07. 2014年10月31日 21:30:53
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焦点:黒田日銀がQQE限界説に実力行使、期待転換へ本気度示す 2014年 10月 31日 20:36 JST [東京 31日 ロイター] - 日銀が31日に断行した追加金融緩和は、円安進行の副作用や短期国債市場でのマイナス金利発生、目標達成時期の延期観測など現行の量的・質的金融緩和(QQE)をめぐってさまざまな限界説がささやかれていた中、レジームチェンジ実現に向けた日銀の本気度を実力行使で示し、先手を打った格好だ。ただ、票決は5対4の僅差となり、今後の政策運営や市場との対話などに大きなリスクを背負う決断ともなった。 追加緩和決定後に会見に臨んだ黒田東彦総裁は、追加緩和の狙いについて「政策によって人々のマインドに定着したデフレマインドの抜本転換させる」と、昨年4月のQQE導入時を彷彿(ほうふつ)とさせる強い口調で宣言した。 導入から1年半が経過し、これまで総裁は「(QQEは)所期の効果を発揮している」「日本経済は2%の物価安定目標の実現に向けて道筋を順調にたどっている」など政策効果を繰り返し強調していた。 それだけに、突然の追加緩和に意表を突かれた市場では、急速に株高・円安が進行。黒田緩和第2弾は市場のサプライズを演出し、日銀の狙い通りの反応になったといえる。 もっとも、市場の中では総裁の強気発言の裏で、QQE限界説がささやかれていたのも事実。円安進行による原材料価格の上昇が中小企業や地方経済に与える影響に懸念の声が広がり、短期国債市場では、日銀による大規模な買い入れが需給をひっ迫させ、マイナス金利が頻発する異常事態が発生。物価目標達成が難しくなっても、日銀は追加緩和に躊躇せざるを得ない、との見方が増えていた。 また、QQE導入時に宣言した2年程度での物価2%達成の期限が視野に入る中で、消費増税後の景気低迷や原油価格の急落に伴う消費者物価の伸び悩みが次第に鮮明化し、市場では日銀が目標達成期間をいずれ延期するとの思惑も浮上していた。 こうしたQQE限界説の台頭は、「目標実現に強くコミットする」(黒田総裁)ことでデフレマインドの転換を目指す日銀には、看過できない事態。総裁は会見で「金融政策は為替レートを目標にやっているわけではない」「マイナス金利が特に問題あるとは思っていない」「2年程度を念頭にできるだけ早期にとの考えは変わらない」と、これらの思惑を一蹴。「政策余地は依然としてある」と市場の期待をつなぎながらも、今回の追加緩和で目標達成は可能と自信を示した。 総裁が指摘したように、今回の追加緩和がリスク顕在化を未然に防ぐ措置とはいえ、直前まで順調と繰り返していた中での追加緩和は、金融政策に対する予見性を後退させ、市場とのコミュニケーションに支障をきたす可能性がある。 また、もともとQQEに対して政策委員内でさまざまな意見があった中で、今回の採決では9人の政策委員の票数が5対4に分裂。今後の委員会の議論に禍根を残す懸念もある。 さらに追加緩和の効果が、昨年4月に打ち出したQQEのように劇的に出るのかどうか、市場の一部では懐疑的にみられている。QQEは、円安と株高で個人や企業の心理を好転させ、投資余力を高めることに貢献してきた。 ただ、今回の追加緩和で円安と株高が持続するのか、疑問の声が早くも市場関係者の一部から出ている。仮に停滞感が早めに出ると、物価2%の目標達成が難しくなるシナリオにはまり込む可能性もある。 また、黒田総裁は否定したものの、安倍晋三首相による12月に消費税再増税の是非の判断を間近に控えたタイミングでの追加緩和になった。財政再建の重要性を強調する黒田日銀の増税サポートとみられる可能性もあり、こうしたさまざまリスクをとった追加緩和の成否がこれから試される。 (伊藤純夫 編集:田巻一彦) http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0IK12720141031
黒田日銀「バズーカ2」がさく裂、初日は前回同様の株高・円安 2014年 10月 31日 19:12 JST [東京 31日 ロイター] - 日銀が予想外の追加金融緩和を決定し、市場は再び驚きに包まれた。31日の市場では「バズーカ砲」と呼ばれた前回の量的・質的量的緩和に匹敵する株高・円安をもたらした。ただ、黒田東彦総裁がこれまでの「強気の看板」を下ろしたともいえ、市場や家計の期待に働きかける力を疑問視する見方も出てきた。米国を除いた世界経済が減速感を強める中で、サプライズの余韻がどこまで続くか注目される。 <「続編」の初日は盛況> 映画などで「続編」が「オリジナル」を超える評価を得るのは容易ではないが、日銀が31日の決定会合で導入を決めた追加の金融緩和策は、初日のマーケット反応という点において「バズーカ砲」と呼ばれたオリジナルの緩和策に匹敵する効果を発揮した。 31日の東京市場で日経平均.N225は、米株高や年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用比率見直しに関する報道などでもともと200円高水準にあったが、追加緩和が決定されると一時、875円まで上昇幅を拡大させた。 量的・質的量的緩和の導入が決定された昨年4月4日、日経平均は200円安水準から272円高まで上昇、トータルの上げ幅は472円となったが、今回の上げ幅は675円で単純に比較すれば前回を上回る。 ドル/円JPY=EBSは前回と同じ2円程度の円安をもたらしており、現時点に置いては「オリジナル」に匹敵する市場へのインパクトとなっている。 市場にサプライズ感が広がったのは、黒田東彦日銀総裁がこれまで強気な姿勢を崩してこなかったことで、今回の決定会合でも政策は現状維持になるとの見方が多かったためだ。だが、追加緩和のメニューの「ひと工夫」も好感されたようだ。 ETF(上場信託投信)を年間約3兆円、J−REITを同約900億円とこれまでの3倍増のペースで買うとし、「2倍」がキーワードだった前回を上回る緩和度合いを演出。ETF買い入れにJPX日経400.JPXNK400を連動対象に加えるとしたことも、日本株買いの材料となっている。 <実体経済への効果に疑問> ただ、株高・円安トレンドの持続性に関しては、市場でも疑問視する声が少なくない。現在のQQE(量的、質的金融緩和)が、物価や経済に与える効果は乏しいとの見方がマーケット参加者の間でも強くなっているためだ。 実際、強烈な金融緩和策を1年半導入しても、物価はなかなか上昇していない。31日朝発表された9月全国消費者物価指数(生鮮食品を除く、コアCPI)から、消費税率引き上げによる押し上げ分2%を差し引くとプラス1.0%にとどまる。 SMBC日興証券・日本担当シニアエコノミストの宮前耕也氏は「今回、追加緩和を決めたことは、ある意味、日銀が物価に対する強気の看板を下ろしたともいえ、市場や消費者の期待に働きかけるという量的緩和の最大の効果が、薄れるおそれもある」と指摘。今回の追加緩和によって、2年で2%という物価目標が達成されるかは疑問だとしている。 また、1ドル110円を超えるような円安には、日本だけでなく米国からも不満の声も強くなっている。「バズーカ1」のときのような円安全面賛成の雰囲気とは異なる。円安だけでは輸出が伸びないことも明らかになった。物価上昇と消費税に圧迫され、実質所得は依然マイナスだ。 昨年は世界経済の回復も、株高・円安のリスクオンを後押しし、日銀緩和だけでなくアベノミクスの追い風となったが、足元の欧州や新興国の景気は減速。米国だけが堅調さを維持しているが、先行きには不透明感も強い。国際通貨基金(IMF)の予測では今年、来年ともに世界経済は中立水準の4%成長の達成は難しい。 <アベノミクスに不信感も> さらに市場では、今回の追加緩和が、消費再増税や年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用方針変更に密接にからんでいるとの観測が多い。「GPIFの国債運用の減額を日銀が引き受け、次の増税を支援するという合わせ技だ」(JPモルガン証券 チーフエコノミストの菅野雅明氏)との観測が根強くささやかれている。 効果的な政策パッケージとして海外投資家が好感してくれれば、円安による輸入物価上昇や株高による資産効果が再び期待できる。しかし「消費再増税によって景気が腰折れするとみられてしまえば、海外勢は日本株を買わないだろう。デリバティブの巻き戻しや短期筋のショート巻き戻しが一巡すれば、頭打ちになってしまう」(中銀証券・本店営業部次長の中島肇氏)との懸念もある。 昨年4月4日の「バズーカ砲第1弾」は日経平均を1万2362円(4月3日)から1万5942円(5月23日)に3580円押し上げ、ドル/円は93円から103円に約10円円安が進行した。今回の「バズーカ2」がそれだけの効果を発揮できるかは、やはり海外投資家次第だろう。 海外投資家は昨年、現物株と先物を合わせて約15兆6500億円買い越した。その背景にはアベノミクスへの期待があった。しかし、金融緩和と財政政策で時間を稼いでいるうちに、成長戦略によって日本経済を成長軌道に乗せるというシナリオは、いまだ実現できていない。 シティグループ証券・チーフエコノミストの村嶋帰一氏は、今回の追加緩和は、量的緩和という政策効果への懐疑論が強まるという世界的潮流の中で決定されたと指摘。「景気や物価へのインパクトが限定的なものにとどまるとすれば、今回の決定の金融市場へのインパクトも意外に短命に終わる可能性が否定できなくなる」との見方を示している。 (伊賀大記 編集:田巻一彦) http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0IK0WA20141031 コラム:米利上げ「Xデー」は来年6月17日=鈴木敏之氏 2014年 10月 31日 16:57 JST 鈴木敏之 三菱東京UFJ銀行 シニアマーケットエコノミスト [東京 31日] - 10月29日の米連邦公開市場委員会(FOMC)は、俗に「QE3」といわれる証券購入プログラムの終了を決めた。金融政策正常化の次のステップである利上げ開始のタイミングは、2015年6月17日となる可能性が高いとみている。 ただ、あくまで正常化の御旗のもとでの利上げであり、経済にブレーキをかけるような大きな利上げサイクルにはならず、緩和継続の意思が強調されるだろう。それは、米金利が上がるからドル高・円安が一方的に加速するといった類いのトークを聞かされても、眉に唾をつけて慎重に点検しなければならないということである。 <強烈な緩和継続はもはや不適切> 振り返れば、2008年のグローバル金融危機は、100年に1度か2度かのイベントだった。世界的に経済活動が大きく失速し、米国では大手金融機関の経営も軒並み揺らいだ。この危機対応で、政策金利は実態上のゼロまで引き下げられ、それでも経済活動を押し上げるには不十分で、非伝統型金融緩和の手段が投入された。 実態上のゼロ金利を維持する方針を伝えることで緩和効果を狙う「フォワードガイダンス」、市中から証券を購入し資金を供給することで緩和効果を狙う量的緩和(QE)が実施された。恐慌の瀬戸際にあった状態では、こうした非常手段が必要だった。米連邦準備制度のバランスシートは、3度のQEによって4.5兆ドルまで膨れ上がった。これだけの対応をとっていたから、我々は世界的な大恐慌をみないで済んだという仮説を排除しきれない。 そして、時は流れた。米国経済は傷が癒えていない部分を抱える一方で、相応に成長しており、雇用も拡大している。株価も上昇した。明日、どこかの大企業が経営破綻する、あるいは大きなデフォルトがあるといった心配をしている人はいないだろう。この状態で、恐慌を回避できるようなパワーのある強烈な金融緩和を継続することは確かに妥当ではない。 どんな政策にも弊害はある。米国の非伝統型金融緩和政策の場合、今はさほど心配する必要はなくとも、金融不均衡、バブルを膨らませてしまうかもしれない。また、量的緩和の規模が大きくなるほど、何かの弊害を許容できなくなって撤退を迫られたときの負担も大きくなる。財政規律を損ねる問題も無視できない。 また、結果としてみると、量的緩和は資産価格を押し上げることで、経済を上向かせたが、もう株価収益率は割安とはいえない水準にまで達している。住宅価格は上昇しているが、勢いは鈍り始めている。すなわち、量的緩和は効果が弱まる可能性があるということだ。危機モードが和らいだ一方で、弊害が懸念され、効果も小さくなるかもしれないということであれば、こうした政策は解除して、フェデラルファンド(FF)金利で金融政策をとれるように正常化を図ろうという思いに行き着くのは、当局者として至極当然といえるだろう。 その第一段階は証券購入の停止で、2013年5月22日に、バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)前議長の発言から始まった。それから1年半が経過して、証券購入は停止された。次はまず利上げをし、金利引き下げによる緩和余地を確保しようとするだろう。同時に、おそらくFRBが保有する証券の償還分の再投資が縮小され始めるか、停止もあり得るだろう。 <3月利上げの可能性が低い理由> さて、そこで市場が関心を持つ利上げ開始時期であるが、筆者は前述した通り2015年6月16―17日のFOMCで決まる可能性が高いと考えている。 まず、9月のFOMC後に出された経済見通し(SEP)では、FOMCメンバーの大多数が2015年の利上げを予想している。例外は、おそらくミネアポリス地区連銀のコチャラコタ総裁とシカゴ地区連銀のエバンズ総裁の2人だが、このうちコチャラコタ総裁は来年のFOMC投票権を持たない。すなわち、「2015年中の利上げ見送り」は、FOMCの決定とはならない。9月以降、米経済は失速してはいないので、他の大多数のメンバーについては、2015年利上げの見方を維持するだろう。 最初の利上げは、それなりに市場にストレスをかける可能性がある。その際には、周到な説明が必要だろう。記者会見のない会合で、利上げ開始というのは難しい。となると、「Xデー」は3月18日、6月17日、9月17日、12月16日のいずれかに絞られる。 繰り返すが、米国経済は資産価格の上昇で支えられたのが現実である。バランスシートの拡大が止まっても、経済拡大が続くかどうか、その見極めができる前の利上げは避けるのではないか。このため、3月18日の利上げ開始をメインシナリオにする必要はないと思う(ただ、今年の年末商戦が好調であれば、利上げの窓が開き、FOMCがその機を逃さないかもしれない)。 また、現時点で、金融政策の正常化に向けて利上げが必要であることは、SEPが示すFOMCメンバーの総意である。実務的準備も進められている。その利上げを1年も放置することなどできるだろうか。また、イエレンFRB議長は、完全雇用失業率を別次元でとらえたいかもしれないが、一般に使用される失業率(U3失業率)でみると、ゴールの失業率レベルに到達してしまう。実際に物価上昇が起きれば、FRBの信認が深刻に問われかねない。6月17日は、事実上の「タイムリミット」といえないだろうか。 <大きな利上げサイクルは期待薄> ただ仮に筆者の見立て通りになったとしても、利上げへの道は平坦ではないだろう。10月29日のFOMCで、期待インフレ率の低下が認知された。今後、この動きをめぐって、米金融当局高官の発言が活発化しよう。 インフレ楽観論者は、市場のインフレ連動債と通常債の利回りから計算される期待インフレ率の低下は、ガソリン価格のせいとし、深刻視しないだろう。一方で、悲観論者(強いハト)は米国の物価形成に起きている異変に着目し、問題にするだろう。 いずれにせよ、消費者物価の押し上げ役は、帰属家賃など一部に限られていた。正常化の利上げは、経済的要請ではないのだ。結論を言えば、大きな利上げサイクルにはならないということである。 *鈴木敏之氏は、三菱東京UFJ銀行市場企画部グローバルマーケットリサーチのシニアマーケットエコノミスト。1979年、三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。バブル崩壊前夜より市場・経済分析に従事。英米駐在通算13年を経て、2012年より現職。 http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPKBN0IK0CZ20141031
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