04. 2014年11月17日 06:39:48
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イマドキ職場のギャップ解消法 高城幸司 【第126回】 2014年11月17日 高城幸司 [株式会社セレブレイン 代表取締役社長] 年収が増えないキャリアアップに潜む危険性あなたはキャリアップしたら年収もアップさせたいですか、それとも年収がアップしなくても構わないと思っていますか? キャリアアップ――。 自分の可能性を広げようと、資格取得や転職活動を頑張る人が近年、増えています。ところがキャリアアップを通して「年収はどれくらい増やしたいの?」と尋ねると、回答できる人は意外と多くありません。キャリアアップすれば、結果(収入)は自ずと後からついてくると考えているのでしょうか。いえいえ、どうやらそうではないようです。キャリアアップをしても、年収アップにはつながらないとはじめから達観してしまっている“諦め組”が多いようなのです。 せっかく努力したのに得るものがなくても構わないというのでしょうか?どうやらこうした思考になるのは、長い景気低迷の影響もあるようです。そこで今回は、キャリアアップに関するイマドキの実情について考えてみましょう。 「役職が上がっても年収は増えない」 それでもキャリアアップしたい人が9割 球団(プロ野球)事務所でたくさんの記者に囲まれての会見。緊張した面持ちでいる選手の第一声はこのようなものでした。 「球団側から『(自分に)残ってほしい』という気持ちが感じ取れなかったので、この度、チームを離れることにしました」 長年、お世話になったチームとの決別。これをFA(フリーエージェント)宣言と言いますが、今では秋の風物詩になりつつあります。FAとはいずれの球団とも選手契約を締結できる権利を持つ選手になること。通常、その権利を得るまで8〜9シーズンかかります。まさに自分の将来を自分で決められる貴重な機会です。ところが、多くの選手は現球団に残ります。「君には期待している。だから残ってほしい」と遺留され、その誠意で留まる決断をすることになるのです。 一方、FA宣言して別の球団のオファーを受ける選手も数名います。その理由として、よく挙げられるのが球団の態度です。ただ、このようなコメントをした選手が移籍先となる球団と高額な年棒で契約する様子を野球ファンは数多く見てきました。それゆえ、こうして球団を離れる選手に対して、 『いろいろ言っているけど、結局は「報酬>気持ち」じゃないの』 などとネット上でコメントがたくさん書き込まれているのをよく見受けます。プロ野球選手の活躍できる期間は、限られています。ゆえに高い報酬で移籍することが悪いとは思いません。ただ、その本音を隠した発言に疑問を感じてしまうのでしょう。 では、ビジネスパーソンの転職において、報酬はどれくらいの重要なものでしょうか? 転職の理由として頻繁に挙げられるのは、「報酬」といった直球な言葉より「キャリアアップ」でしょう。「長く働くためにキャリアップしたい」といった発言をよく耳にします。当方が人材紹介会社に勤務していたときにも、 「現在の職場でキャリアアップできるイメージが湧きません。なので、キャリアアップが可能な転職先を紹介してください」 とよく求められました。そんな要求に対して、「あなたにぴったりの会社がみつかりました!」と会社紹介をしたものですが、当時を振り返ると、 「そもそもキャリアアップって何を意味するの?」 と、その言葉に対して十分な理解ができていなかった気がします。おそらく周囲も同様だったのではないでしょうか?それだけ、キャリアアップの意味するものは、わかりづらいものなのです。取材した広告代理店の若手ビジネスパーソンからも、 「詳しい意味はわかりませんが、よく使う言葉です」 という言葉が返ってきました。 そこで、辞書を使ってキャリアアップについて調べてみると、 (1)高い専門知識や能力を身につけること (2)高い地位や経歴を得ること という意味が出てきました。“仕事上のなにがしか”を「極める」ことのようです。 ちなみに、エンジャパンの行った「キャリアアップ」に関する調査によると、約9割の方が「自分のキャリアアップについて考えている」という結果が出たそうです。ほとんどのビジネスパーソンにとってキャリアアップは興味のあるテーマであることがわかります。 では、キャリアアップとは前出の(1)(2)がゴールなのでしょうか?若手社員Aさんに本音を聞くと、 「もちろん。でも、最終的には報酬が上がることを期待してキャリアアップしたいです」 と話してくれました。 そう考えるのは、当たり前です。仕事ですから極めたら「対価」に反映されなければ意味がありません。キャリアアップで報酬がアップすれば、これまでの努力(資格を取るための努力や役職を上げるための社内アピール等)も報われます。ところが、そのあとにAさんが、 「でも、キャリアアップが報酬アップにつながるとは限らないんですよね」 と悲しげな言葉をつぶやきました。事実、役職や等級が上がって基本給が多少は上がったものの、ボーナスが減り続けていたので報酬が(ほぼ)変わらない状態の先輩社員の嘆きを幾度も聞いていたからです。ですから、Aさんのみならず、いくら頑張っても、 <キャリアップと年収アップを切り分けて考える発想> を持つ人が増えてしまっているのでしょう。前出のエンジャパンの調査でも、年収アップをキャリアアップの目的にする人は4分の1のみ。それ以外の人は、 ・明確な目標をもって仕事をしたいから ・自分の可能性を追求したいから といった回答です。当方には、なんとなく“本来の目的を置き去りにしたキャリアアップ”が注目されている気がしてなりません。キャリアアップの考え方は、本当にこれでよいのでしょうか? キャリアアップのため外資系へ転職 肩書きは上がっても報酬は同じうえ…… 取材した製造業に勤務しているOさん(38歳)は、日本企業から外資系の同業他社に転職。その理由は、 「管理職に登用されるまでの時間がかかりすぎる。もっと、テンポよく、キャリアアップしたい」 というものでした。責任ある仕事を任せてほしい、部下を指導する立場になりたい……そんな要望が以前の会社で叶えられる日を待つことができなかったようです。そこで、人材紹介会社にエントリーして転職先を探し、紹介を受けたのが欧米系の同業他社。まだ、日本法人が設立して数年のため、従業員規模は小さいものの、 「これまでの経験を活かしつつ、チャレンジできる役職でお願いできます」 と肩書きは課長から部長に大幅アップしたオファー(内定)をもらうことができました。 ここまではよかったのですが、問題は報酬。なんと、報酬は前職とまったく変わらなかったのです。よく転職に際して行われる「前職保証」という報酬レベルのスライドで条件提示がされました。 このOさんのような<肩書き、役割はアップして報酬はイーブン>という転職をする人が増えています。アベノミクス効果で企業の採用意欲は高まっていますが、採用時点での報酬レベルに対しては世知辛いものがあります。キャリアップと報酬アップの両方を勝ち取れる人はごくわずかです。 では、キャリアアップしたあとのOさんはどうなったでしょうか? 肩書きが上がれば、求められる仕事のレベルも上がります。それをこなせて当たり前、逆にこなせなければ失格となります。Oさんは初めて就いた部長職としてそれなりに頑張りましたが、1年後の人事評価は芳しいものではありませんでした。結果として年棒制の報酬は翌年には大幅にダウンしました。キャリアアップして報酬が同じであれば、それは将来の年収ダウンを意味する可能性があると痛感させられる出来事になりました。今年も頑張らないとさらに年収ダウンの可能性があります。果たして、キャリアップを目指したOさんの転職は成功だったのでしょうか? こうした結果を招いたのは、キャリアアップと年収アップを切り分けて考えるという決して“健全ではない発想”があったから。本来はキャリアアップと年収アップは一緒に考えられるべきものです。下手に前職保証でキャリアアップするオファーを受けたりすると、あとで後悔する可能性があることを肝に銘じておきたいものです。 http://diamond.jp/articles/-/62226
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