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ドコモ、3位転落を招いた独断的利益重視と非常識 中核ユーザの他社流出が深刻化
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141107-00010004-bjournal-bus_all
Business Journal 11月7日(金)6時0分配信
NTTドコモが苦境に陥り、大手携帯電話3社の中で独り負けの様相を呈しつつある。
ドコモは10月31日、2015年3月期連結業績予想の下方修正を発表。売上高に当たる営業収益は前期比1.4%減の4兆4000億円、営業利益は23.1%減の6300億円、最終利益は9.6%減の4200億円の見通しとなった。特に営業利益は期初予想の7500億円を1200億円も引き下げ、これが確定すれば営業利益は00年3月期(5457億円)以来の低水準となり、業界3位に転落する。
不振の主因は今年6月から導入した新料金プランの空振り。昨秋、懸案だった米アップルのスマートフォン(スマホ)iPhone販売に参入し、他社への契約者流出の最大要因を解消したかにみえた。6月からは新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」を導入し、14年度は「iPhone効果」をフルに発揮できるはずだった。しかし、新料金プランはデータ通信の多いスマホ中核ユーザにソッポを向かれ、他社への契約者流出も依然止まらない。同日記者会見した加藤薫社長も「新料金プランの影響で減益幅が拡大した」と誤算を認めたが、何がドコモの起死回生策を空振りさせたのだろうか。
●中核ユーザには割高な料金体系
ドコモが新料金プラン導入に踏み切ったそもそもの動機は、iPhone以外のスマホ不振であり、従来型携帯電話(ガラケー)からスマホへの移行が同社の計画を大きく下回ったのが主因。
今年4月25日に発表した14年3月期連結決算の営業利益は、前期比2.1%減の8192億円、2期連続の営業減益だった。昨秋のiPhone投入効果で同年下期の契約者純増数は前年同期比80%増に急伸し、この影響で通期ベースでもスマホ契約者数は前期比30%増の2435万件に達した。ところが、アンドロイドOSのスマホ契約者数がiPhone投入の煽りで計画を大幅に下回り、1620万台を目指していたスマホ全体の販売台数は前期比4%増の1378万台にとどまった。
そこでドコモは「ガラケーからスマホへの移行が計画通り進まなかったのは、スマホの月額料金の高さが原因。月額料金を下げればスマホの販売ハードルも下がり、ガラケーとの2台利用もしやすくなると考えた」(通信業界関係者)。そのため今年4月10日、同社は6月1日からの新料金プラン導入を発表。狙いは「音声通話収入が無料通話アプリ普及の影響もあって下げ止まらない。そこで定額制の導入で音声通話収入の減少に歯止めをかける一方、従量制のデータ通信収入を収益の柱にしよう」(同)というものだった。その結果、新料金プランは定額制の音声通話と従量制のデータ通信を組み合わせた料金体系となった。この料金体系はスマホでの通話は月額2700円で時間も回数も無制限となるが、データ通信は従量制という内容で、音声通話量が多くデータ通信量が少ないユーザにとっては旧料金プランより割安となり、逆のユーザにとっては割高となる仕組み。ここに落とし穴があった。
●販売現場に異変
新料金プラン導入後、スマホの通話利用が多いユーザは競うように新料金プランに移行した。導入前の予約段階で新料金プラン契約数は208万件に達し、7月5日には500万件を突破、10月14日に1000万件を突破した。一方、データ通信利用の多いユーザは実質値上げになるためソッポを向いた。
結局、通話利用の多いユーザ分の減収・減益が先行し、「iPhoneがなかったために他社へ流出したユーザを取り戻す」(加藤社長)という目論見も外れた。前出関係者は「新料金プラン導入開始直後から、販売現場では『データ通信中心のスマホ中核ユーザは説明を聞くとカウンターを離れ、他社へ流れてゆく』『スマホ中核ユーザを相手に新料金プランでは他社と戦えない』などの不満が渦巻いていた」と振り返る。
実はこの動きを決定づける事態が、9月から起きていた。
9月最初の週末、東京都内のあるドコモショップは、隣接する他社ショップの賑やかさと対照的に終日閑散としていた。
ドコモは8月31日付で旧料金プランを実質廃止、料金メニューを新料金プランに1本化した。このため、9月1日からドコモ契約者がスマホを機種変更する場合は、新料金プランに加入しなければ、端末購入料の一部を通信料から割り引く「月々サポート」を受けられなくなった。旧料金プランのままで機種変更する場合は月々サポートを受けられないので、「実質ゼロ円で購入できた端末が4万円以上の有料になった」(家電量販店関係者)のだ。その結果、「9月以降、機種変更をするスマホ中核ユーザの他社流出が加速した」(前出関係者)という。
通信業界では、キャリアが新料金プランを導入しても、旧料金プランの契約者は解約しない限り機種変更後も旧料金プランを利用できるのが通例。ユーザの選択を尊重しているからだ。通信業界担当の証券アナリストは「こうした業界の常識に反してまで旧料金プランを実質廃止したのは、自社契約者を1日も早く新料金プランに移行させようとした焦りの現れ。この焦りが1200億円の減益を生み出した」と指摘する。
●「利益重視への戦略転換」の落とし穴
新料金プラン導入の目的は「契約数重視から利益重視への戦略転換」(ドコモ関係者)にあった。ところが「10月末現在で旧料金プランから新料金プランへ移行した契約者の約60%が40代以上」(同)。つまり、音声通話料の高いユーザが早々と新料金プランへ移行してその恩恵にあずかる反面、ドコモは音声通話収入を減らしたことになる。業界関係者は「40代以上のユーザは業界で『ガラケー世代』と呼ばれ、携帯電話で長話をするのが特徴。一方、20〜30代ユーザは『スマホ世代』と呼ばれ、電子メールでコミュニケーションし、アプリで利便性を満喫しているのが特徴」と解説する。
以上の実態から浮かんでくるのは、新料金プランの空振りは、スマホユーザの実態を無視した「独善的な利益重視への戦略転換」(ドコモの親会社NTT関係者)の空振りにほかならない。今回の業績下方修正発表を聞いた同関係者は、「戦略があまりにも拙速で独善的。これでは昔の電電公社と変わらない」と嘆く。
株式市場ではドコモが業績下方修正と同時に示した「利益回復に向けた中期目標」に対しても「根拠が薄弱」と懸念の声が上がっている。iPhone参入から約1年、ここへきてドコモは抜本的なスマホ販売戦略の見直しを迫られている。
福井晋/フリーライター
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