05. 2014年11月12日 21:18:51
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日銀追加金融緩和のインパクト 今回の追加金融緩和の影響で、日本銀行のバランスシートもさらに膨れ上がることが懸念されます。白川前日銀総裁のときに増やすとしていたペースで考えても、GDP比はメリカFRBと比べて大きなボリュームになっていました。そして、2013年の黒田総裁の金融緩和第一弾によって、グラフの点線のようにバランスシートは急拡大し始めました。今回の追加緩和によって、一段と角度が急になるでしょう。 日銀のバランスシートは来年末にはGDPの70%程度まで膨らむという見通しになっています。こうした側面を捉えて、厳しい見方をする分析者は「未曾有の実験」という言い方をしています。GDPにくらべてかなり大きなものを一国の中央銀行が抱えることになるのです。 ただ、これだけ抱えたものがどんどんと世の中に回っていたら大変なことになっていると思いますが、幸か不幸か、日本銀行が国債を銀行から吸い上げても、そのお金は現在時点で日本銀行の中に留まっているのです。銀行の当座預金残高のグラフはかなりの勢いで伸びています。日銀のバランスシートは膨らんでいるものの、そのお金は日銀やインターバンク市場から外に出ているわけではないのです。オープンマーケットや私たちの生活している市場にまで広がっているのではなく、日銀当座預金に留まっているということなのです。 141112_1.jpg 今はここにお金が留まっているので、まだそれほど物価にはインパクトはありませんが、おそらく金融機関は徐々にこのお金を取り崩し、もう一度国債を買うか、あるいは貸出に回す、株式を買う、外貨への投資をするなど、いずれにしても少しずつ何らかの動きが出てくるはずで、日銀に言わせればそれが経済に良い影響を与えるということなのです。
しかし、心配する声もあります。もしこれが一気に出てしまったら貨幣価値が下がり、インフレになるという懸念があるからです。このように、壮大なる実験をしているのかもしれませんが、緩和政策が市場に与えるインパクトはとても大きいと言えます。当座預金を必要準備預金よりも積んでいるので、ニックネームとしてこの状態は「ブタ積み」と言われますが、これが近々200兆円に届くような160兆、170兆円という額になり、今、日本銀行の中に滞留しているという実態なのです。かなり巨額のお金が積み上げられているわけですが、日銀はこれからも一定量積み上げますと言っているのが今回の政策なのです。 今回の政策が景気にどう波及するのか整理すると、日銀はまず、デフレ脱却が起こると設備投資が増え、企業収益が改善してくるとしています。それにより雇用が改善し、賃金が上昇、さらには消費の改善に繋がるということで、これが実体経済に与えるボジティブなインパクトだと説明しています。しかし、これにはかなりの時間を要すると思われます。確かに今年の春の賃上げは従来に比べると良くなったところが多かったわけですが、ただ賃金上昇が一律におこるかというと難しく、消費の改善に繋がっているとは言いがたい状況で、まだまだ相当な時間が必要だと言えます。 むしろ、もっと短期間に影響が出て来たのは為替の円安です。円安により企業収益は改善を見せています。自動車や電機メーカーなど輸出企業はかなり収益改善に繋がっています。 景気への波及シナリオとは?
さらにもう一つは株高や不動産価格の上昇です。これにより、富裕層や保有資産の多い企業などには、資産効果が現れてきています。このことが消費の改善にも繋がっていて、実際春先以降には相対的に値嵩であるラグジュアリーな高級品の売上増加が如実に現れてきています。 ただし、懸念材料もあります。消費税が上がり、ガソリン代も上がってきて、輸入原材料を使った食料品、チーズやハムなどの加工品などが値上がりしました。そうした中、賃金がそれほど上昇しないと、いわゆるコストプッシュ型のインフレーションとなり、生活にとってはあまりよろしくない事態だと言えます。この懸念が引き続き残っているのです。 141112_2.jpg また、円安によって企業収益にはよい影響があるものの、これまでと違う状況も起きています。これまでは円安により輸出数量が伸び、その部品を作っているサプライヤーである中小企業や、他の産業にも幅広く広がり、輸出ドライブがかかるというのが日本の伝統的な回復パターンでした。しかし、今回はそれがあまり見えていません。日本で長らく続いた円高不況により、輸出メーカーは努力して海外に工場を建て、海外で作り始めました。円高でも耐えられるような、生産活動を続けてかつ収益が出るような体制を作り上げて来たのです。
逆に言えば、多少円安になったといっても日本から輸出することにはならず、海外で作って海外へ売るという生産体制ができているのです。そのことにより、従来は効果的だった、円安になって輸出数量が伸び、景気回復に繋がるという道が現在は消えているのです。円安でも貿易収支があまり改善していないというのはそのためです。 今回の政策による景気への波及シナリオは、良いところも見えるものの、スタグフレーション懸念や、輸出ドライブがかかりづらいことなど、従来思っていたよりも効果は弱いのではないかと思われます。しかし、アメリカやヨーロッパも同様ですが、株高や不動産上昇はかなり期待されるところです。資産価格の上昇によって、消費改善や企業活動の活発化が期待できます。資産を持っている企業は含み益や売却による実現益が増え、それをベースにした設備投資、さらには雇用改善や賃金上昇に繋がると思われます。道の長いデフレ脱却からの効果よりも、現在は株高、不動産上昇による効果が最も注目されているという認識が必要です。 講師紹介
田口 美一 ビジネス・ブレークスルー大学 資産形成力養成講座 講師 金融経済アナリスト 前クレディ・スイス証券副会長 田口 美一 11月5日に撮影した日銀追加緩和、緊急コンテンツを一部抜粋してご紹介しております。 詳しくはこちら その他の記事を読む 富の独占 1位はロシアの84.8%(大前研一) http://www.ohmae.ac.jp/ex/asset/column/20141112_130057.html
中銀がインフレ操作し過ぎると信認損なう=米連銀総裁 2014年 11月 12日 18:23 JST [ロンドン 12日 ロイター] - 米フィラデルフィア地区連銀のプロッサー総裁は12日、中央銀行はインフレ率を操作しすぎるべきではないとし、信認を損なう可能性があるとの見解を示した。総裁はロンドンでのセミナーで「中銀にとって最も重要なのは信認だ。中銀はインフレ率を正確に操作し、インフレ期待を十分に抑制し続けることができると考えるのはリスキーな戦略だ」と述べた。 現在のドル高については国内インフレへの大きなリスクとは見なしていないと指摘。「為替レートは国内インフレ全般に大きな影響を及ぼさない。(ドル高の)影響はあるだろうが、大きなリスクとはみていない」と述べた。 一方、最新の連邦公開市場委員会(FOMC)声明については、政策が経済指標次第であることを示していると指摘。 また、FRBは市場に予想よりも早期の利上げの可能性に備えさせるために、引き続き声明を修正する必要があるとの考えをあらためて示した。 プロッサー総裁は2015年半ばより前に利上げを行うべきと主張しているが、こうした主張はFRB内でも少数派。総裁は10月29日のFOMCに先立つ2回の会合で反対票を投じていた。 ただ、10月29日会合では声明から「相当期間」低金利を維持するとの文言が削除されなかったにも関わらず、賛成票を投じた。賛成に回った理由について総裁は、景気が予想よりも早期に改善すれば利上げも早まり、景気が悪化すれば後ずれすることが声明で明示されたため、と述べた。 FOMCの声明は、当局者が政策運営で経済指標を重視することを明確にしているとし、「現在までの改善を踏まえ、利上げ再開がこれまでの予想よりも早期になる可能性があることを市場に備えさせる必要がある」との認識を示した。 インフレ率はFRBが目標とする2%に向けて上昇しているようだとの見方を改めて示し、失業率は多くの政策当局者が見込んでいたよりも急速に改善していると指摘した。 http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0IW0U920141112 英CPIは一時1%以下に、市場の利上げ見通しは後ずれ=中銀報告 2014年 11月 12日 20:10 JST [ロンドン 12日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行)は四半期インフレ報告を公表、国内インフレ率は今後6カ月で1%以下に鈍化する可能性がおそらく高いとし、利上げ予想は来年後半とする市場の見通しを裏付けた。
市場は前回8月の報告以降、最初の利上げ見通しを2015年第1・四半期から10月に後ずれさせたと指摘。 市場の想定通りに利上げを行えば、インフレ率は2年で目標の2%を小幅下回る水準となる見通しだとした。 報告では「インフレは当面、引き続き目標を下回り、今後6カ月の間のある時点で1%を下回る可能性がおそらく高い」とした。 その上で「バンクレートが上昇し始める際には、金利上昇ペースは緩慢である見込みで、一定の期間は過去の平均水準を引き続き下回るだろう」との見方を示した。 経済成長見通しはほぼ変えず、弱い外需の影響は調達コストの低下で相殺するとしている。今年の成長率見通しは3.5%、2016年は2.9%で、前回8月から小幅下方修正した。 「主要な下振れリスクはユーロ圏経済の低迷で、輸出に影響し、金融市場のボラティリティを一段と高める可能性がある」と指摘した。 来年の賃金の伸び見通しは今年は1.25%、来年は3.25%と金融危機以降は見られなかった大幅な回復を見込んでいる。 失業率は今後緩やかに低下し、2015年終盤には5.4%になると見通している。 インフレ低下見通しは、原油価格の下落、食品や一部輸入品価格の伸び鈍化が主因だが、国内物価圧力が弱まる兆候も見られるという。 住宅インフレは峠を越したとし、住宅投資の伸びは来年は7.5%とした。8月は13.75%だった。 http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0IW14420141112
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