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原油相場急落の真相
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kosugetsutomu/20141105-00040513/
2014年11月5日 10時0分 小菅努 | 大起産業(株)情報調査室室長/商品アナリスト
原油相場が急落している。NYMEX原油先物相場は、6月13日の1バレル=107.68ドルをピークに、11月4日の取引では一時75.84ドルまで値位置を切り下げている。これは、2011年10月4日以来の安値となる。
既に直近高値から30%近い急落相場になっている訳だが、10月以降の急ピッチな下げ相場に関しては、サウジアラビアの産油政策の影響を指摘せざるを得ない。
原油需給バランスには当然に歪みが生じる訳だが、伝統的には「スウィング・プロデューサー(生産調整国)」と称されるサウジの産油量調整によって、過度の歪みは阻止されてきた。原油供給不足が深刻化すればサウジが増産に踏み切り、逆に供給過剰が深刻化すればサウジが減産に踏み切ることで、少なくとも需給要因から原油価格が急騰・急落することは回避しようとする努力が継続されてきた。
少し前では、2012年後半にシェール革命が石油分野に本格波及し始めた際に、サウジアラビアが日量100万バレル規模の大規模減産に踏み切り、原油安にブレーキを掛けたのは記憶に新しい。今年に入ってからも、8月に内戦が続くリビア産原油の輸出が再開される中、サウジは日量40万バレルを越える生産調整を行い、原油需給バランスの均衡化を模索していた。
このため、マーケットではサウジの需給調整機能に対して絶対的とも言える信頼感があり、今年後半に入ってからの急激な需要環境・見通し悪化に対しても、サウジが対応するだろうとの漠然とした期待感があった。国際エネルギー機関(IEA)の試算だと、今年の世界石油需要は前年比で日量+70万バレルが想定されているが、今年6月時点では+140万バレルが予測されていた。即ち、前年比で必要とされる増産幅が僅か4ヶ月で半減した形であり、サウジがそれに対応するだろうと予測されていたのである。実際に、原油先物市場ではプロであるヘッジファンドが幾度となく安値で買いを入れていたが、それは「需要環境悪化で需給が緩んでも、サウジが減産対応を行うことで一時的な原油安に留まるだろう」との計算があった。
■サウジの産油政策が変更された?
しかし、9月以降のサウジの行動は、こうしたマーケットの期待感を完全に裏切るものになっている。即ち、需要減退圧力に対して、「生産調整」ではなく「価格競争」を挑んできたのである。
特に、主戦場になっているのがシェールオイルの本拠地である米市場である。11月3日にはアジアや欧州向け出荷価格(12月分)を引き上げる一方で、米国向けのみ引き下げ、シェールオイルとの対決姿勢を鮮明にしている。
従来、サウジはシェールオイルについて、原油供給を安定化させると少なくとも公式には歓迎の意向を示していた。しかし、世界経済の減速で需要が想定されていた程の伸び幅を確保できなくなる中、シェールオイルとの共存よりも対決を選択し始めた可能性が高まっている。これを受けて、原油市場では「Price War(価格戦争)」が始まったとの警戒感が広がっている。
純粋な生産コストで言えば、シェールオイルは08年前後の「高い原油価格」を前提としたものであり、現在でも70〜80ドル水準に大半の採算分岐点があると推計されている。このため、サウジが意図的に原油相場を押し下げて、シェールオイルがどこまでの原油安に対応できるのかチキンレースを挑んでいる可能性が高まっている。
純粋な生産コスト論で言えばサウジが明らかに優位だが、サウジには経済合理性の他に財政均衡に必要なコストラインも存在しており、我慢比べの接戦状態が続いている。例えるならば、隣接する安売りスーパーが顧客確保のために採算を度外視して安値競争を行っているような状況になっている。消費者にとっては歓迎すべき動きだが、どちらかが撤退するか、暗黙の妥協点を見出すまでは、安売り競争は続くことになる。
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