08. 2014年11月11日 06:23:26
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【第18回 】 2014年11月11日 ダイヤモンド・オンライン編集部 株式市場で注目のGPIF 日銀との連合軍で買い余力は年7〜8兆円 10月31日の黒田日銀の追加金融緩和と、まるで足並みをそろえたかのようにGPIFのポートフォリオ(運用資産割合)の見直しが発表された。いわばこの「ダブルバズーカ砲」で、株価は急騰。「下値の岩盤は固い」と、株式市場関係者の表情は明るい。では、この見直しによって、GPIFの国内株式の買い余力はどのくらい増えると推測されるのだろうか。公的年金の管理・運用を担当 そもそも、株価が乱高下するたびに注目されるGPIFとは何者か。 その正式名称は、年金積立金管理運用独立行政法人、英文名はGovernment Pension Investment Fund、いずれにしてもやたらと長い。そのためか、英文名を略してGPIFと呼ばれることが多い。 GPIFのホームページの説明によればその役割は「年金積立金管理運用独立行政法人は厚生労働大臣から寄託を受け、年金積立金の管理・運用を行います。そして、その収益を国庫に納付することにより、厚生年金保険事業及び国民年金事業の運営の安定に資することを目的としています」ということになる。名は体を表すの通り、政府からの寄託を受けて、国民が収める厚生年金・国民年金という公的年金の保険料を、管理・運用する機関だ。 日本の公的年金は、現役世代の保険料で老齢者世代の給付を賄う「賦課方式」を採っている。このため「積立方式」と違い、保険料総額と給付総額が見合っていれば、本来なら余剰資金は残らないはずだが、保険料の納付と支払い時期のずれなどによって、剰余金が生じる。その額はGPIFの運用資産額だけで、127兆円(表参照)にも達する世界でも屈指の規模を誇る「機関投資家」だ。 期待ほど株式の買い余力は大きくない それでは、今回の見直しによって、株式の買い余力はどのくらい増えるのだろうか。 そもそもGPIFは「長期的に維持すべき資産構成割合(ポートフォリオ)を定め、これを適切に管理するなど、安全かつ効率的な運用に努めること」を、運用の基本方針としている。 昨年11月には、伊藤隆敏東京大学大学院教授が座長を務める「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議」が、国内債券を中心とする公的年金のポートフォリオの見直しが必要だとする最終報告を取りまとめていた。今回のポートフィリオの見直しは、この報告を受けて行われた。 これまでの伊藤座長の発言などから、株式市場では、株式の資産構成割合は20±5%程度になるのではないかというのが、大方の予想だった。それだけに、発表された25%±9%は予想を大きく上回るサプライズだった(表参照)。 (注)GPIFホームページ資料より編集部作成。 拡大画像表示 見直しが主に反映されるGPIFの次期中期計画の期間は、15年4月〜20年3月の5年間である。単純に計算すれば、127兆円(6月末資産運用残高)の1%は約1兆2700億円になるから、基本割合の25%まで株式の保有比率を高めるとして1兆2700億円×(25%−17%)=約10兆円。これを5年で割ると年間約2兆円の買い増しがあるということになる。
連合艦隊なら年間7〜8兆円の買い需要 だが、ことはそう単純ではない。大和証券投資戦略部シニアストラテジスト・塩村賢史氏によれば、「国内株式市場への純粋なマーケットインパクトは、3〜4兆円程度とみている」。GPIFは、次の中期計画期間に、年金の支払いのため20兆円のキャッシュアウト(現金流出)を見込んでおり、これを国債など債券の売却で賄う。とすれば、自然体で何もしなくても、資産全体占める債券の比率が落ち、株式のそれが高まる。 塩村氏の試算によれば、自然体の場合20年3月末の株式のウエイトは21.5%。したがって買い余力は25%−21.5%=3.5%に相当する金額、約4兆円程度となり、時間軸を考慮しない単純な試算よりもインパクトは小さくなる。 しかしである。日銀は年間3兆円のペースでETF(上場投資信託)を買い上げる。さらに、15年10月にGPIFと運用が一元化される予定の共済年金も、株式の運用割合を増やすことが見込まれる。塩村氏は「GPIFと共済年金全体で、5〜6兆円程度の国内株の買い需要が、今後1〜2年で発生する」と予想する。日銀と合わせると、年間7〜8兆円の買い需要となる。 しかも、長期投資が前提だから、短期の利益を狙うヘッジファンドのように下落局面で売り抜ける必要はなく、むしろ買い場となる可能性もある。いざとなれば、+9%の34%まで株式のウエイトを高めることもできる。株式市場が日銀・GPIF連合艦隊を「岩盤」と期待するのもむべなるかな、だ。 外貨建て資産も、外国債券+外国株式のウエイトが27%(6月末)から40%にまで引き上げられる予定なので、円売り→外貨買いの要因となり、円高の防波堤になると期待されている。 もっとも、「公的資金の買いが入ったらしい」といった情報で株価が振り回され、株価の変動が大きくなる恐れは十分にある。 なお、GPIFの運用方針、組織体制などについては山崎元氏のコラム「GPIFの新運用方針を個人投資家はどう読むべきか」、「GPIFの運用や組織をどう見直すべきか?」「GPIFが株式を買い増ししない方がいい『5つの理由』」などを、ぜひご一読いただきたい。 (ダイヤモンド・オンライン編集長 原 英次郎) http://diamond.jp/articles/-/61959
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