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森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 恩を仇で返す農協改革()
http://www.asyura2.com/14/hasan91/msg/618.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 11 月 13 日 23:40:05: igsppGRN/E9PQ
 

森永卓郎の「経済“千夜一夜”物語」 恩を仇で返す農協改革
http://wjn.jp/article/detail/0974408/
週刊実話 2014年11月20日 特大号


 政府が来年の通常国会に提出する農協法改正案の内容が明らかになった。私が一番驚いたのは、全国農業協同組合中央会(JA全中)の事実上の廃止を打ち出したことだ。

 JA全中というのは、全国の地域農協を束ねるナショナルセンターだ。ちょうど、全国の労働組合を束ねる連合のような存在だ。ただ、連合と異なるのは、JA全中の場合は農協法に基づく法人で、地域農協の指導・監督の権限を法律で担保されていることだ。

 全中は、自民党政権をずっと支えてきた。戦後、GHQの指令で農地解放が行われ、日本からは大規模農家が消えた。小作農に田畑が分割譲渡されたからだ。共産主義運動が農民運動と一体となることが多いことからもわかるように、農家は基本的に平和主義・平等主義だ。ところが、日本が共産化しなかったのは、保守本流を自認する自民党とJA全中が蜜月関係を築いてきたからだ。

 自民党農林族が、積極的な農家保護策をJA全中と肩を組んで打ち出し、そして農家が選挙で自民党をしっかり支援するという仕組みが、自民党の長期政権を可能にしてきたのだ。

 その仕組みは、最近まで続いていた。例えば、今年2月20日にJA全中は、「TPP閣僚会合において国会決議を実現する緊急全国要請集会」を開いた。集会に出席した自民党石破幹事長(当時)は、重要5品目を守るとした国会決議に関して、「遊びや冗談で脱退も辞さずと書いたのではない」と、聖域を断固守る決意を表明した。

 ところが、その自民党政権がJA全中から地域農協への監督指導権を奪い、単なる公益法人に格下げする方針を打ち出したのだ。

 建前の上では、地域農協の自由度を上げて高付加価値農業への転換を推進するということになっているが、そんなことは言い訳に過ぎない。自民党の本当の狙いは、農家の切り捨てだ。
 昭和35年に600万戸を超えていた農家は、すでに250万戸に減っている。もう、農民は選挙の役に立たない。一昨年の総選挙でも、農林族の大物が次々に落選した。しかも、農林族の多くが平和主義・平等主義を掲げるリベラル派だ。TPPに反対するような足手まといは、さっさと切り捨ててしまおうという考え方が、JA全中の実質廃止を打ち出した背景なのだ。

 私は、恩を仇で返すような自民党のやり方が、好きではないが、一番気になることは、これが日本の農業が壊滅に向かうきっかけになるのではないかということだ。

 日本の零細農家の一番大きな特徴は、農業をビジネスとしてやっているのではないということだ。市場原理で考えれば、利益などまったくないのに、農業を続けているのは、それが道だからだ。だから、彼らはコストや手間がかかっても、安全でおいしい農産物を作ろうとする。

 例えばアメリカは、遺伝子組み換え作物の最大の生産国だし、ポストハーベストといって、収穫後の作物に害虫発生を防止するための農薬を散布したりする。そのほうが、利益が増えるからだ。

 農の世界に市場原理を持ち込むことで破壊されるのは、農家の生活だけでなく、我々の食の安全でもあるのだ。


 

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コメント
 
01. 2014年11月14日 00:13:34 : ETLmcZSDko
JA全中、JA、農業お多くはTPPを受け入れる代わりに、ソーラー発電風力発電等やその売電、その他事業を自由化させてもらえれば、TPPでもビクともしませんよ。
理由がわかりますか?

02. 2014年11月14日 00:22:11 : ETLmcZSDko
01です。
誤記訂正。
農業お多く → 農業の多く

03. 2014年11月14日 00:55:33 : Fg4tg1weJ2
コストが高い電力を買う人が居るか?
ドイツの実験で、答えが出てるのでないか?

コストが高いと自然淘汰されるのが、自然の摂理。
政府が奨励しても、政府は永遠で存在しないわな。
今の自民党が消滅するのでないか?
戦争国家、弱肉強食へと暴走しているわ。

こんな社会が続くと思わないね。

農協は、今こそ反自民で徹底抗戦しないと、消滅するぞ!
自民党は、TPPは行いませんとの約束違反をも犯している。
大義は、農協にあるのだ。
農民の土地が安く買い叩かれ、国土保全・環境保全は出来なくなってくる。
これでは、我慢できない。
農協にエールを送ります。


04. 2014年11月14日 01:09:08 : LBtbDXFoS6

森永卓郎氏の以下の言葉を読んで思い出したことがある。

>日本の零細農家の一番大きな特徴は、農業をビジネスとしてやっているのではないということだ。市場原理で考えれば、利益などまったくないのに、農業を続けているのは、それが道だからだ。だから、彼らはコストや手間がかかっても、安全でおいしい農産物を作ろうとする。

私が住むのは都市部に近い零細な兼業農家が多い地域だが、昔、農業資材や種子を売る店の人からこんな話を聞いた。

「今の高齢者だからまだこの地域でも農業をやっている。
そうしたお年寄りには、田畑があるなら(たとえ兼業であっても)手間が合おうが合うまいが、耕して作物を作るのが当たり前だという習慣が染み付いている。それが昔からの農民の『暮らし方』だった。
しかし、今の若い者は自分が会社や工場で働いている時の時給で考えるから、農作業に掛ける時間をそれから得られる収入金額で割って、そんな『時給』ではバカらしくてやれない、だったらその分、パートでも行って賃金を得た方がい、と考える」と。

現在、当時の高齢者は次々に亡くなったり、介護施設に入所したりして行く。当然、耕作地は放棄されていく。
たまに農家でもなかった退職サラリーマン夫婦などが僅かに畑を借りて「市民農園」的に野菜など作る姿は見られるが、元の兼業農家の若い世代が出荷できるほどの農業などはしそうにないし、おそらくは出来ないだろう。



05. 2014年11月14日 06:21:24 : jXbiWWJBCA
農協は日本の農業の高度化を阻害してきた主役。

06. 2014年11月14日 07:08:16 : U0wdOIVPEY
05<<農業の高度化

高度化とは具体的にはどういうことでしょうか?


07. 2014年11月14日 08:15:23 : ETLmcZSDko
01 02です。
03さんはソーラーは発電を導入した、或いは導入しようとして見積もりとった事がありますか?
よく見ればわかりますよ。

08. 2014年11月14日 11:26:59 : nJF6kGWndY

農協はどうでも良いが、食糧安保にこだわるなら

大規模農家への補助金を、きちんと考えた方が良いだろうな

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42177 
大規模コメ農家を吹き飛ばす米価暴落 その農業改革案では甘すぎます(その22)
2014年11月14日(Fri) 有坪 民雄
 米価が下落しています。購買力平価を考慮した実質米価は1俵あたり1万3000円を割るという、戦後最低水準を更新しました。1俵は約60キロなので、一般に使われる30キログラム入るコメの出荷袋に換算すれば6000円ほど。いよいよ、大規模コメ農家の大崩壊が始まる水準まで下落したと言えそうです。(参考:「米価は歴史的な低水準」、森島賢、農業協同組合新聞)
 これまで筆者の連載を読んでこられた読者なら「コメの価格が下がったら大規模農家だけが生き残る」といった考えが間違いであることはご理解いただけていると思いますが、そうでない方のために再び解説をしておきましょう。
 表をご覧ください。これは、米価と栽培面積によって、どの程度の収益が上がるのかを示しているものです。10アールあたりの収穫量を510キロ(30キログラム入り米袋で17袋)とした場合の売り上げから、生産費を引いたものです。栽培面積ごとの生産費の算出には、農水省が公開している「規模模別平均生産費」を使用しています。赤い字は文字通り“赤字”であることを意味します。
米価(円/30キログラム)と栽培面積(ヘクタール)によってどの程度の収益が上がるのか
 まず、米価1万円(1俵あたり2万円)の欄をご覧ください。このくらいの価格水準ですと、生産を倍にすると倍以上儲かる「規模の利益」が働いていることが分かります。「コメも大規模にしたらコストダウンができて儲かる」という、よくある主張は、この程度の価格水準ですと確かに正しいのです。
 しかし、価格が低下していくと大規模農家ほど利益がどんどん減っていき、6000円では10ヘクタールの規模の農家でも赤字に転落します。
 10ヘクタールもの規模でやって赤字なら、規模の小さいところはさらに大変かと思われることでしょう。しかし、確かに赤字は赤字なのですが、赤字がそれほど巨額になるわけではありません。日本で一般的な零細コメ農家は、1万円で売れていた時代ですら赤字だったのです。価格低下によって赤字幅も広がりますが、規模か小さいので価格がこれ以上下がったところで約8万の赤字が10万前後になるだけです。この程度の赤字ならたいして痛くもないですから、零細農家は「儲からんなぁ」と言いながらも継続することは可能です。
 しかし多くの人の言う通り、そして政府の言う通りに大規模化への道を走ってきた人たちにとっては、収穫の秋を迎えるたびに何百万もの赤字が積み上がっていく・・・言い換えれば、米価が低下して大規模農家から先に潰れていく時代になったということです。
大規模化しても儲からない理由
 「いや、今まで以上に大規模化すれば大丈夫だ」とおっしゃる方がいるかもしれません。しかし、そういう方は現実が分かっていません。
 もともと収穫期は1カ月、長くても45日程度しかありません。機械(コンバイン)の能力は、大型ですと1日2ヘクタール以上こなせる能力がありますが、圃場の移動や籾の搬出などに時間を取られますから、現実的には1日に1ヘクタールの収穫が限界というところが多いでしょう。
 さらに雨が降って稲が濡れていたらコンバインを傷めますから、毎日稼働できるわけでもありません。稲が乾いていても水田も乾かないとぬかるみにコンバインがはまり込んでしまうので、2〜3日稼働できないなんて当たり前。台風などで稲が倒れていたりしたら、さらに収穫作業のスピードは落ちます。
 20ヘクタールも収穫するのは、機械が入りやすい大規模圃場ばかりといった、それなりに条件が揃ったところでの話です。中山間地の多い日本では、コンバイン1台で年10ヘクタールやるのがやっと、あるいはもっと少ない面積しかやれないこともよくあります。
 しかも20ヘクタール以上、30ヘクタール、40ヘクタール作ってもコストダウンはこれ以上は進みません。そもそも20ヘクタールというと東京ドーム4個分よりもっと広い面積ですが、それだけ作って儲かるのが940万円なら、坪あたり利益はたった141円に過ぎません。不作や台風などで大きな被害が出たら即赤字になる水準だと言ってもいいでしょう。これでは500万円、1000万円と平気でかかる機械の更新費用も出すことができません。
 これでは大規模コメ農家はやっていけません。機械の更新時期が来た大規模コメ農家はどんどん退場していくことになるでしょう。
 彼らがコメ作りをやめると、これまでとは比較にならない大規模な耕作放棄地が出現することになります。大規模なコメ農家は、それだけ作っている面積が大きいですから、1軒がやめたら東京ドーム何個分もの耕作放棄地が出現してしまうわけです。
 そして残っているのは、政府がつぶそうとしていた零細農家だけということになります。しかも、彼らは大きくやれば潰れることになるのが分かっているから規模拡張はしません。
農村が荒廃してもかまいませんか?
 さて、ここで問題です。
 このまま大規模コメ農家が農業から離れていくと、地域の農地保全が不可能になります。今までは、離農する人の農地を、大規模化していくコメ農家が引き受けて耕してきたからです。日本の農村の多くの地域が、ビルのない米国・デトロイトのような状態になるでしょう。
 そんな状態にしたくなければ、政治的に米価を上げるか、大規模農家に対してこれまで以上に大きな支援を行わざるを得ません。しかし、多くのメディアに跋扈している、政治と経済の区別がついていない市場原理主義者の声は、今なお大きなものがあります。
 コメの年間1人あたり消費量は60キロ程度です。現在、市中に出回るコメの価格を10キロ3500円とすると、1人が年間2万1000円分のコメを消費している計算になります。これをもっと安くしたい、これより高くなってほしくないと消費者が考えるのは当然ですが、かつてないレベルにまで農村が荒廃してもかまわないというのでしょうか。農村の荒廃と引き替えにしてまでもコメを安く食べたいのでしょうか?
 それでもいい。大規模農家が退場したら供給が減って米価も上がるだろう。そうしたら企業が代わりに参入する、みたいなハードランディングを予想されるなら、もうそれ以上は何も申し上げることはありません。1993年のようにコメが不足するようになったら、世論に押されて政府は必ず輸入に走ります。それでも企業が参入するのか、などと言っても、詮無きことです。
 個人的には、今なお市場原理主義を信奉する人にマリー・アントワネットのごとく「コメがだめなら、野菜を作ったら?」なんて言われないことを祈るのみです。

【もっと知りたい! あわせてお読みください】
・「『コメをやめて野菜を作れ』は無茶な要求」
( 2013.10.25、有坪 民雄 )
・「農業は大規模化でコストダウンできるのか?」
( 2011.03.18、有坪 民雄 )


http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20141112/273728/?ST=print 

農地を守るのは牛だ「補助金依存」脱皮の切り札
2014年11月14日(金)  吉田 忠則


 迫り来る耕作放棄の危機をふせぐには、どうしたらいいのだろう。その答えを求め、新しいタイプの様々な経営を紹介してきたが、事態を打開するにはもっと根本的な対策が必要だ。風にそよぐ稲穂の田んぼから、牛が遊ぶ草原へ――。日本の風景を変えるような挑戦がいま求められている。
放棄地で牛が麦を食べる
 11月5日、栃木県南東部の那珂川流域にある瀬尾亮の農場を、農水省や県の職員、研究者など約80人が訪れた。「ここは農地がせまく、典型的な中山間地です。放棄地になるのは当然です」。

放牧について説明する瀬尾亮さん(栃木県茂木町)
 マイクを手に瀬尾が話したように、そこには広大な放棄地が広がっていた。面積は3ヘクタール強。2メートル以上伸びたススキなど様々な雑草が繁茂し、ひとが分け入ることのできる状態ではない。もとはタバコ畑だったが、採算の悪化と高齢化でつくり手がいなくなり、ジャングルのように荒れはてた。
 ところが、瀬尾が立つ一角は様子がちがう。整然と生えそろっているのはライ麦だ。その長方形の畑を、電気のとおった特殊な柵が囲んでいる。
 「ストリップグレージング(制限採食)をやります」。瀬戸がそう言って畑の一辺の電柵をずらし、ライ麦を柵の外に出すと、牛たちがのっそりと近づいて食べ始めた。畑は牛のエサ場なのだ。
 じつは、この畑も以前は雑草が生い茂る放棄地だった。瀬尾は2009年にここに牛を入れ、雑草を食べさせた。ひとにとっては邪魔な雑草でも、牛にはエサになる。そうやって牛が荒れ地をきれいにしたあと、ライ麦や牧草などを植え、引き続き、牛を放牧させている。
 海上自衛官だった瀬尾は2002年に退職して妻の実家にもどり、農業を始めた。山あいという立地をいかし、原木シイタケの栽培をしていたが、先行きを心配し、始めたのが畜産だった。
 そんな瀬尾の挑戦に自治体が注目した。役場や農協から瀬尾のもとに、つぎつぎに放棄地の再生の依頼がくるようになった。いま放牧地は3.6ヘクタール。どれももとは放棄地だ。

荒れはてた放棄地でも牛は開墾できる(栃木県茂木町)
 放牧で放棄地を解消するメリットは、雑草の除去作業がそのまま家畜の飼育につながる点にある。パワーショベルやブルドーザーといった重機を借りたり、作業を委託したりするのと比べ、コストは低い。しかも、家畜の排せつ物は肥料となって、地力の向上にも役立つ。
 と書くといいことずくめのようだが、では放牧は採算の合う、持続可能な農法なのだろうか。放棄地の開墾は目的のひとつだが、そのあと放牧を続けることができないなら課題はもとにもどる。
水田で牛が稲を食べる
 「放牧の実態をみると、牛の移動や観察に時間がかかり、必ずしも省力化できておらず、低コストでもない」「冬場、放牧できない牛をどうするのか。放牧の話だけをしていてもだめだ」
 この日の集まりで、出席者のひとりがさかんに発言していた。農研機構・中央農業総合研究センターの千田雅之。補助金に依存しない放牧の実現を目指し、奔走している研究者だ。
 この約1カ月前、畜産農家と千田が組み、効率的な放牧に挑戦している茨城県常総市を訪ねた。いちめんに広がる田んぼの一角で、数頭の牛がもくもくと草を食べている。瀬尾が実演したのと同じ、電柵をずらしてエサを食べさせるストリップグレージングだ。
 ちがうのは、牛が食べているのが稲だということだ。ここからが本題。日本の農業でもっとも高齢化が深刻で、田んぼで耕作放棄のリスクが高まっている。その農地を、これからどう活用し、維持していくかが最大の課題だからだ。
 牛が食べている稲の高さは数10センチ。よくみると、茎の根もとは枯れている。じつは稲刈りが終わったあと、のこった茎から新たに生えてきた若い葉と茎が牛のエサになっているのだ。
 事前に収穫した稲も、牛のエサだ。茎も葉も実もまるごと裁断し、発酵させて貯蔵用のエサにする。ほかの田んぼでは水を張らず、春先から秋口ごろまで牧草を生やしてエサにしていた。放牧を完成させるため、農地という経営資源を徹底的に活用しているのだ。

千田雅之さんが挑む水田放牧(茨城県常総市)
 誤解をさけるためにふれておくと、稲を使ったこの発酵飼料は、農水省がさかんに推奨するエサ米とはまったくの別物だ。エサ米は、ひとが食べるコメのようにモミを収穫する。発酵飼料は稲全体がエサになる。とくに牛に必要なのは葉と茎のほうで、エサ米のようにモミを大きく実らせる必要はまったくない。品種もちがう。
 ここでまず、飼料作物の生産コストに関する千田の試算をみてみよう。比べるのは、農水省が勧めるエサ米と、発酵飼料、牧草、トウモロコシだ。結果は一目瞭然。生産コストはトウモロコシ、牧草、発酵飼料、エサ米の順で高い。
牧草とトウモロコシがベスト
 「トウモロコシと牧草」「発酵飼料とエサ米」のあいだにそれぞれ大きな差はなく、しかも両者を比べると倍ほども開きがある。つまり、農水省が勧めるエサ米と発酵飼料は経費がかさみ、そのためだろう、補助金の額も多い。
 この試算でもうひとつ興味深いのが、一定の人数で作業にあたったとき、各作物をつくれる面積の比較だ。これは牧草がいちばん広く、トウモロコシと発酵飼料がほぼ同じで、エサ米は狭い。
 試算はここで作付けの可能性をもっと掘り下げている。じつは、トウモロコシと牧草を組み合わせて栽培すると、作付けできる面積がぐんと増える。この2つの作物は、作業のピークが重ならないからだ。エサ米はほかの作物とバッティングするため、こうはいかない。
 しかもこの試算は、エサ米は刈り取ってべつの場所に運んで家畜に食べさせることが前提になっているため、輸送費をふくめて計算している。だが、牧草やトウモロコシなら放牧にも対応できる。もし、その差を反映させると、この2つの作物の有利さがいっそう際立つ。
 耕作放棄をふせぐために、なにをつくったらいいのだろう。その答えをさぐるうえで、これほど説得力のある試算があるだろうか。
 千田の調査によると、牧草とトウモロコシの組み合わせを実現している地域はすでに岡山などにある。高齢農家の引退でこれから農地がふんだんに放出されることを考えれば、チャレンジすべき選択肢だろう。
 エサ米とちがい、少ない補助金で、しかも広い面積を管理できる。そもそも、なぜ農水省はその可能性を真正面から追求しないのだろうか。
 ここで千田の実験を整理しなおしてみよう。まず、冬場はエサの作物が育ちにくいため、放牧できないことが多い。子牛を安全に生ませるために牛舎に入れなければならないこともある。つまり、年間を通して放牧することは難しい。
 ところが、牛が牛舎にいる間は、エサをやったり、排せつ物を処理したりするなど、人手をともなう作業が必要になり、放牧と比べてコストがかかる。
 そこで、牛舎のなかにいる期間をできるだけ短くすることが必要になる。季節ごとに適した牧草を植えるのは当然。雑草もうまく利用する。
 貯蔵のきく発酵飼料は、牧草がうまく育たなかったときのバッファーや、冬のエサになる。発酵飼料にするために稲を刈ったあとに生える茎や葉をエサにするのも、牛舎に入れる時期をおくらせるための工夫だ。これが、千田がいま茨城で実践していることだ。
サシは入らず、補助金は入る
 ただし、放牧を普及させるためには様々なハードルもある。例えば、たっぷりサシの入った牛肉に高い値がつく日本人の食の好みだ。放牧だけで育てても、牛は育つが、穀物からつくる濃厚飼料で育てた牛ほどにはサシが入らず、いわゆる「霜降り」にはならない。
 この点について、「日本は高齢社会に入るので、霜降りよりも、赤身の肉の需要が増す」という予想がある。だが、アメリカやオーストラリアの安い牛肉に対抗し、放牧で育てた日本の牛の赤身肉の消費を劇的に増やすのは、簡単ではない。つくり手と売り手によるコストダウンやマーケティングの努力と、消費者の意識がその行方を左右する。
 非効率なエサ米に農水省が多額の補助金を出してしまったことも、障害になる。この補助金が、水田活用のベンチマークになってしまったからだ。ほかの飼料作物を植える際も、エサ米と比べて有利かどうかが、つねに比較される。ほうっておけば、耕作放棄され、収益を生まない農地でも、エサ米助成が収益期待を大幅に高めてしまったのだ。
 田んぼであれば、農水省がなにかしら補助金で守ってくれるという考えに、農家は慣らされてしまっている。だが、エサ米助成については、すでに財務省が問題にし始めており、今後もいまの水準を続けられる保証はない。
 放牧という、本来、効率的に農地を維持する可能性のある経営を普及させるには、これまでの政策の発想と体系を抜本的にあらためる必要がある。その前提条件が、補助金に依存しない農業への脱皮だ。
田で山で家畜が遊ぶ
 かつて哲学者の和辻哲郎は世界の風土の類型を、モンスーンと砂漠、牧場の3つのタイプに分けた。モンスーン型は湿気が多く、気温が高い日本などを指し、日本の場合、おもな作物はコメになる。牧場型は夏の乾燥と冬の湿潤という特徴をもつヨーロッパで、牧畜と小麦など畑作物の複合経営だ。
 もちろん、日本が引き続きモンスーン・アジアに位置する以上、栽培しやすいコメが農業の柱のひとつであることに変わりはないだろう。だが新たに、牧草やトウモロコシ、麦、稲など様々な作物をエサに放牧するヨーロッパ型の農業の可能性が開けている。
 先人たちは、人口増加にともなう食料危機をふせぐため、河川の洪水にあらがい、あるいは条件の悪い山のなかに分け入って田んぼをつくった。そこには、いまでは想像もできないような苦労があっただろう。だがいま、日本の人口は減り、日本人のコメ消費も減り続けている。
 日に照り返るいちめんの田んぼも、夕日に染まる棚田もまちがいなく美しい。それは日本の原風景と言ってもいい。
 だが、田園のなかで、あるいは山の草地なかで家畜が遊ぶ風景もまた、われわれの心をなごませてくれるのではないだろうか。コメ本位主義というモノカルチャーからの脱皮こそが、農業と農村を救うのだと思う。(文中敬称略)



ニッポン農業生き残りのヒント
TPP(環太平洋経済連携協定)交渉への参加が決まり、日本の農業の将来をめぐる論議がにわかに騒がしくなってきた。高齢化と放棄地の増大でバケツの底が抜けるような崩壊の危機に直面する一方、次代を担う新しい経営者が登場し、企業も参入の機会をうかがっている。農業はこのまま衰退してしまうのか。それとも再生できるのか。リスクとチャンスをともに抱える現場を取材し、生き残りのヒントをさぐる。


09. 2014年11月14日 18:38:28 : JFBcDRs0dM
たぶん、でしょうね。

今から十数年も前の日本では、日本の農業を支えてるのは兼業農家だということだった。

今現在に至まで意味不明な国民的な合意があったが、実際その通りの猫の目行政が行われた。

けっきょく難局、日本農業は農協を中心として個々に営む国家のダニみたいな農業しかできない。

国際競争力を目標にする大規模農家と家計の収支を第一義に考える兼業農家もTPPに反対してるが、

日本の農業を兼業農家はぜんぜん考えていないだろ。

農業を知らない分だけ経費を多投する現実がある。

これが日本農業が国際競争力を持てない理由だ。

兼業農家に補助するような農業政策は過去にさかのぼってゼロ交付にするべき。

専業、兼業いかんに関わらず、地主が農業をやる気がないなら宅地にして売るか離農しろ。


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