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何故このタイミングで日銀の追加緩和なのか
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kubotahiroyuki/20141101-00040426/
2014年11月1日 9時17分 久保田 博幸 | 金融アナリスト
10月31日に日銀は本日の金融政策決定会合で追加緩和を決定した。市場では事前に一部で追加緩和観測は出ていた。これは短期金融市場でのマイナス金利の発生により、国債の買入れ額の調整や、買い入れる期間の延長が必要とみられていたためである。これは技術的なことであり、もしこれを行ってしまうと追加緩和と捉えられ、中途半端な緩和のような格好となることを避けることで今回の追加緩和はないと私は見ていた、
ところが日銀はかなり無理をして、二度目のバズーカを撃ってきた。無理をしてというは反対票が4票も入ったことでわかるかと思う。黒田総裁は何としてもこのタイミングで追加緩和を実行したかったと思われる。
今回決定されたのは、マネタリーベースが年間80兆円(10〜20兆円追加)に相当するペースで増加するように金融調節を行う(賛成5反対4)。そのため、資産買入れを拡大し、長期国債買入れの平均残存年数を長期化する(賛成5反対4)。長期国債については保有残高が年間80兆円(約30兆円追加)に相当するベースで増加するよう買入れを行う。買入れの平均残存期間を7〜10年程度に延長する(最大3年程度延長)。ETFとREITの保有残高は、それぞれ買い入れペースを年間約3兆円と年間約900億円とそれぞれこれまでの3倍に増やす。反対したのは森本、石田、佐藤、木内の4委員。
なぜ、このタイミングで日銀はサプライズともいえる追加緩和を実施してきたのか。そのひとつの要因として、公表文にあったように「短期的とはいえ、現在の物価下押し圧力が残存する場合、これまで着実に進んできたデフレマインドの転換が遅延するリスクがある」ためと思われる。
今回公表された展望レポートでは、消費者物価の見通しについて、消費増税の影響を除いたベースで今年度は1.2%、来年度は1.7%と、前回の見通しからそれぞれ0.1%0.2%下方修正している。今後のコアCPIは1.0%近辺での推移が予想されることで、日銀の物価目標達成は困難という見方が広がる恐れがあった。
31日の朝には9月の全国消費者物価指数(除く生鮮食料品、コアCPI)が発表され、前年同月比プラス3.0%となった。日銀が試算する消費増税による影響分の2.0%を差し引くと1.0%となる。電気代、ガソリンなどの上昇幅が縮小し、エネルギーにより総合の上昇幅が縮小した影響が大きい。
全国CPIの先行指標となる10月の東京都区部のコアCPIは前年比プラス2.5%と前月の2.6%からさらに縮小している。電気代や都市ガス代などの上昇幅が縮小したことや、生鮮食品を除く食料や外国パック旅行の上昇幅が縮小したことなどが影響した。
これに加えて展望レポートでの物価見通しの下方修正もあり、日銀の量的・質的緩和の効果について疑問符が打たれかねない。これを見越して追加緩和を行なってきたとの見方もできよう。
しかし、それよりも意識されていたのは政府への支援策ではなかったかと思われる。GPIFの運用比率の変更の正式アナウンスが31日の夕方に出ていたが、これにタイミングを合わせることで株価を押し上げることができる。日銀はETFとREITの買入れ増額も発表していた。
GPIFはある程度国債の残高は落としているとはいえ、今回の運用比率の変更による国債市場への影響も気になるところだが、その分は日銀がしっかり買い入れる格好のようにも映る。
さらに29日のFOMCではFRBはテーパリングを終了させた。「相当な期間」との表現は残ったが、それは利上げ時期を先送りさせるものとは思えず、市場もFRBのゼロ金利解除を視野に入れつつある。そのタイミングで日銀が追加緩和を実施すれば、FRBと日銀の金融政策の方向性がより顕著となり、それはつまり円安ドル高を加速させる要因となる。元財務官の黒田総裁だけに、この円安を促す影響も考慮に入れていた可能性がある。
結果として、消えつつあったアベノミクスよもう一度、のような効果、つまり円安株高が意識されての今回の追加緩和だと考えられる。消費増税に向けての下地作りとの見方もあり、確かにそういう効果も意識されたかもしれないが、消費増税を意識するのであれば、今回のタイミングはあまりに早すぎる。むしろ追加の経済政策等とセットにした方が良いはずである。
今回の追加緩和での効果は以上のようなことが想定されるが、問題は副作用となる。国債を、さらに長いものを主体に買い増すようだが、これで短期債だけでなく長期債や超長期債の品薄感がさらに強まりかねない。マネタイゼーションとの見方が強まることも予想される。その意味でも消費増税は黒田総裁にとっては必要不可欠となるのかもしれないが、果たして債券市場はこのままおとなしくしているのか。日本国債の潜在リスクがさらに高まっていくであろうことは確かであろう。
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