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大規模な追加緩和を発表する黒田日銀総裁。市場関係者の間には不信感が芽生えている=10月31日、東京都中央区の日銀本店(ブルームバーグ)
“日銀奇襲戦法”内外に不信感 不満ぶちまけ、いらだつ機関投資家ら
http://www.sankeibiz.jp/business/news/141103/bse1411030500001-n1.htm
2014.11.3 06:52 SankeiBiz
10月31日に黒田東彦(はるひこ)日銀総裁が発表した電撃的な追加緩和策は、同日の東京市場での円急落に続き、週末のニューヨーク外国為替市場でも円相場を6年10カ月ぶりに一時1ドル=112円台にまで押し下げた。もくろみ通り当面は円安基調が定着するとの見方が出ている。しかし、今回の日銀の対応に不信感を抱いた市場関係者は少なくない。今後の「市場との対話」に悪影響を与えるのは避けられそうもない。
■いらだつ機関投資家
「直前までのアナウンスと全然違う」「(国債を買い占めて)債券市場を壊す気か」。日銀が追加の金融緩和を公表した10月31日の夕方、日銀の大会議室では、追加緩和の内容を説明する内田真一企画局長らに対し、機関投資家らがいらだちを抑えきれない表情で厳しく問い詰めていた。
日銀で金融政策を大きく変更したり、半年ごとに「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」をまとめたりした場合に、機関投資家や「日銀ウオッチャー」と呼ばれるエコノミストら40〜50人を対象とした恒例の説明会。通常は1時間ほどで終了するが、この日は殺気だった雰囲気で約2時間も質問が途切れなかった。
日銀と市場の“窓口”である日銀ウオッチャーらがこれほど強く不満をぶちまけるのは異例。背景にあるのは黒田総裁への不信感だ。
黒田総裁は10月上旬の記者会見まで追加緩和の必要性を否定し、10月中に何度も国会に呼ばれた際も2年で2%の物価目標への「道筋は順調」と強気の見通しを貫いた。
今回の追加緩和を予想できた日銀ウオッチャーは少なかっただけに、市場は完全に意表を突かれて円安と株高が急速に進んだ。その意味でサプライズ緩和を評価する見方は多い。
だが、複数のエコノミストからは「黒田さんの言葉を信じていたのに、恥をかかされた」「日銀ウオッチャーがある意味がない」と恨み節も聞こえる。
近年、各国の中央銀行は金融市場の大きな混乱を避けるため、「市場との対話」を重視してきた。
米連邦準備制度理事会(FRB)は、昨年5月にバーナンキ議長(当時)が量的緩和第3弾(QE3)の縮小に中途半端に言及したことで金融市場が長期にわたり乱高下した「バーナンキ・ショック」の轍を踏むまいと、その後はアナウンスに気を配り今年10月末に大きな混乱なく量的緩和を終了させた。
黒田総裁は就任当初、「白川方明(まさあき)前総裁より対話力は上」と期待されていた。しかし、「今の黒田総裁は対話を否定している。今後、重要な発信があっても市場は信じなくなる」(米系投資銀行のブラウン・ブラザーズ・ハリマンの村田雅志バイスプレジデント)と、評価は様変わりした。
■寝耳に水の政策委員
追加緩和は金融政策を決める政策委員(9人)の一部にとっても寝耳に水だった。黒田総裁は大規模緩和の導入時、資金供給量を「2年で2倍」にするなど数字の2を強調したが、追加緩和では、上場投資信託(ETF)の購入量をさらに3倍に増やすなど「3」をキーワードにした。しかし、4人の委員は「効果が見えにくい」などと反対し、わずか1票差という薄氷を踏むような採決だった。
真相は分からないが「会合では反対の委員が大激怒した」との話も漏れ伝わる。ETFの買い増しについても「中銀の株式市場への介入と受け取られかねない」との懸念も出たようだ。
サプライズ緩和が日銀内の調整さえ不十分なまま打ち出されたことで、黒田総裁と政策委員の間で金融政策決定会合のたびに不協和音が生じるのは必至。
また、2%物価目標の達成に向けて最大の鍵となる賃上げも不透明だ。
東証1部上場企業の2014年9月中間決算は円安で好業績にわく輸出企業に対し、国内主体の非製造業では下方修正する動きも出ている。
海外経済の減速懸念も強く、日立製作所の中村豊明副社長は「一律全員(の賃金)を上げるようにはなかなかいかない」と発言。2年連続のベースアップには慎重論もある。
黒田総裁は引き続き難しいかじ取りを迫られることになる。(藤原章裕、万福博之)
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