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巨額赤字スカイマーク、自主再建不可能か 多額債務支払い能力と運転資金確保に懸念広がる(Business Journal)
http://www.asyura2.com/14/hasan91/msg/605.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 11 月 13 日 06:57:38: igsppGRN/E9PQ
 

巨額赤字スカイマーク、自主再建不可能か 多額債務支払い能力と運転資金確保に懸念広がる
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141113-00010005-bjournal-bus_all
Business Journal 11月13日(木)6時0分配信


 欧州エアバス社の超大型機「A380」をめぐる巨額違約金問題に揺れている国内航空業界3位のスカイマークが、設立以来の危機に直面している。
 
 同社は10月30日、2015年3月期業績予想を下方修正し、最終損益が137億円の赤字(前期は18億円の赤字)の見込みと発表した。期初の黒字予想(4億円)から一転、同社にとって過去最大の赤字に転落する見通しとなった。売上高も883億円、営業損益も124億円の赤字に、それぞれ下方修正した。

「ミニスカ制服」で話題となったエアバス社の中型機「A330」の就航が計画より約3カ月遅れ、導入費用が膨らんだところへ、円安による燃料費急増が追い打ちをかけた。さらにLCC(格安航空会社)との競争激化も業績の足を引っ張った。この10月末に撤退した成田空港発着便ではLCCに客を奪われ、年末年始と8月の繁忙期を除いて不振が続き、搭乗率が20%台にまで落ち込んだ月もあった。

 今回下方修正された15年3月期決算には、A380の違約金問題は織り込まれていないにもかかわらず、なぜこのような危機的な業績見通しに陥ったのだろうか。そこには、同社特有の内部要因が潜んでいるようだ。

●波乱に満ちた経営

 同社は設立当初から波乱に富んでいた。同社は航空事業規制緩和により1996年に生まれた「新規航空会社」の第1号。羽田―福岡路線への就航で営業を開始したのが、その2年後の98年。日本航空(JAL)や全日空(ANA)の半額程度という格安運賃を売り物に、就航当初こそ平均搭乗率は80%を超えていた。しかし間もなく客を奪われた大手2社が対抗値下げを実施、瞬く間に搭乗率が低下して採算が悪化し、赤字経営に陥った。資金不足は第三者割当増資や東証マザーズ上場(00年5月)で切り抜けていった。

 わが国で先行モデルのない「新規航空会社」の経営は、試行錯誤の連続。創業者の澤田秀雄氏(現エイチ・アイ・エス会長)の要請を受け、IT起業家の西久保愼一氏が03年10月に社長に就任するまで、社長が4人も交代していた。

 西久保氏はトップに就任するやいなや、整備コストの大幅削減、人件費削減などコストカッターとしての手腕を真っ先に発揮、それまでの赤字経営に歯止めをかけた。その後、後発の新規航空会社、北海道国際航空(現AIRDO)が経営破綻し実質的にANA傘下に入る中、スカイマークは西久保氏の奮闘で経営を軌道に乗せ、独立経営を守った。11年3月期には112億円の営業利益を上げ、翌12年3月期にはそれを153億円に拡大した。そうした中で、西久保氏が次の成長を目指して打ち出したのが、10年11月に発表した「国際線参入計画」だったが、それが今回のつまずきの原因になった。

●LCCという誤算

「新規航空会社の経営成功」に自信を得て、国際線に打って出ようとしたスカイマークの足元をすくったのはLCCだった。12年は航空業界で「LCC元年」といわれた年。12年3月にANA系のピーチ・アビエーションが就航したのを皮切りに、7月はJAL系のジェットスター・ジャパン、翌8月はANAとエアアジア(マレーシア)合弁のエアアジア・ジャパンと、一気に3社が就航した。

 サービス面でLCCと大差のないスカイマークはLCC3社の格好の標的にされ、業績が急降下。12年3月期の営業利益は前期比69.4%減で一挙に47億円までしぼみ、14年3月期はついに25億円の営業赤字に沈んだ。

 さらに14年4―6月期の営業赤字は55億円に拡大。この弱り目に追い討ちをかけるように発生したのが違約金問題だった。エアバス社に発注していたA380の購入代金の4月支払い分が未納として、エアバス社は7月29日付でスカイマークに約700億円に上るともいわれる契約違約金の請求と共に売買契約解除を通告。8月末時点のスカイマークの保有現金は72億円とみられるため、株式市場では同社の資金繰りへの不安が一挙に高まった。

●運転資金不足の懸念も

 航空業界担当の証券アナリストは、同社に対し厳しい見方を示す。

「財務諸表を読む限り、自力再建はまず不可能。例えば純資産は389億円(9月30日現在)あり、自己資本比率は49.7%とANAの35.1%を大きく上回っている。しかし短期の債務支払い能力を示す当座比率は49.5%で、安全水準といわれる80―100%のほぼ半分しかない。しかも、火急の際に現金化できる有価証券も保有していない。このままでは運転資金も不足しかねない深刻な状況」

 同社は近年、有利子負債ゼロの無借金経営を貫いてきた。通常ならこれが経営の健全性を示す証しだが、皮肉なことに、これも同社の足枷になっているようだ。

「スカイマークは無借金経営なので、メインバンクを持たない会社。つまり、経営危機に陥った時に金融支援してくれる銀行がいない。10年に経営破綻したJALの場合はメインバンクが音頭をとって再建スキームを描き、JALは経営独立性を全うできた。スカイマークにはこれができない」(都銀関係者)

 一方、大手リース会社関係者は「自力再建を絶望視させているのがリース債務の多さ」と、次のように説明する。

 スカイマークは機材を34機(今年10月1日現在)保有しているが、これらはすべてリース。一般の残債に当たる未経過リース料期末残高は約1000億円(14年3月期)。この支払いを営業赤字の中で続けなければならないが、行き詰まるのは時間の問題だ。
それを避けるためには一定機材数をリース解約して身軽になる必要があるが、解約で機材数が減っても、その負担がなくなるわけではない。リース会社との交渉次第になるが、ある程度は払わなければならない。だが、今の同社に、そうしたリストラ原資さえ捻出する余裕はない。

●国際線参入は無謀だったのか

 同社が国際線参入計画を発表した時、業界内からは一斉に「無謀」との批判が噴出した。ある業界関係者は、次のように同社の勇み足を残念がる。

「同社はドル箱羽田空港の発着枠を36枠も持っている。これをうまく使い地道な経営努力をすればLCCと大手のはざまの中堅航空の特徴を生かせたし、今後も成長し続けることが十分可能だった。それを国際線参入という無謀な計画でチャラにしてしまった」

 業績悪化と違約金問題で今や進退窮まった同社に残された最後の武器が、この羽田空港発着枠。これを駆使して八方ふさがりからいかに脱却するのか。「航空業界の喧嘩師」との異名を持つ西久保氏の手腕に注目が集まっている。

田沢良彦/経済ジャーナリスト


 

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コメント
 
01. 2014年11月14日 06:24:50 : jXbiWWJBCA

【第174回】 2014年11月14日 週刊ダイヤモンド編集部
【企業特集】りそなホールディングス 
公的資金の完済秒読みも
7年連続減収に透ける苦悩
最大3兆円超あった公的資金の完済が間近となり、りそなホールディングスが攻めの経営に転じようとしている。背景には、縮小を続けるトップラインへの危機感があった。しかし、11年間続いた安全運転からの転換は一筋縄ではいかなそうだ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)

 ある朝、りそなホールディングス(HD)の東和浩社長は1本のニュースに目を奪われた。

 10月17日、その日の銀行界のニュースは、前日に全国銀行協会が発表した銀行振り込みの時間延長だった。現在の平日15時までから、夕方以降だけでなく土日祝日も含めて延ばすか検討するという。

 しかし、東社長の視線は同じ日の別のニュースにくぎ付けだった。それは中国の電子商取引最大手、アリババ集団による金融事業の再編だ。アリババは9月29日に、中国政府から認可を得て銀行業への参入を果たしたばかり。そこへ続けざまに、金融事業の推進強化を狙うこの記事が舞い込んだ。

 実はアリババだけでなく、世界中のIT企業が銀行業を侵食しつつある。かねて「IT業界のスピード感は脅威」と語る東社長にとっては、看過できなかったのだ。

 逆に日本の銀行界の動きは遅過ぎると映っただろう。グループ傘下の3銀行間ではあるが、りそなは2015年4月にも、24時間365日振り込みや決済を可能にすることが、10月に明らかになった。

 りそなHDは、03年9月に公的資金約2兆円の注入で救済された“りそなショック”の過去を持つ。その後、東日本旅客鉄道(JR東日本)の副社長だった、故・細谷英二氏をトップに据え、「銀行の常識は世間の非常識」と、銀行の枠を超えた改革を実行してきた。

 細谷氏の後継者である東社長は銀行界で“純粋培養”されたが、改革のDNAを受け継いだ。横並び意識が強い銀行界にあって、東社長は異業種である「ITと小売りの動きを注視」しているのだ。その視界には、下図のような銀行経営者としては異例の世界が広がっている。


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 警戒感を示すIT業界と対照的に、小売業界からはノウハウを吸収している。りそなは個人や中小企業を主要顧客とした、リテールバンクを標榜しているため、接客や顧客サービスを学びたいのだ。

 りそなが積極的に活用している社外取締役にも、“小売り枠”がある。過去には、「大丸」や「松坂屋」を傘下に持つ、J.フロント リテイリングの奥田務現相談役が務め、今は「無印良品」で知られる良品計画の松井忠三会長が名を連ねている。

 また、コンビニエンスストアのセブン−イレブン・ジャパンには、毎年社員を出向させている。第1期生だったりそな銀行の村木淳グループリーダーは、「売り場と接客で勝負が決まる」厳しさを体感。りそなに戻ってからは、その経験を銀行内で共有して回り、店頭での接客力を高める取り組みも推進してきた。

 そんなりそなだが、実は今、大きな転換点を迎えようとしている。

オムニチャネルやビッグデータが
銀行と交わる日

「モードを変えてくれ」。東社長は、今年7月に公的資金約2000億円を返済した直後、支店長会議でそう伝えた。これで、最大3兆円超あった公的資金は残り1280億円となり、完済が秒読みとなったからだ。

 りそなショックから11年で、グループ傘下3行の財務健全性は大幅に改善した。不良債権は残高3.2兆円、比率11.2%から、直近で4700億円、1.7%まで縮小。3メガバンクと遜色なくなった。持ち合い株の解消などで業績が景況に左右されにくくなり、経営の安定性も高まった。リーマンショックで3メガがそろって最終赤字に転落する中、りそなHDが黒字を維持したことは語り草だ。


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 ところが、その間に稼ぐ力に深刻な問題が起きていた。右図のように、銀行の売上高に当たる業務粗利益が7年連続の減収に陥っているのだ。りそなは「トップラインをいかに伸ばすかが最大の課題」(社外取締役の浦野光人・ニチレイ相談役)となっており、“安全運転”から踏み出し、増収に反転させる“攻め”の時期に差し掛かっている。

 ただ、新たな方針やビジネスをぶち上げるわけではなく、りそなが公式の経営戦略で掲げるのは、これまでの延長線上にとどまる施策だ。モード変更を内外に示すにはインパクトに欠けるように映る。

 これに対して東社長は、「今やっているサービス向上施策は十分に革新的で、これを続ければ新しい銀行になれる」と、否定する。

 また、「中長期では銀行の在り方は変わる」とも語り、小売業界のキーワードと銀行経営が交わるビジョンを語る。

 一つは、実店舗やオンラインストアなど複数の販売経路を連携させて、顧客を取り込む「オムニチャネル」だ。また、膨大な情報を分析して経営の意思決定や営業戦略に生かす、「ビッグデータ」も研究させている。そして、これらとGPSの位置情報を活用して、「住宅展示場を訪れた人にスマートフォンを通じて住宅ローンを案内する」といったアイディアを、東社長は温めているのだ。

 しかし、こうした構想も現実の銀行経営に落とし込める段階のものは少ない。そこで期待される具体的な新しい動きとして、「もう少し信用リスクを取ってもいいのではないかという議論」(社外取締役の佐貫葉子弁護士)が社内で始まっている。

 営業現場からも「住宅ローンの(リスク指標である)期待ロス率はどんどん下がっている。もう少しリスクの高い顧客層まで融資ができるのでは」(土屋隆志・りそな銀行常務)という声が上がる。13年12月には、東社長がトップの「成長・再生支援推進委員会」も設置。リスクの高い中小企業に、より踏み込んで支援する姿勢を打ち出した。

 ただ、本部であるりそなHDのある幹部は「メガバンクには自己資本比率など多くの指標で、まだ見劣りする。何でもかんでもリスクを取れば、業績の安定性などのりそなの強みが失われる」と、安易なリスクテイクはいさめる。

 東社長は「リスクが小口分散したリテールバンクなので、リスクテイクと安定性の維持は矛盾しない」と説明する。ただ、営業と本部という立場の違いこそあれ、経営陣の中でもリスクを取る度合いや事業領域などについての共通認識構築は、これからのようだ。

 一方、こうした社内の議論とは別のところで、りそなの将来を左右しかねない、古くて新しい構想が再燃している。今年5月に、政府に渡した提言書内に自由民主党が盛り込んだ、「日本版スーパー・リージョナルバンク」構想だ。

 これは全国に100行以上ある地方銀行や第二地銀などを再編し、大型広域の地銀をつくるという構想だ。そして、すでに埼玉りそな銀行と近畿大阪銀行という地銀を傘下に持つりそなHDが、その核になるのではとも目されている。

 菅哲哉・りそなHD代表執行役は、「業界再編を主導することはない」と言下に否定するが、「最強の国内銀行であり続ければ、地銀再編時代が訪れたときに傘下へ入りたいという地銀も出てくる」という考えを持つ経営陣もいる。

 ただ、過去の例のように、政治や金融当局の思惑に振り回され、脆弱な地銀の救済を押し付けられるリスクを考えれば、受け身は危険かもしれない。「金融庁は、かつてないほど政府・与党の方針に沿って運営している」(地銀幹部)という指摘もある。


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 右図のように、りそなは約600店の有人店舗網を持ち、自前でアプローチし切れないエリアは、20の地域金融機関との信託契約代理店の提携でカバーしている。ここから踏み込んで、有力地銀と資本関係を結ぶなど、自ら仕掛けることは一考に値するだろう。

 当初は「絶対返せない」(金融庁幹部)といわれた3兆円超の公的資金。その完済にめどを付けたりそなは経営再生の優等生といえる。ただ、成長フェーズでも銀行界の手本となれるかは、今までの成功体験をも捨て去る、新たな改革マインドが必要になる。


Photo by Kazutoshi Sumitomo
東 和浩 りそなホールディングス社長インタビュー
時代の変化に合わせ
スピード感重視の顧客に役立つ銀行へ

──公的資金完済を前に、攻めへのモード変更を促していますが、それには新方針が必要ではありませんか。

これまでも守りに徹してきたわけではなく、公的資金の返済と両輪でサービス改革も進めてきました。モードを変えろというのは、そちらにより注力しようというメッセージです。だから、急に新しいことを始めるわけではない。今取り組んでいるサービス向上施策は革新的で、続けていけば新しい銀行になれます。

数年単位の計画に落とし込んで進めるよりも、時代の変化に合わせてスピード感を持ち、一つずつ改革を進めていくことを重視します。

──かねて議論のある、地方銀行の再編を主導するという経営戦略は、選択肢にないのでしょうか。

結果として、ホールディングス(持ち株会社)の傘下に他の地銀が入ったり、将来的にシステムを統合したりという可能性は否定しません。ただ、今は資本関係を結ぶというよりは、彼らが持たない信託商品を提供する関係です。

──社内では、今までよりもリスクを取ってリターンを狙おうという機運も高まっています。

環境も変わり、りそな自身も健全化してきた。取れるリスクは適正に取っていくつもりです。例えば、消費性ローンは今まで十分にプロモーションができておらず、残高も伸びませんでしたが、今後はもっと積極的に取り組んでいきます。

──経営陣の中には、財務の健全性を重視する保守的な意見もあります。

りそなのビジネスモデルはリテールバンクで、この基本方針はぶれていません。であれば、リスクは小口分散するので財務の健全性とリスクを取ることは、実は矛盾しません。

──経営課題として、「オムニチャネル」や「ビッグデータ」といった小売業のキーワードを挙げています。

ネットとリアルをつなぐオムニチャネル化は非常に重要です。りそなは今までネットに顧客を誘導し、簡単な取引であれば24時間提供してきました。今は逆にネットからリアル店舗へ誘導しなければと考えていて、顧客がお店に来て相続や事業承継など対面ですべき相談をしてくれるようにしていきたい。

ビッグデータについては、個人情報の扱いに細心の注意を払うことが前提ですが、顧客の購買行動が分かる決済情報というのは、宝の山です。このデータを活用してできることを、金融マーケティング研究所という組織で研究しています。(LINEやグーグルなど)サービスがインフラに近づくほど人々は無料で利用するようになります。銀行が分析したビッグデータを利用する企業から収入を得る、広告モデルの世界に銀行も近づいていくかもしれません。
http://diamond.jp/articles/-/62181

 


【第154回】 2014年11月14日 週刊ダイヤモンド編集部
【シーメンス】
遠ざかるGEの背中、背後には日立 
利益率の改善目指しコア事業に注力
ドイツ重電大手シーメンスが、事業再編に乗り出した。米ゼネラル・エレクトリック(GE)が高い利益率で成長を続け、背後には日立製作所も迫る。改革の行方を分析した。

 10月24日、白髪を蓄えた眼鏡姿の男性が、東京・大崎を訪れていた。

 ジョー・ケーザー氏。重電業界で世界2位につけるドイツの老舗企業シーメンスのCEOだ。昨年8月にCEOに就任して以来、同社の日本法人を訪問するのは初めてのことだった。

 ケーザー氏は滞在中に、シーメンスの主力商品の一つである火力発電向け大型ガスタービンを売り込みに、日本の電力会社を回ったもようだ。シーメンスは、日本でのガスタービン納入実績はまだ少ないが、原子力発電所の停止により火力発電の需要の高まっている日本を、有力な市場の一つに位置付けているのだ。

 だが、ケーザー氏が日本を訪れた理由はそれだけではない。同氏は今年に入ってから、大規模な社内の構造改革に取り組み始めている。その徹底を海外拠点でも説いているのだ。

 その背景には、営業利益率2桁を必達としてきた収益水準が傾き始めていたことがある。2013年度の利益率は10%を大きく下回る6%台。一方で、最大のライバルであるGEは、余裕の2桁を維持している。さらに背後では「GEとシーメンスがベンチマーク」と中西宏明会長が常に公言している日立製作所も、必死の追い上げを見せている。


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 経営が落ち込む前に、抜本的な手を打つ──。シーメンスで7年間CFOを務めてきたケーザー氏が、トップに就いた背景には「数字に厳しい」(シーメンス関係者)という財務管理能力の高さを買われた側面があるようだ。

 ケーザー氏が現状、真っ先に取り組んでいるのが、社内の事業体制の変更だ。今年10月1日に四つあったセクターを廃止し、15あったディビジョン(事業本部)を九つに統合した。要するに、「経営幹部と顧客の距離を近づける」(関係者)のが狙いという。

 ケーザー氏は、独誌のインタビューで、この変更により「10億ユーロ(1300億円)のコスト削減になり得る」としている。

 さらには、コア事業と非コア事業の選別も加速させる考えだ。シーメンスは1990年代後半から利益率10%への引き上げを目指し、事業の取捨選択とコスト削減に突き進み、2000年代に入ってから5割強の事業を入れ替えてきた。

 今後の改革では成長領域への集中を徹底していくもようだ。シーメンスが今年発表した「ビジョン2020」と題した中期経営計画では、成長領域が産業の「デジタル化」「自動化」「電機化」にあると設定、ITやソフトウエアのサービスなどで30%近い利益を上げられると強調した。

 非重点領域の売却や整理も進めている。現状、補聴器事業の売却で協議を進めているほか、9月には住宅機器合弁会社の株式売却を発表し、さらには15%前後の高い利益率を誇るヘルスケア事業を社内分社化した。逆に、エネルギーや産業機器などのインフラ部門への注力は鮮明にさせている。

 象徴的なのが、今年5月の英ロールス・ロイスのエネルギー部門の一部買収だ。ロールス・ロイスの航空転用ガスタービンとコンプレッサー事業を1300億円で買収することで、電力や石油・ガス掘削分野を強化する。

 9月には、同様に米コンプレッサー最大手のドレッサー・ランドも買収、今後5年間で年1.5億ユーロ(約200億円)以上の相乗効果を目指すという。

競合はGEとABB。協力進む三菱重工業
重電業界の再編加速

「売上高の成長で、競合に追い付くのは18年までかかる」

 ケーザー氏は直近のドイツでのインタビューでこう語っている。シーメンスが競合として見据えているのは、GEと、スイスの重電メーカーABBだ。

 ABBは、電力の送電網関連のビジネスに強く、売上高でこそシーメンスより低い5兆7500億円程度だが、営業利益率は継続して10%を超えている。

 さらに、GEが今年、仏アルストムとの買収・事業統合で、再編の口火を切ったように、重電分野では合従連衡の動きが激しい。

 日本では、日立と三菱重工業が火力発電分野で事業統合したが、一方で今年、三菱重工はシーメンスとも製鉄機械で事業統合したばかりだ。これをきっかけに、「ケーザー氏と三菱重工の宮永俊一社長は、個人的にかなり距離が近くなったようだ」(重電業界関係者)といわれている。

「昨日の敵は、今日の友」(藤田研一・シーメンス日本法人専務)というように、ある分野でライバルでも別分野で提携する形は今後も進む可能性が高い。

 シーメンスは、大型ガスタービンでは三菱日立パワーシステムズと競合し、鉄道分野では日立、ヘルスケア部門では東芝、産業機器では三菱電機など、個別には日本企業とライバル関係にある。

 だが、逆にそれは補完関係にある事業領域があることも意味しており、今後、日本企業との連携が進んでも不思議ではない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 森川 潤)
http://diamond.jp/articles/-/62176


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