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竹中平蔵:追加緩和を決定した黒田日銀の秀逸さと三つの懸念
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141108-00000000-fukkou-bus_all
nikkei BPnet 11月8日(土)18時4分配信
黒田日銀が10月31日、追加の金融緩和策を決定し発表した。これは本当の意味でのポジティブ・サプライズだった。
事後的に見ると、今回の金融緩和策はなかなかよく考えられていることがわかる。黒田日銀は、従来の日銀とは違い、高く評価してよいと思う。
■先手を打ち、日銀の独立性を示した
具体的には、まず「先手を打った」という点が評価できる。もし、今回のサプライズがなければ、消費税の再増税が決定された場合、必ず次のような声が出てくるはずだ。
「経済が悪くなっている中で政府が消費税率の引き上げを決めた。その悪影響を打ち消すために、日銀は新たな対応策を実行しなければならない」
すなわち、政府の“尻拭い”をする役目を日銀は押しつけられるはずである。そうなれば、日銀は政府に従属する立場になってしまう。
そこで、日銀としては今回先手を打ち、日銀の独立性を示すことができたのである。
もう一つ評価できるのは、小出しではなく、やれることを一気にやったという点だ。これまで日銀は長期国債を年間約50兆円買い入れていたが、一気に約80兆円にまで拡大した。
■強いメッセージ性と見事な「二つの連動」
また、メッセージも非常に明確だった。黒田日銀が最初に金融緩和策を打ち出した時は、2年でベースマネーを2倍にするというものだった。今回は、上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(REIT)の買い入れを3倍にするとした。
「2」や「3」という数字を効果的に使うことで、黒田日銀は強いメッセージ性を維持した。市場とのコミュニケーション能力に長けていると言える。その結果、日経平均株価は大幅に上昇した。
しかも、黒田日銀は今回のサプライズを思いつきで行ったわけではない。追加の金融緩和策は、二つの意味でうまく「連動」したものだった。
一つは、米国の金融政策と連動である。10月29日、米国では量的金融緩和の終了が決定された。つまり、日米の金利差が開く状況となった。
ここで日銀が一段の金融緩和を実施すれば、日米の金利差はさらに開くことになる。円安・株高を最大限に演出する場面として、これほど適した状況はなかったと言える。米国の行動に合わせて間髪を入れずに動いたところに、黒田日銀の秀逸さがある。
■政府を追い込んだと見ることもできる
もう一つは、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)との連動だ。実は追加の金融緩和策が発表されたのと同じ日、GPIFの改革案が示されている。
その改革案は、これまで国債に偏っていたものを、株式などリスクマネーやインフラに回して、経済成長を促すというものだ。成長戦略の一環としてGPIFを活用していくのである。
これはこれで正しい方向の改革案だが、一方で、国債の購入額を従来よりも減らすというメッセージを送ることにもなる。そこで、日銀が追加の金融緩和策として、国債を買い増すというメッセージを打ち出した。国債市場に対する連動という意味でも、黒田日銀はしたたかに政策を進めている。
以上のように、今回の追加金融緩和策は優れた内容だと評価してよい。ただし、懸念事項が存在することも事実である。
まず、日銀が先行してこれほどの追加緩和を実行することで、政府が消費再増税を行う確率が高まったという点である。日銀がここまでしているのに政府が再増税を先送りすれば、政府が批判されることになる。ある意味で、黒田日銀は政府を追い込んだと見ることもできる。
実際、「これはうがった見方だけれども」と前置きした上で、甘利明経済再生担当大臣も再増税への影響を口にしている。政府も、再増税へのプレッシャーを感じざるを得なくなっている。
■構造的にデフレ圧力下にあると懸念される先進経済
二つめの懸念事項として、今回の緩和策は多くの人が認めるように「良いタイミング」で実施されたものだが、一方で、それが「良い結果」をもたらすとは限らない、ということだ。というのも、緩和策を実施しても、必ずしも「2%の物価目標」が予定通りに実現するわけではないからだ。
この背景には、根深い問題が存在する。それは、日本のみならず先進経済全体が構造的にデフレ圧力下に置かれているのではないかという懸念である。
米国のローレンス・サマーズ元財務長官は、近年の米国経済および先進経済は成長率が下方屈折しているとの長期停滞論を唱えている。現にトレンドとして、先進経済の自然利子率(貯蓄と投資をバランスさせる実質利子率)は大きく下がっている。ヨーロッパ経済もデフレ目前になっている。
こういう流れの中で、日銀が頑張ってみたところで、はたして大きなトレンドに打ち勝ち、2%の物価目標を達成することができるのかどうか。現実的には、かなり厳しいと言わざるを得ない。日銀が採っている政策の方向性は評価できるけれども、その成果については不透明というのが実情だ。
■2%の物価目標を具体的にどのように達成していくのか
三つめの懸念事項として、緩和策は日本経済のためではなく、日銀のために行われた可能性があるということだ。
日銀は今年4月の消費増税の影響を見誤っていた。当初は「マイナス4%くらいの影響」と言っていたが、実際にはマイナス7%の影響となった。自分が見誤ったことを埋め合わせるため、追加の緩和策を行ったのではないか。うがった見方をすれば、「日銀の日銀による日銀のための政策」と見ることもできる。
今回の緩和策は、上述したようによく考えられているし、黒田日銀の秀逸さを示すものだった。そこはきちんと評価しなければならない。
しかし、それとは別の次元で、懸念事項については指摘しておく必要がある。
日銀に限らず、政策の評価は多面的に行われるべきだろう。とりわけ今後の日銀については、2%の物価目標を具体的にどのように達成していくのか、その議論を盛り上げていくことが求められる。
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