http://www.asyura2.com/14/hasan91/msg/670.html
Tweet |
2012年の衆議院総選挙で街頭演説する安倍氏(撮影:尾形文繁)
解散総選挙で、株価はどうなるのか ハシゴを外されてしまった日銀
http://toyokeizai.net/articles/-/53413
2014年11月16日 草食投資隊:渋澤健、中野晴啓、藤野英人 東洋経済
突如、解散のようです。2012年12月、与党の絶対的安定多数で発足した第2次安倍政権ですが、それからわずか2年で「解散」の2文字が急浮上。アベノミクスはまだ道半ば。いったい何が、安倍首相を解散に駆り立てているのでしょうか。
藤野 解散すべきなのでしょうか。
中野 やるべきじゃないでしょう。
渋澤 党内の揺さぶりが狙いのような気がする。
藤野 解散総選挙後の議席数は大きく変わらないと思います。だから、安倍首相としては、閣僚や党内人事などポートフォリオを変えたいのではないでしょうか。
■目先のことしか、考えていない!?
渋澤 そう簡単には行かないでしょう。
中野 そもそも解散総選挙があるとして、そのテーマは何ですか。
藤野 ズバリ、消費税。
中野 10%への税率引き上げを先延ばしにするのか、それとも実行するのかということ?
藤野 消費税の10%への引き上げは三党合意によるものですから、引き上げをしないという選択肢は、さすがに考えにくい。
中野 税率引き上げの延期は、三党合意に反するのでしょうか。
藤野 これに関してはウルトラCがあって、逆に現行の8%を5%に戻すというウワサもあります。もちろん期限付きですが。
中野 まあ、でも正直なところ、解散総選挙を本気で考えているとは、思いもよりませんでした。
渋澤 解散は「国民の意を聴く」ためと言われるじゃないですか。ところが、今生きている日本人よりも、これから生まれてくる日本人の方が圧倒的に多い。社会保障の税の一体改革では明らかなステークホールダーですが、民主主義において「超サイレントな超マジョリティ」になりますね。
これから生まれてくる子孫が借金漬けの国を背負っていくことに想像力も働かせることが必要です。だから、目先の景気で消費増税を止めるべきだとか、延期するべきだとかいう議論に、未来志向が欠けているが本当に残念です。いかに今の政治が、目先のことしか考えていないかということの証左でしょう。
中野 にわかに吹いてきた解散風ですから、野党も準備は出来ていないでしょうね。
渋澤 野党は、選挙なんてまだまだ先だと、たかを括っていたのではないでしょうか。孫子の兵法に、相手の不備につけこむといった話がありますが、安倍政権がやろうとしているのは、まさにこれ。しかし、黒田日銀総裁からすれば、解散総選挙の話を聞いて、梯子を外されたと思ったかもしれないですね。
藤野 7〜9月のGDPが、相当悪いんだと思いますよ。事前予想では2%程度の成長率と言われていますが、恐らく下方修正するでしょう。
中野 企業業績は相当悪いのですか。
■株価は質の悪い上昇をしている
藤野 上方修正している企業もあるのですが、内需を中心に下方修正している企業がたくさんあります。企業だけでなく、個人の行動パターンも、想定していた以上に二極化しています。
今の日本には3つの階層があって、ひとつは絶対貧困層。ここは国の政策として対応していく必要があると思うのですが、その1段階上にはデフレ型の行動を取る人がいます。さらにその上はインフレ型の行動を取る人なのですが、なかでも問題なのはデフレ型の行動を取っている人たちです。
消費税率が引き上げられてから、この人たちの動きが鈍くなってきました。結果、かつてデフレ型の人たちから支持されてきたイオン、しまむら、マクドナルド、ワタミ、ラウンドワンといった企業の業績が、落ち込んでいます。考えてみれば、国内では人件費が高騰している半面、海外から原材料などを輸入している企業になると、どうしても業績は苦しくなってきます。
中野 7〜9月のGDPは悪いとして、今(11月上旬)はどうなんですか。
藤野 黒田バズーカ第2弾がさく裂した10月末以降、確かに株価は上昇しました。でも、ちょっと性質の悪い上昇という感がありますね。野田政権が崩れた時というのは、もう本当に谷底には水がないという状態で、そこにアベノミクスが登場し、新しい水をジャブジャブと注ぎ込んだわけです。でも、10月末以降の株価上昇というのは、水は流れてきているけれども、その水には廃油が混じっているというイメージです。
中野 株価が上がっているといっても、買いの主体は外国人投資家のマネーですよね。国内投資家は売り越しが続いていて、特に投資信託の解約が止まらない。国内投資信託全体で見ると、この10日間で数千億円の資金が、解約によって流出しています。これだけ平均株価が上がってくれば、以前なら個人投資家が買いに入ってきたのですが、株価が上がると売りが出てくる。それだけ生活者のマインドが冷えているということだと思います。
藤野 不況下の株高になる可能性がありますね。景気は後退しているけれども、金融緩和によって支えられている株高ですから、生活実感からすると、どうしても違和感がある。
ただ、株式市場を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。特に株式の議決権行使助言会社大手のISS(Institutional Shareholder Services Inc)が、「5年連続でROEが5%を下回る企業の取締役選任議案に反対を推奨する」という方針を打ち出してきました。
このインパクトは非常に大きいと思います。恐らくROEを改善するために、自社株買いを進めてくる企業が増えるのではないでしょうか。ただ、グローバル企業などは海外で稼いでいるから、日本国内にキャッシュがない。そこで借入を行って自社株を買う。この流れが広まれば、日本企業のROEは劇的に改善するはずです。
中野 でも、借金して自社株を買うというのは、いささか不健全ではありませんか。
藤野 ただ、米国の株式市場も同じことをやってきたという歴史はあります。米国内の産業が空洞化してしまい、外国にキャッシュが溜っていくなかで、米国企業は借入を起こして自社株買いを続け、それがROEを引き上げ、今の米国の資本市場を形作っています。だから、日本も数10年遅れで、似たような流れが来ていると考えられます。
■不健全ではあるが、全体的には正しい資本主義へ
渋澤 なるほど。
藤野 全般的にいうと、非常に不健全な形で、量でかさ上げされたマーケットがあるのですが、経産省の伊藤レポートによって企業と投資家の望ましい関係構築が提言されたり、東証が高ROE企業を中心に採用するJPX日経インデックス400を算出したり、あるいは金融庁がNISAで長期投資をサポートしていく動きを見せたり、というように、それぞれの動きは一見、バラバラに見えるようでいて、実のところ根底では、正しい資本主義の在り方が模索されています。
こうした動きが持続されれば、日本でこれから資本主義革命が起こるのではないか、とも言えるわけです。2015年の株式市場は、意外と面白いことになるかも知れません。
中野 今の話って、すべて安倍政権になってからですよね。安倍政権の政策に関しては、いろいろ毀誉褒貶ありますけれども、金融改革やコーポレートガバナンスなどに関しては、当たり前のことなのですが、今まで誰も言わなかったことを着実に実行しているという印象を受けます。今の株価上昇も、金融制度の抜本的な改革による賜物ともいえるわけですから、やはりこうした流れが止まらないようにすることが肝心でしょう。
藤野 政治と官僚、民間の一部で、かつての政財官のトライアングルとは違った、新しいトライアングルが出来つつあります。守旧派で、とにかく動かないというトライアングルではなく、今までの流れを一旦壊したうえで、何か新しい動きを出していこうというトライアングルです。
中野 今回の解散騒動に関しても、すごく前向きにとらえれば、目的は体制の立て直しにあると思います。小泉政権の時、郵政解散をしましたよね。あれは、郵政改革がなかなか進まなくなった状況を打開するため、解散というカードを切って、国民の信を問うたわけですよね。
結果的に小泉自民党政権は圧勝して、一気に郵政民営かを推し進めることができました。今回の解散も、これと同じに考えることができます。抵抗勢力によって成長戦略がなかなか進まなくなってきた。だから解散に打って出て、一気に規制改革を進めていく。そういう腹づもりなのでは。
渋澤 う〜ん。でも小泉さんはもともと「自民党をぶっ壊す」といって首相になった人だから、解散というカードを切って改革を推し進めるということもできましたが、アベノミクスは新しい成長を構築していくという性質が強いわけですから、解散という手段が本当に正しいのかどうか、そこはちょっと疑問です。
こうした政局の動きと照らし合わせて、海外のヘッジファンドなどは、恐らく解散総選挙までが株価のピークだと考えているはずです。しかも12月は市場の出来高が薄い時期ですから、事と次第によっては、株価が大きく崩れるリスクもあると思います。
中野 さっきの話ではありませんが、何かこう、日本の未来を変えるんだというような、素敵な選挙になりませんかね。
渋澤 でもね、それを任期の途中でやったらダメでしょう。任期を満了したうえで、その先のグランドデザインをしっかり描いて、次の選挙に臨むというのなら良いのですが。
■ハシゴをはずされた黒田総裁
藤野 まあ、今回は2人の閣僚の辞任もあり、安倍首相としては「泥だらけ解散」という感じもするのですが、泥をかぶって、それでも勝ちにいくという姿には、ある意味、迫力があります。
中野 ちょっと話が戻ってしまうのですが、いいですか。
渋澤 どうぞ。
中野 テレビなどで識者が、消費増税が延期された場合、国債の暴落が起こるなどと発言しているのですが、あれ、おかしいと思います。日銀はさらに国債を買うスタンスを強めていますから、ヘッジファンドなどが日本国債の売りを仕掛けたとしても、それは自殺行為でしょう。
渋澤 足元はそうでしょうね。でも、長期的には、国債市場が動かないことが一番怖い。日銀がどこまで国債を呑みこんでいくのか。
藤野 まさに何でも呑みこんでしまう「カオナシ」ですね。
中野 日銀という名のカオナシは、国債だけでなく、不動産や国内株式も呑みこんでいる。
藤野 それは黒田総裁も分かっていると思うのですよ。だから、日銀が出来ることをやって支えているうちに、政治が何とかしてねということだったのですが、今回の解散カードで、黒田さんはハシゴを外されてしまった。
渋澤 その意味では、今回の解散騒動を始め、消費税の引き上げの延長は、今後のリスク(不確実性)を高めると思います。
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。