02. 2014年11月04日 07:57:20
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中銀がまだ力を行使できることを示した日銀 2014年11月04日(Tue) Financial Times (2014年11月1/2日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) 中央銀行はお金を創り出すことができる。そのため中銀は、ほんのいくつかの言葉を使って市場を動かす力――ひいては世界の経済圏の間の交易条件を変える力――を持つ。 中銀は予想をコントロールすることで、その力を最大化する。肝心なのは中銀の行動だけではない。中銀は究極的に、為替レートやコモディティー(商品)価格、債券利回りなど、市場が定めた水準を通じて力を行使する。ニュースを聞いた時に、市場は過剰反応して行き過ぎる傾向がある。このことは、中銀が衝撃を望んでいるときには役立つが、落ち着きを望んでいるときには問題を生み出す。 市場の予想を見事に管理したFRBと日銀 10月最終週に、2つの中銀が市場予想の管理の見事な模範を示した。10月29日に米連邦準備理事会(FRB)は不満のささやきさえ全く出ない中、「QE(量的緩和)」として知られる債券購入を終了した。市場は用意ができており、落ち着いていた。 「日銀が升酒持ってきた」 追加緩和受け株価上昇 日銀の追加緩和は市場の不意を突いた(10月31日、日銀本店で記者会見する黒田東彦総裁)〔AFPBB News〕 そして31日、日銀は反対のことをし、すでに積極的だった債券購入を拡大して完全に市場の不意を突いた。 債券購入は、債券の利回りを押し下げ、通貨を弱くする方法だ。なぜなら、外国人がそこへお金を預けておくことで得られる利益が減るからだ。通貨安は、日本経済にとって極めて重要な輸出業者を後押しする。 短期的には、FRBも日銀も望んだものをすべて手に入れた。米国の金利は依然として非常に低いが、もはや10月半ばのような経済的なパニックを示してはいない。当時は10年物国債の利回りが一時、1.86%まで低下したが、今では2.3%だ。 また、言うまでもなく、S&P500株価指数は、大きく下げた後に戻して史上最高値を更新した。同指数は5週間で9.8%下げた後に10.8%戻している。 日本について言えば、日銀は円を懲らしめ、その両目の間を撃ち抜くことに成功した。円の対ドル相場は現在、2008年第1週以来の安値をつけている。2011年以降、円は32%下落した。チャートを見れば分かるように、円安は依然として、直接的に日本株上昇につながっている。 日銀の行動は、捨て身の様相を呈していた。政策委員の裁決で5対4の僅差で合意された追加緩和は、ほとんど全面的なサプライズだった。 米国でのQE終了を受けたドル高――ドル相場は主要貿易相手国の通貨に対し、夏から10%上昇し、交易条件が大幅に変化した――は、日銀にかかる圧力を軽減したはずだ。また、現在20年ぶりの高水準をつけている日本のコア・インフレ率も正しい方向に向かっていた。 だが、日本のインフレ率は今春に実施された消費増税でかさ上げされていた。基本的な物価上昇率から、日銀は行動せざるを得ないと感じた。市場を驚かせることで、日銀はコストをはるかに上回る成果を得た。 株価が示した反応から分かるように、市場はQEが好きだ。だが、全体像を見ると、もっと不安な気持ちになる。為替相場の急激な変動は非常に危険だ。これほど多くの国が同時に同じことをやってのけようとしているときは、なおのことだ。 金相場が発する不穏なメッセージ IMF、金準備403.3トンを売却へ 金相場は2011年の最高値から39%下げた〔AFPBB News〕 2011年の最高値から39%下げ、現在、2010年以来の安値をつけている金価格のメッセージも気がかりだ。 金相場の下落は、中銀による新たな紙幣増刷がインフレ高進を招くとの不安が後退したことを示唆している。だが、代わりに中銀は不況とデフレを避けられないとの考えが広がっただけだ。 ドルと米国経済は、弱者グループの中で最も強いだけではない。金は、トレーダーが紙幣の価値が実物資産に対して上昇することを物語っている。これはデフレを暗示している。 それほど賞賛されないロシアの中銀のさほど目立たなかった動きは、また別のリスクを示している。ロシアはエネルギー輸出に依存している。原油価格の急落はルーブル急落を招き、ルーブル相場は今年、ドルに対して24%下落した。ルーブル安はしぶといインフレのリスクを高める。現在、ロシアのインフレ率は8%を超えて推移している。 このため、ロシアの中銀は10月30日、金利を1.5%引き上げ9.5%とした。利上げは一時的なルーブル高騰をもたらしたが、すぐに相場は反転した。 一方、多額の経常赤字を抱える「フラジャイル(脆弱)」な新興国の通貨も、FRBが昨年、初めてQE終了への準備を始めた時と同様に、再び下落している。 ECBはどう出る? 11月初旬は、欧州中央銀行(ECB)の番である。ECBは大規模な資産購入を避けようとしてきたが、資産を購入するよう求める圧力が高まっている。10月に市場に走った動揺は、ECBが期待されている通りに債券購入に踏み切らないとの不安によるところが大きかった。ECBはどう出るだろうか? 発作的な市場の動揺は、たとえ即座に反転したとしても、不安感を表す。10月最終週の出来事は、市場を動かす中銀の力を見せつけた。 だが、米国株式市場の史上最高値は、中央銀行は市場を動かせるだけでなく――市場を動かせることは誰もが知っている――、世界経済も動かせるということに対する、危険なほど無防備な賭けだ。 By John Authers http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42119 スペインの実感なき景気回復 2014年11月04日(Tue) Financial Times (2014年10月31日付 英フィナンシャル・タイムズ紙) スペインの首都マドリードに住む比較的貧しい人たちの多くにとって、食卓に食べ物を並べる日々の苦労は、市の北の外れにある巨大な赤レンガの倉庫で終わる。中央食料銀行(フードバンク)である。 パスタやコメ、ビスケットなどの主食とともに、オレンジやピーマンの木箱が天井まで山積みになったこのフードバンクは、マドリード各地に続々とできたスープキッチンやその他の食料慈善事業の主な供給源になっている。5万キロの食べ物、飲み物が毎日この倉庫から出て行く。 景気後退から脱して1年経ってもフードバンクに依存する人は増加中 職員は、スペインの危機が始まってから寄付が急増しているが、需要はそれ以上のペースで伸びていると指摘する。過去5年間で、スペインの55のフードバンクに依存するスペイン人の数は78万人から150万人に急増し、景気回復の兆候が増えているにもかかわらず、その数は増え続けているという。 「マクロ経済のレベルでは、状況が改善していることが分かる。だが、我々が接する人たちには変化が見られない」。スペイン食料銀行協会のニコラス・パラシオス会長はこう言う。 「失業手当が期限切れになったり、貯金をすべて使い果たしたりする人がますます増えている。そして、いくらか所得があったとしても、数百ユーロでは到底家族を養えない」 パラシオス氏の観察は、スペイン経済の見通しに関する最近の楽観論の高まりに痛烈な反撃を食らわすものだ。 スペインは1年以上前に景気後退から抜け出しており、来年にはユーロ圏の大国の中で最も急速な成長を示すと見られている。失業率はようやく低下し始めており、スペインの金融部門――非常に長い間、欧州全体の悩みの種だった――は、欧州中央銀行(ECB)の最近のストレステストで「潔白」のお墨付きを得た。国際通貨基金(IMF)でさえ、予想以上に速いスペインの景気回復を絶賛している。 長期失業者の苦悩 だが、エコノミストやアナリストは、最近の回復は深刻な社会危機を軽減するにはほとんど効果がないと警告する。特に、急速に膨れ上がるスペインの長期失業者や、勤労所得が全くなく、いかなる形の政府支援に対する権利も持たない70万超の家計の運命に大きな懸念がある。 もう1つの大きな不安は、危機で最も大きな影響を受けた個人の多くが非常に低い能力しか持たず、労働市場から大きく切り離されているため、今後数年間で景気回復が加速したとしても、新たな仕事を見つけるのに苦労することだ。 スペインの失業率27%超える、過去最悪を更新 スペインの失業率は2013年のピーク時に約27%に達した(写真はスペイン北部の職業案内所の前に並ぶ人の列)〔AFPBB News〕 「スペインは再び成長しているが、まだ暗い将来と向き合っている人が大勢いる」とマドリード自治大学の経済学教授、マルセル・ヤンセン氏は言う。 「最初に失業を減らすのは、実は結構簡単だ。最近の職歴を持ち、今は非常に安く雇えるようになった人たちが非常に多く存在するからだ。問題は、実際に簡単に雇える人をすべて吸収した時に始まる」 スペインの最新の労働市場調査のデータは、短期失業者にとっては、新たな仕事を見つける機会がすでに著しく改善していることを示している。 だが、1年以上失業している人にとっては、形勢は危機の真っただ中と同じくらい不利で、9月までの3カ月間に新たな仕事を見つけた人はわずか13%にとどまっている。2年前、あるいはさらに長く4年前に労働市場を去った人たちにとっては、望みはさらに薄い。 「地震の揺れが収まっても、多くの人がまだがれきの下」 現時点ですでに、2年以上失業しているスペイン人は240万人以上いる。2年というのは、それを過ぎると失業手当がもらえなくなる期間だ。現在は、失業手当に代わる政府支援は何もない。 ローマ・カトリック教会の慈善事業部門、カトリック中央協議会(カリタス)のような組織がその空白を埋めようとしているが、彼らも警鐘を鳴らしている。「地震の揺れは収まったかもしれないが、人々はまだがれきに下に埋もれている」とカリタスの調査部門責任者フランシスコ・ロレンツォ氏は言う。 カリタスから緊急援助を受けている人の数は、2007年の35万人から現在は100万に膨れ上がっている。カリタスによると、景気後退の終焉から1年経った今でさえ、回復がスペイン社会の最も脆弱な部分に届いている兆候は見られない。 「経済成長が戻ってきたとか、銀行が堅調だとかいった話を耳にする。だが、人々は絶望している」とカリタス・エスパーニャの事務局長セバスティアン・モーラ氏は言う。 社会から疎外される人たち 自らの分析を裏付けるために、カリタスとその調査部門であるFOESSAは10月末、スペインの社会危機に関するこれまでで最も詳細な研究を公表した。 報告書は約700ページに及び、その調査では1200万人近いスペイン人が「社会的疎外」を経験していることが分かった。社会的疎外とは、社会の他に人々には当然と見なされている基本的な権利やサービスを少なくともいくつか得ることさえできていないという意味だ。 報告書は、貧困と不平等の急増と比較的新しいワーキングプアの出現についても指摘している。 マドリードの食料銀行に話を戻すと、パラシオス会長は、自分の最終的な望みはこの組織を時代遅れにすることだと言う。だが、スペインの景気回復が2年目に入る中、同氏は自分の夢が叶えられる可能性はほとんどないと思っている。「残念ながら、我々の顧客はまだ長い間、ここに残るだろう」 By Tobias Buck in Madrid http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42114
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