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2005年10月からブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨ストラテジー部門グローバル・ヘッド。それ以前は、HSBCバンクUSA、メロンバンクでチーフ通貨ストラテジストを歴任。ノーザン・イリノイ大学修士号(米国史)、ピッツバーグ大学修士号(国際政治経済学)取得。1990年〜ニューヨーク大学で教鞭をとる。著書に”Making Sense of the Dollar"
方向性の相違から、ドル円は来年125円視野 BBHのマーク・チャンドラー氏に聞く
http://toyokeizai.net/articles/-/53471
2014年11月15日 大崎 明子:ニュース編集部長 東洋経済
FRB(米国連邦準備制度理事会)がQE3(証券の大規模な購入による資金供給策)を今年10月に終了し、市場が注目しているのは、利上げの時期とペースだ。ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの通貨ストラテジー部門グローバル・ヘッドで、"Making Sense of the Dollar"の著者でもあるマーク・チャンドラー氏に相場見通しと、米国経済、金融政策の行方について話を聞いた。(インタビューは2014年10月21日)
――足元から2015年にかけてのドル円相場の見通しは?
ダイバージェンス(相違、分岐)に注目している。米国と英国は金融緩和を脱して利上げに向かい、日本と欧州は金融緩和を拡大するという正反対の方向にある。ドルとポンドは強くなる方向で、円とユーロは弱くなる方向にある。
このところの為替相場はレンジが動いていく形になっている。ドル円相場は1ドル=105〜110円だったものが、110〜115円になり、いま115〜120円へ動いている。今年末は1ドル=120円を目指す動きで、来年の中ごろには1ドル=125円がターゲットになるとみている。
ただ、米国経済は良好だが健全とは言い切れず、米国の利上げもスローペースとなる。そのため、急激なドル高が起きるとは考えていない。ユーロは対円でも弱くなる方向だ。
■米国は2015年半ばから利上げ、四半期ごとに
――FRBは予定通りに、10月にQE3を終了しました。利上げの時期とペースを、どう見ていますか。
利上げ開始時期は8カ月後、来年の真ん中ぐらいというのが、共通した見方だ。米国の経済にはなお、脆弱な部分があり、利上げのペースはゆっくりしたものになるだろう。グリーンスパン時代のように会合のたびに毎回25ベーシス(0.25%)利上げするというのではなく、四半期ごとに25ベーシス上げていくと見ている。したがって、2015年は2回だろう。あと8カ月あれば、FRBの2つの使命である物価の安定と雇用の最大化が達成できているというのが見通しだ。
――米国の雇用は順調に回復してきましたが、インフレ率は2%の目標には達せず、下振れぎみです。
2点ある。第1に、CPI(消費者物価上昇率)総合はエネルギーと食品の価格下落により下がっているが、重要なのはCPIコア(欧米型コア、エネルギーと食品を除く)だ。第2に、住宅コストが上がっている。住宅価格が上昇しているので、帰属家賃も上昇してくるとみている。
失業率は目標(6.5%までゼロ金利を続けるとしていた)を超過達成している(今年10月5.8%)。失業率とインフレ率はトレードオフの関係にあるので、インフレ率が低下する余地は少なく、改善してくる可能性が高い。FRBが注視しているコアPCEデフレーター(個人消費デフレーター)が下がっていくことは考えにくい。
■米国の利上げのターゲットは2.00〜2.50%
――FFレート(政策金利)引き上げのターゲットとなる水準は?
前回のピーク(グリーンスパン時代)は5.50%だが、とてもそこまではいかない。私はインフレ率程度で、2.00〜2.50%と見ている。達するのは2017年の半ばぐらいだろう。
――市場のコンセンサスは3%台なのでは?
市場の見方には疑問を持っている。これまでも高すぎる見通しが修正されてきた。また、市場が参考にしているFOMC(公開市場委員会)のドットチャートや議事録は地区連銀総裁も含めたFOMCメンバー全員の見通しを入れているので、市場に誤解を与える内容となっている。FOMCにてリーダーシップを取っているのは、イエレン議長、副総裁のフィッシャー、NY連銀総裁のダドリーで、そのメッセージは声明文に出ている。3人の発言から判断すべきだ。
――利上げが十分に出来ていなければ、次の景気後退が来たときに、対応できないのではないですか。
米国経済が悪化する場合のトリガーが何であるかによる。2008年の金融危機はかつてない大きな落ちこみだった。だが、通常のリセッションであれば、1〜1.5%の利下げで対応できるものだ。それよりも、足元で再び、金融緩和が必要になるような事態、QE4は避けたいというのがFRBの総意だと思う。
――ピーク時の金利が2%台と言うことは米国経済そのものに弱気ですか?米国の潜在成長率をどのくらいと見ていますか。
成長率は労働力と生産性の2つの要素で決まるが、2.5%ぐらいだろう。労働力の伸びが1%程度で、生産性の上昇も1%台と見ている。
米国は、出生率が2.1人で、他の先進国よりは維持できているが、移民の伸びがかつてよりも落ちるし、高齢化も進んでいるので、労働力の伸びが鈍化する。
生産性の測定は難しい。既存の測定方法は製造業を前提にしているが、産業構造は製造業中心から、サービス産業中心に移っている。例えば雑誌編集者の場合、記事を同じ期間に5本ではなく20本書けば生産性が上がったと言えるのか、という問題だ。一般論で言えば、生産性を上げる方法は、インフラを整備することと省力化を進めること。省力化の一つはエネルギー効率の改善で、もう一つは、コンピュータ革命だ。
コンピュータ革命は未だ終わっていない。3Dプリンタの次は、4Dプリンタという話が出ている。モノの形が時間の経過とともに自己変形していくものだ。スマートファブリックのような繊維革命もある。そうした革命で製造業が東アジアから米国に戻ってきているという変化もあるので、将来は、生産性が上がる可能性がある。
■先進国の問題は資本余剰
――先進国の長期停滞ということが言われる一方で、これまで高成長を続けてきた中国も課題を抱えて内向きになっています。
確かに、外交面では南シナ海でベトナムやフィリピンなどとも衝突があり、国内の構造改革でも課題を抱えているので、市場も中国を注視している。成長率は10%から足元7%に低下しているが、さらに5%に下がっていくと思う。
ただ、中国は外貨準備高が4兆ドルある。4兆ドルあれば、多くの問題は解決できる。1989年から中国のGDP(国内総生産)は24倍になった。汚職や環境汚染の問題を解決できれば、過去のような高成長ではなくても、中長期的に強い経済を手に入れることができるだろう。
――世界的に成長のフロンティアが消滅してきている。
問題はおカネがありすぎる(too much money)ということだ。過去の経済では「欠乏」が問題だったが、いまは「過剰」が問題になっている。米国など先進国では、いま貧しいとされる人たちも2〜3世代前の金持ちより豊かな生活を送っている。モノも食べ物も資本も不足していた時代から、有り余る時代になってきている。資本余剰が低金利の原因だ。
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