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田原総一朗:リスクを伴う日銀の追加緩和は一種の賭け
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141106-00000004-fukkou-bus_all
nikkei BPnet 11月6日(木)23時43分配信
日銀は10月31日の金融政策決定会合で追加の金融緩和策を決定した。金融政策を決める政策委員は黒田東彦総裁を含め9人だが、そのうち4人が反対した。かつての金融政策決定会合は、予定調和で進められるとの批判もあったが、今回は大議論の末の決定だった。
■「円安になれば輸出が増え、景気がよくなる」という期待感
日銀はなぜ追加金融緩和策を決定したのか。
安倍内閣が放ったアベノミクスの「第1の矢」は、「異次元の金融緩和」である。デフレが続いた日本経済は民間の需要が伸びないため、政府が公共事業によって需要をつくることにした。これが「第2の矢」の「機動的な財政出動」である。財政出動するためには資金が必要になるため、国債を発行して賄うことにして、日銀は国債を金融機関から買うため円をジャブジャブに刷った。
円を大量に刷れば円安が進む。1ドル=72円台だった超円高の為替レートは、1ドル=100円前後まで円安に振れた。日本は“輸出国”であるから「円安になれば輸出が増え、景気がよくなる」という期待感から、日経平均株価は大幅に上昇した。
東京株式市場では、アベノミクスを実施する前に8700円台だった日経平均株価が2013年暮れには1万6000円を突破した。つまり、およそ1年間で2倍近くになったのである。
そして、「今後は景気が良くなるのではないか」という見通しが、昨年暮れあたりには強くなっていた。
■「デフレマインドからの転換が遅れる懸念」から追加緩和
ところが今年の夏以降になっても、アベノミクスの「第3の矢」である成長戦略は、“岩盤規制改革”が思うように進まず、目に見える成果が出ていない。規制緩和にしても女性の労働参加拡大にしても、その成果が得られるまでには長い時間が必要になる。
しかし、成長戦略の中身とそうした事情が国民に理解されていないこともあり、日経平均株価は10月半ば過ぎに1万5000円を割り込んだ。今年4月に実施された消費増税や、夏の豪雨災害などの影響もあり、消費が政府・日銀の想定以上に冷え込んだことが大きく影響した。
消費が低迷し、物価上昇率がやや下がっていることから、「デフレマインドからの転換が遅れる懸念があった」(黒田総裁)と判断し、今回の追加金融緩和策を決定したのである。
追加緩和策では、長期国債の買い入れ額を年50兆円から80兆円に拡充する。また、買い入れる国債の償還までの期間を最大3年拡大したり、上場投資信託(ETF)と不動産投資信託(REIT)の購入量を3倍に増やしたりする。
そうなると当然円安傾向がさらに強まることになり、実際、外国為替市場では円安が一段と進んで、11月5日には一時1ドル=114円台後半まで円が売られた。
■1回うまくいかなかった金融緩和が2回目にうまくいくのか
しかし、円安が急速に進むと、マイナス面も懸念される。
昨年の円安で輸出型企業は業績を伸ばしたが、それは為替変動によるもので、輸出数量や輸出額が伸びたわけではなかった。すでに多くの企業が海外に工場を移転していたことが影響した。今後も輸出が思ったように伸びない可能性もある。
むしろ、それより輸入品の物価のほうが上がって消費に大きな影響を与え、再び不況になるのではないかという懸念が強まっている。
追加緩和策をめぐる日銀政策委員の賛否で、黒田総裁を除くと4人が賛成、4人が反対で賛否同数となった。私が気になるのは、賛成した政策委員の多くが学者であり、反対を唱えた4人は全員、民間企業の経営者や証券会社のエコノミストだったことだ。民間出身のエコノミストたちが反対したということに、この追加金融緩和策の難しさが表れているような気がする。
今回、追加緩和に踏み切ったのは昨年4月に導入した「異次元の金融緩和」が十分な効果を上げていないと判断したからである。「物価の年間上昇率2%」を目標としたが、物価は徐々に上昇基調に転じたものの、原油価格の下落などもあって思うような効果は得られていない。最近では輸入品の価格が上がり、それに見合う賃金の上昇がないため、家計を圧迫するだけだといった声が強くなっている。
1回うまくいかなかった金融緩和が、はたして2回目にうまくいくのかどうか疑問視されている。
■追加緩和で景気を下支えし、増税判断を後押しか
追加緩和の反対派が最も心配するのは、日本がすでに抱える1000兆円以上の借金だ。今回の追加緩和により、日銀は年間に80兆円もの国債を買い入れることになる。日銀が政府の借金を抱え込むことになると市場からみなされれば、日本の信用は失われ、国債価格が暴落する恐れもある。
日本の借金は国内総生産(GDP)比で230%にも及ぶ。米国が同106%、ドイツが83%、ヨーロッパ諸国の中で財政が悪いとされるイタリアでさえ146%である。日本の借金は世界的に見て類のない多さなのだ。
もし日本の信用が失われ国債価格が暴落すれば、日本国債の買い手はいなくなり、スーパーインフレを招く恐れもあって財政破綻につながると指摘する識者もいる。
毎日新聞11月1日付の社説は「泥沼化のリスク高まる」と題して、追加緩和について「中央銀行として踏み込むべきではない領域にまた深く、日銀は足を進めてしまった」と厳しく批判する。
日銀が追加緩和に踏み切った背景には、12月初めに安倍晋三首相が最終判断するとされる消費再増税(8%から10%)の問題があるのだろう。追加緩和で景気を下支えし、増税判断を後押ししたいという思惑があるのではないか。
■追加緩和は一種の賭け
追加緩和は一種の賭けとも言えるかもしれない。今回の追加緩和がよかったのか、悪かったのか、今は判断できない。
デフレ脱却を目標とするアベノミクスは、あくまでもそれに向けてチャレンジし続けている。そのチャレンジへのこだわりが今回の追加緩和をもたらしたのだが、なかなか難しい状況に立ち入っているのは間違いなさそうだ。
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