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世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第99回 続「10月の嵐」
http://wjn.jp/article/detail/1823335/
週刊実話 2014年11月13日 特大号
10月21日、10月月例経済報告が発表された。予想通り、基調判断引き下げであった。
消費の足踏みで自動車などの出荷、生産が減少したことを踏まえ、政府は基調判断を2カ月連続で引き下げたのである。
相変わらず抽象的で良くわからないのだが、10月の月例経済報告は、
「このところ弱さがみられるが、緩やかな回復基調が続いている」
であった。
9月の「このところ一部に弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」から、「一部に」という表現を削除したわけである。
生産の状況についても、9月の「弱含んでいる」から「このところ減少している」に引き下げられた。「減少している」と表現するのは、2012年11月以来、約2年ぶりとのことである。
甘利明経済財政・再生大臣は、10月21日に記者会見し、
「景気全体に完全にブレーキがかかってはいない。回復基調にあることは間違いない」
と、例により抽象的な発言をしている。
回復基調とは、具体的に何を意味しているのか、さっぱりわからない。現状の日本の消費の落ち込みは、大臣が抽象的表現でごまかせるレベルを超えている。
日本チェーンストア協会が21日に発表した9月の全国スーパー売上高は前年同月比1%減少で、6カ月連続で前年割れとなった。しかも、8月より減少幅が拡大してしまった。
コンビニエンスストアは同1.3%の減少。百貨店が同0.7%減少。個人消費の指標となる小売主要4業種の販売統計は、すべてが前年を下回ってしまっているのである。政府が「見込んでいた」消費のV次回復など、現実には全く起きてない。
特に、実質賃金の低下やガソリン価格の高止まりは、「地方経済」にダメージを与えている。
食品スーパー業三団体の発表によると、関東が同1.3%増加だったのに対し、近畿は2%減少、中国四国が1.3%減少。東京圏を除く日本の地方は、いまだ消費減少という「需要縮小」が継続していることがわかる。
ところで、日本政府は10月の月例経済報告において、雇用情勢について「着実に改善している」と、9カ月続けて底堅い動きを続けているとの判断を示した。
失業率を見る限り、雇用情勢が底堅く推移しているのは確かである。とはいえ、問題は雇用の「質」だ。なぜならば、現在の日本が抱えている問題は、
「実質賃金の低下による、実質消費の減少」
であるためだ。
有効求人倍率を見ると1.09と上向いてはいるものの、正社員に限ると0.68で頭打ちになってしまっている(季節調整済み数値。原数値だと0.67)。
有効求人倍率とは、求人と求職者を比較した指標だ。有効求人倍率が1を上回っている場合、求職者数以上に求人数が存在するという話になる。
消費を「安定的」に拡大するためには、いわゆる「恒常所得(定期的に入ることが予想される所得)」が重要だ。さらに、雇用の安定化も必須である。
国民の雇用が安定し、さらに恒常所得が上昇していって初めて、消費が「安定的」に増えていくことになる。住宅や自動車などの高額商品の購入も、所得が安定的に増え続けたとき「最大化」される。
我が国は、少子高齢化により生産年齢対総人口比率が低下していく「構造」を持っている。ということは、実は政府が「放置」しておくだけで、国民の実質賃金が上昇し、雇用の安定化も(以前よりは)達成される可能性があるわけだ。
無論、公共事業、介護報酬、診療報酬など、政府の支出により需要規模が決定される分野については、「市場」に従い、人件費を引き上げる政策を採らなければならない。
それにしても、生産年齢人口比率の低下が人手不足をもたらし、人手不足が実質賃金や正社員を増やしていく可能性は厳然と存在する。
それにもかかわらず、政府は相も変わらず「財政均衡主義」に囚われ、公共事業を抑制し、介護報酬や診療報酬を切り詰めようと図り、さらに消費税増税で実質賃金を強制的に引き下げた。
加えて、配偶者控除の廃止や派遣労働の拡大、そして外国移民(外国人労働者)の受入拡大と、実質賃金を引き下げ、雇用を不安定化する政策ばかりを推進している。
しかも、消費税増税と法人税減税の組み合わせは、すでにアメリカの「現実」が否定したトリクルダウン(富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が浸透する)政策だ。
税金は、低所得者層を含め「平等」に徴収し、企業に「無条件」の減税をすることで、国内への投資を増やしてもらうという発想なのである。
まさに「トリクルダウン期待」の組み合わせなのだが、残念ながらグローバリゼーションが進んだ世界では、「国内」にトリクルダウン(滴り落ちる)かどうかは「不明」である。何しろ、国境を越えた資本の移動は、すでに自由化されてしまっている。
消費税増税という「国民の負担」で法人税の税率を引き下げ、「外国」にトリクルダウンされてしまう可能性に対し、政府はまともな「解決策」を提示したことがない。
さらに、日本で法人税率を引き下げると、増加した企業の純利益の多くが「内部留保」に回ることになるであろう。
対外直接投資(外国での工場建設など)や内部留保がどれだけ増えたところで、国民に雇用が生まれるわけではない。すなわち、「国内の所得(GDP)」は増えない。
現在の安倍晋三政権の政策は、その多くが日本経済の問題を解決するにあたり「逆効果」なのだ。
安倍政権に「賃金主導型の経済成長」という正しい路線の政策を推進させるためにも、今、日本国民は声を上げなければならない。我々日本国民が日本国の「主権者」である以上、他人任せにするべきではない。
三橋貴明(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、わかりやすい経済評論が人気を集めている。
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