば少々の消費税率の引き上げでは追いつかない。
今回の日銀の追加金融緩和は、まさにそこに向けてのメッセージ、つまり、日本銀行は与えられた職務を全うするので、政府のほうも財政健全化に向けた努力をきちんと行ってほしいということであるはずだ。
● ほとんど実行されていない第3の矢
消費税率を引き上げた場合に問題になるのは、デフレ脱却は可能なのかということだ。このカギを握っているのは、成長戦略がどこまで実行されるかという点である。
法人税率については、数年かけて20%台へ引き下げるという方向で話が煮詰まりつつある。しかしそのほかには、ほとんど手がついていないといってよい。
政府が取るべき対策としては、従来型の経済政策ではなく、わが国の体質を変える構造改革を行うということである。それは、少子高齢化対策を柱とすべきだ。その意味で、冒頭述べたように、社会保障・税一体改革により、これまで高齢者に偏っていた財源を勤労世代にシフトしていくこと、これから生まれてくる若者に、借金を背負わせることは可能な限り避けることである。
手が付いていない政策として、女性労働力の活用のための配偶者控除の廃止や年金制度改革がある。女性就労の妨げとなっている103万円や130万円の壁を打破する改革であるが、この点について政府の動きは鈍い。
このような成長戦略と消費税率の引き上げをパッケージで行うことが、「成長と財政再建」の両立ということになり、わが国経済は活力を取り戻しデフレ経済からの脱却につながっていく。
森信茂樹
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