http://www.asyura2.com/14/hasan91/msg/452.html
Tweet |
日銀「ハロウィーン追加金融緩和」は前回消費増税の予測ミスを補ったに過ぎない!
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40979
2014年11月03日(月) 高橋 洋一「ニュースの深層」 現代ビジネス
日銀は10月31日(ハロウィーン)、長期国債の購入を約80兆円に増やす追加金融緩和を決めた。アメリカFRBが追加緩和をやめたときだったので、世界中が驚いた。
以前の日銀は地ならしとして情報リークしながらサプライズなしの小出しをしていたが、今の日銀の情報リークなしの手際良さを評価したい。
そのタイミングと中身(規模)はどうか。まず、新聞各紙の評価を見ておこう。
■正しく評価できず「副作用」で誤魔化すマスコミ
11月1日の各紙社説では、朝日「日銀追加緩和―目標に無理はないか」、読売「日銀追加緩和 脱デフレへ強い決意を示した」、毎日「日銀の追加緩和 泥沼化のリスク高まる」、日経「異次元の追加緩和に政府も応えよ」、産経「日銀の追加緩和 今度こそ脱デフレ確かに」、東京「日銀追加緩和 危ない賭けではないか」という見出しだ。
朝日、毎日、東京という左派系新聞で、金融緩和に反対の論調である。欧米では金融緩和は左派政党のほうが言う。左派系が雇用を改善する金融緩和に反対なのは日本だけの特徴だ。左派系の勉強不足は深刻だ。
実際、本コラムで何度も強調してきたが、金融緩和によって、雇用状況は格段に改善してきた。就業者数(季節調整済み)について、民主党政権末期の2012年12月には6257万人だったが、政権交代による金融緩和でV字回復して2014年8月までに6362万人まで増加した。
一方、本来左派政党である民主党は、金融緩和を理解できなかったので、政権を取った2009年9月の就業者数は6309万人だったが、そこから減り続け、政権末期には上述の通り6257万人まで少なくなった。両者のパフォーマンスの差は歴然としている(下図)。
さらに、各紙とも「副作用」を心配している。朝日「一方で、異次元緩和策は大きな危うさをはらんでいる」、読売「財政規律と日銀の信認が揺らがないよう、金融緩和の副作用に注意が必要だ」、毎日「しかも副作用の多い、劇薬なのである」、日経「もちろん追加緩和にはマネー膨張という副作用がある」、東京「大きすぎる副作用」という具合だ。
マスコミは、金融緩和のタイミングと中身(規模)についてコメントできないようだ。だから「副作用」なんて言葉で誤魔化している。
この「副作用」がまったく的外れであることを示す例え話がある。今、来日しているクルーグマン教授がかつて言っていたことだ。「火事の時、消火するために水をかけたら、家具が水に濡れると怒るようなものだ」と。
そもそも副作用と言うが、具体的なことが言えない。
アベノミクスの前には、金融緩和するとハイパー・インフレになる、国債が暴落する、円も暴落すると言われた。しかし、物価はインフレ目標2%に向かって上がり出したが、ハイパー・インフレにはなっていない。金利も当初は一時高くなったがすぐに落ち着き、円は予測通りに若干安くなった。つまり、ハイパー・インフレも、国債暴落も、円暴落もすべてウソだった。「副作用」という曖昧な言葉で、そのウソを再び主張しようとしているだろうか。
マスコミが副作用なんて曖昧なことを言うのも、金融緩和のタイミングと中身(規模)についてコメントできないのも、金融政策の効果を理解していないからだ。
経営者の中にも、金融緩和について今でも誤解している人がいる。先日、ある企業経営者と話をしたが、同じような懸念を持っていた。
筆者が、ハイパー・インフレとは何%か、国債の暴落とは金利が何%か、円暴落とは1ドルいくらかと問いただすと、それぞれ、20%、30%、300円くらいと言っていた、しかし、それは今の金融緩和程度では起こり得ない。こうした数字で議論していくと、ハイパー・インフレ、国債暴落、円暴落はいずれもウソであることがわかる。
■「政府の子会社」が消費増税を主張するおかしさ
現時点の経済状況は、消費増税によって需給ギャップが生じている。そのギャップは、十数兆円にまで拡大している(下図)。今回の金融緩和は、中期的にこの需給ギャップを埋めるような有効需要(消費、投資等)の創出にはまずまずの規模である。
そして、そのタイミングである。この需給ギャップの拡大は消費増税によってもたらされたが、消費増税の悪影響は事前に予測可能だ。少なくとも、本コラムを読んでいればできるはずだ。それにもかかわらず、日銀は見通しを誤った。
そのミスは、日銀の展望レートにおける2014年度の成長率とインフレ率の見通しを、これまで何回も下方修正してきたことから誰の目にもわかる。
ちなみに筆者は、1年前の2013年12月16日付けの本コラム(→こちら)で、消費増税の悪影響を予測し、2014年度の実質経済成長率は0.5%程度と予想して、金融緩和も予防的に早期に行うべきと書いている。
こうした見通しに立てば、日銀の経済見通しの修正は1年遅れと言わざるを得ない。なお、同コラムでは、消費増税のマイナス効果を過小視する人が陥る穴(マンデル=フレミング効果)についても書いているが、黒田日銀総裁は消費増税賛成の立場だったゆえに、その穴に落ちたのだろう。
こうした意味で、今回のタイミングは1年遅れ、少なくとも消費増税の影響が顕在化していた6月以降から4カ月は遅れている。もちろん、遅れはしたが、やらないよりやった方がいいことは言うまでもない。
ただし、気がかりな点もある。今回の政策決定に賛成したのは9人の委員のうち5人で、4人は反対したことだ。この4人は金融政策の再勉強をしなければいけない人たちだ。金融政策が物価安定と雇用確保の役割を果たしているのがわからないのだろう。専門家とはとても思えない素人と断言できる。10年後に議事録が出るが、その時に恥をさらすだろう。
また、日銀が金融緩和したのだから、政府は消費増税せよとの意見が出ているのも心配だ。日経の社説は、「先進国で最悪の状態にある財政への配慮も欠かせない」と消費増税を求めている。とんでもない意見だ。
はっきり言おう。今回の日銀の措置は、これまでの5→8%への消費増税に影響について日銀の予測ミスを補うもので、これからの8→10%への再増税への対応ではない。
日銀を政府への圧力として使おうという人は、まず間違いなく日銀の独立性を誤解している。日銀は政府から独立しているのだから、黒田総裁が消費増税を言うことを問題とは思っていない。こうした誤解はマスコミや学者にも多い。
世界の中央銀行で、独立性という場合、手段の独立性であって、目的の独立性でない。これを理解していれば、黒田日銀総裁が消費増税について意見したり、前のめりであること自体がおかしい。
誤解をおそれず簡単に言えば、日銀は政府の子会社であり、親会社の政府が決めた目標を達成するために、子会社として達成手段の自由度を持つだけだ。親会社の大きな目標については、親会社が決め、子会社がやること以外は親会社が実行する。この意味で、増税するかどうかは、親会社の社長が決めるべき事柄で、子会社の社長が口出すことはしない。
今回は子会社が親会社の事業にまで意見してしまった。その一方で、子会社がやるべきことについては見通しを外して、その結果、子会社の業務までやり直すはめになった。そのような時、親会社のやるべきことに、ミスした子会社が意見できるはずない。
記者会見で、黒田日銀総裁は「消費増税は政府の決めること」と、これまでの政府に物申す言い方から大きく変化した。
消費増税の判断について、安倍政権はこれから有識者会合などを経て決めることとなるが、これで日銀は雑音を出せなくなった。安倍首相は、中央銀行の独立性について正確に理解しているので、黒田総裁に釘を刺した可能性すらある。消費増税は最終的に安倍首相の判断であるが、フリーハンドは広まったと言えよう。
消費増税の是非や、それを取り巻く政治情勢(再増税スキップで解散の可能性など)については、今週発売の週刊現代や政策工房コラム(→こちらhttp://urx.nu/dGBC)を参照してもらいたい。
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。