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「第3のビール」「発泡酒」の大幅値上げ計画が進行中 財務省とビール各社それぞれの思惑(週刊現代)
http://www.asyura2.com/14/hasan91/msg/576.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 11 月 11 日 07:03:05: igsppGRN/E9PQ
 

「第3のビール」「発泡酒」の大幅値上げ計画が進行中 財務省とビール各社それぞれの思惑
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141111-00041035-gendaibiz-bus_all
11月11日(火)6時2分配信 週刊現代 :現代ビジネス


 財務省vs.ビール会社が繰り広げてきた「酒税戦争」。その最終仕上げに財務省が乗り出した。メーカー各社は手を取り合って反対運動―といきたいところだが、話はそう単純にはいかないようで。

■この日を待っていた

 「今回の税制改正が実行されれば、発泡酒と第3のビールを飲んでくださっているお客様は、確実にほかのお酒に行ってしまうでしょう。現在の景気状況を考えれば、多少の増税でも、『もう飲めなくても仕方がない』と諦めてしまう人が出てくると思うからです。いわゆる『ビール離れ』は、ますます加速してしまうでしょう。われわれが一番大切だと思っているのは、お客様の動向。それを無視した税制改正では困ります」

 キリンビールの磯崎功典社長は、本誌の取材にこう語った。

 戸惑うのも無理はない。

 安倍政権がビール業界を揺るがす一大増税を断行する―そんな仰天の構想がいま急浮上し、ビール業界が騒然としている。

 「ビール系飲料の税額を段階的に一本化するというのが、政府が目論む税制改正のシナリオです。狙い打ちされているのは、発泡酒と第3のビール。現在、ビール類の酒税は350ml換算で、ビールが77円、発泡酒は47円、第3のビールは28円ですが、この税率格差をなくすという名目で、発泡酒と第3のビールの税額を引き上げようとしています。最終的に一本化される税額は55円になるとも言われていて、その場合、発泡酒と第3のビールはそれぞれ10円、20円ほどの値上げになってしまう」(全国紙経済部記者)

 若者のビール離れが止まらない中にあって、発泡酒と第3のビールは「安くてうまくて酔える酒」として、デフレ時代のヒット商品に成長した。かつては「まずはビール」だったのが、「まずは発泡酒」「まずは第3のビール」というのが当たり前。最近でもプリン体ゼロの発泡酒が絶好調で、第3のビールは年間出荷量でビールを逆転するのが秒読みと言われるほどである。

 それが増税されるというのは、ビールメーカーにとっては稼ぎ頭を狙い打ちされたも同然。そのため、「売り上げ好調に水を差しかねない」(大手ビール会社幹部)と業界は大慌てなのだ。

 ただでさえ消費増税でモノの値段が上がり、消費者が財布の紐をきつく縛っている時期である。そこに追い打ちをかけるような増税が実行されれば、庶民のささやかな楽しみである晩酌の機会を奪われかねない。

 ビールメーカー5社で構成するビール酒造組合会長代表理事を務める、サッポロビールの尾賀真城社長が言う。

 「ビール系飲料の税率を一本化するにしても、税率が高止まりになるのでは困ります。段階的に一本化するといっても、では発泡酒、第3のビールは毎年上がるんですかという話になる。我々の主張は昔から変わっておらず、一番飲みやすいものに重税感があってはならないというものです。そもそもビールの酒税は、ほかの酒と比べてあまりに高すぎます。結局、お客様にとってどのような税制であるかが一番重要で、お客様がたくさん飲んでくれる環境を整えることが大事なのです。その点は主張していきたいと思っています」

 しかし、そんなメーカーや消費者の切実な想いなどどこ吹く風。今回の増税構想に前のめりで、やる気満々なのが「増税王」財務省である。

 実は財務省にとって、発泡酒と第3のビールの増税は長年の悲願。虎視眈々と狙っていた増税を、このタイミングで実行に移そうとしているのには姑息な思惑がある。

 「今冬には政府が消費税を10%に引き上げるかどうかの判断が下されますが、実は財務省はこれを『好機』と捉えています。というのも、消費税を増税しようとすれば、メディアはそのことばかりを報じる。その騒動の裏で発泡酒や第3のビールをこっそり増税しても、あまり目立たないと踏んでいるのです」(酒税に詳しいビール業界関係者)

■「極ZERO」騒動の内幕

 財務省は、用意周到に好機を自ら演出したフシもうかがえる。

 財務省の管轄下にある国税庁が、今夏に引き起こした『極ZERO』騒動がそれだ。

 事の経緯を振り返ると、極ZEROはサッポロビールが昨年発売し、大ヒットしていた第3のビールだった。しかし、今年1月に国税当局からサッポロ側に連絡が入り、その製造方法に関して情報提供するように照会してきたことを契機に事態が急変。極ZEROが第3のビールに該当しない可能性が出てきたとして、サッポロは極ZEROを一旦終売、発泡酒として出直す決断を迫られたのである。

 「業界では前代未聞の事態として話題になりました。特に不可解だったのは、なぜ突然のタイミングで国税が極ZEROにケチをつけたのかということです。しかし、いま思えば、今回の税制改正に向けた『見せ球』だったとも考えられます。極ZERO騒動を機に、ビール系飲料の酒税体系の複雑さを世間にアピールできたからです。その上で今回、『複雑な税体系をわかりやすくする』ともっともらしい理由をつけて、増税に持ち込もうとしているわけです」(前出・業界関係者)

 それにしてもなぜ、財務省は発泡酒、第3のビールを狙い打ちしているのか。租税法が専門の青山学院大学の三木義一教授は、「財務省の常套手段です」としてこう指摘する。

 「売れている商品に税をかけてむしり取っていく。これは財務省のいつものやり方です。今回も『またか』というのが率直な感想です。消費者にとってもメーカーにとっても嬉しくないことなのに、そんなことはまったく気にしない。税金をとれればなんでもOKという愚かな増税が断行されようとしているわけです」

 ブタは太らせてから食え―財務省内ではそんな不文律もまかり通っているというが、狙われたほうからしてみればたまったものではない。

 いまビール業界が最も恐れているのは、「清酒ショックの再来」だ。

 国は1943年、激化する太平洋戦争の戦費調達のため、清酒に「特級」「一級」「二級」などの級別課税制度を導入。「特級」と付ければ酒好きの消費者が好んで購入するとの思惑から、特級は一級の倍以上の税額を課した。しかし、それが'90年代に入ると、「税制の簡素化」などを理由に級別制度を完全廃止、税額も統一された。

 この税制改正で清酒市場は活性化したかといえば、答えはノー。「ふたを開けて見れば、安くて庶民に人気が高かった二級酒が増税で消費量が減少。清酒市場はこれを機に急降下し、いまや半減するほど急激に縮小している」(清酒メーカーOB)という惨状だった。

 そして今回も、消費者の動向より税収確保を優先するような税制改正を断行すれば、ビール業界が同じ道をたどる危険性があるというわけだ。

■メーカー同士が腹の探り合い

 こうした事態を受けて、「業界全体として、増税ではなくトータルな減税を求めていく」(前出・尾賀氏)とビールメーカーはさっそく反対運動を開始する構え。かつて財務省が発泡酒を増税しようとした際、サントリーが時の首相だった小泉純一郎氏の息子、小泉孝太郎氏をCMに起用するという「奥の手」で牽制したことがあったため、「今回もどこかのメーカーが、安倍総理の夫人昭恵さんをCMに起用するというウルトラCまで語られ始めている」(大手小売チェーン幹部)。

 だが実は、今回の税制改正に対してメーカー間には「温度差」があり、一枚岩ではないという事情もある。

 というのも、大手ビールメーカー各社のビール、発泡酒、第3のビールの売上比率は大きく異なる。今回の税制改正では、発泡酒と第3のビールが増税される一方で、ビールは減税になる公算が高いため、メーカーによっては税制改正が有利、不利に働くという違いが出てきてしまうのだ。

 「最も恩恵を受けるのはアサヒビールです。売上高に占めるビールの比率が7割ほどと圧倒的に高いので、ビール減税のメリットが最も大きい。『スーパードライ』ブランドに頼り過ぎだと批判されてもきましたが、今回はそれがよい方向に効いてくるわけです」(ジャーナリストの永井隆氏)

 一方できついのは、第3のビールの比率が最も高いサントリー。サントリーは日本で初めて発泡酒を発売しながらも、財務省による相次ぐ増税で発泡酒市場が縮小したことで、発泡酒市場から撤退した過去もある。そのため、社内では「『悪夢が再び』という声も出ている」(サントリー社員)。

 しかも、この10月1日にはビール、発泡酒、第3のビールなどの事業を分社化してサントリービールという会社を新設したばかり。「さあこれから」というタイミングだけに、出端をくじかれる格好になりそうだ。

 「ただ、サントリービールの水谷徹社長はウイスキー部長時代に『角ハイボール』ブームに火をつけたヒットメーカーだけに期待は高い。水谷社長の高級ビール『ザ・プレミアム・モルツ』を主軸に攻めていく経営方針には、今回のビールの減税は追い風になる。第3のビールの落ち込みをプレモルでどこまで挽回できるか。その手腕が見物です」(サントリーの取引先業者)

 ビールメーカー各社が、個別に財務省と「情報交換」を行っているのは業界の常識。そこで、業界全体としては足並みが揃っている振りを装いながらも、自社に有利な方向に税制改正を進めようと、「抜け駆け」をする動きも予想される。

 実際、民主党政権時代には、キリンが政府に「自社に有利、他社に不利」な税制改正案を提案し、アサヒ、サントリー、サッポロの顰蹙を買ったこともある。「今回はなりふり構わぬ机の下の足のけり合いが展開されるかもしれません。抜本的な税制改正となるため、改正の内容如何では業界地図が塗り替わりかねないインパクトを持ちますから」と前出・大手小売チェーン幹部は不気味な予測を語る。

 もちろん財務省はメーカー同士の腹の探り合いを利用、業界に「分断工作」を仕掛けるはずだ。

 それぞれの思惑がうごめく酒税戦争。いまその幕が、切って落とされた。

 「週刊現代」2014年11月15日号より


 

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