03. 2014年10月31日 07:18:51
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2014年10月31日 ザイ編集部 年金を70歳から受け取ることにして 30〜50代の人も年額42%増を確保せよ! 受け取る公的年金の年間の額は、払い込んだ年金の保険料によって決まるが、実はそれ以外にも受け取る年金額を大きく左右する要素がある。それが、何歳から年金を受け取るのかという点だ。今回は、60歳が目前の人から30代のサラリーマンまで、誰でもできる受け取る年金額を増やす秘密ワザを紹介しよう。まずはねんきん定期便をチェックして しっかりと年金を受け取ることが大事! 裏ワザを紹介する前に、重要なのがもらえる年金をしっかりもらうこと。「消えた年金」が問題になったのは記憶に新しいが、田崎博さん(仮名)も被害者の1人。 転職した際に「タサキ」が「タザキ」と登録され、転職後の納付記録は別人のものとなり、年金額が本来の額より50万円も少なくなっていた。いまだに未解明な年金記録も膨大にあるので他人ごとではない。 手続きのし忘れも多い。例えば専業主婦で夫が脱サラや定年退職してサラリーマンではなくなったのに、国民年金加入の手続きをしていない人などだ。専業主婦が自動的に年金加入者となるのは夫がサラリーマンの場合だけなので、手続きを忘れると年金ゼロの可能性も。 厚生年金受給者は高校生以下の子がいると年間約22万円、年金をまだもらっていない妻がいると年間約39万円も上乗せ支給される。家族が別居状態だと給付されないことがあるので、可能なら一緒に住み、もらえる年金を確実にもらおう。 まずは誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」を必ず確認しよう。 60歳を過ぎてからでも年金額を増やせる 受取開始を5年延ばして年間42%増に! 建設の技術者で64歳の石崎隆行さん(仮名)は、東京五輪の特需のため70歳までの約束で定年延長することが決まった。石崎さんは70歳まで収入も確保できるので、年金の受給開始を本来の65歳ではなく70歳からに繰下げることにした。 石崎さんが調べてみると年金は1年受給を遅らせるごとに8.4%ずつ年間の受給額が増える。最長のケースでは70歳から、つまり5年間の繰下げが可能なのだ。
石崎さんの場合は最高のケースである5年間の繰下げなので42%も年間に受け取る年金額が増えることになる。石崎さんは65歳からの支給だと月額23万円だったのだが、それが70歳からに変更したことで32万6000円となった。しかも、増えた年金額は毎年毎年、一生継続する。 ただし、本来もらうべき5年分を放棄するので、生涯で受け取る年金額の損得勘定は必要だ。一般的に繰下げ受給にする年齢に11年を足した年齢が損益分岐点と言われている。70歳へ繰下げをした場合、81歳以上まで生きればトクになる。 石崎さんは「65歳の男性の平均余命は84歳だから、2分の1以上の確率でトクする」と計算。70歳までの収入は確保したし、健康に自信もあるので繰下げ受給を決意した。
このように年金の繰下げ受給は、もっともシンプルな年金増額法。しかも、60歳を過ぎてからでも年金額を増やすことができる万人向けのワザだ。 もちろんこのワザは、30〜40代のサラリーマンでも使える。年金の受給開始を繰り下げた分の期間の生活費を想定して、それを乗り切れるような貯蓄を今から始めておけばいい。そして、70歳からは増額された年金を受け取って余生を過ごす…。こうしたちょっとした年金の仕組みをうまく利用して、支払った保険料の効率アップを図りたいところだ。 なお、年金の受給開始は前倒しにすることも可能。もちろん、この場合は年間に受け取る年金額は減ってしまうが、背に腹は変えられない状況になった時には、こうした手もあることを覚えておいて損はない(今発売中のダイヤモンド・ザイ12月号には、年金額を増やせるワザが満載)。 このような受け取る年金を増やすワザはまだまだたくさんあるので、ぜひチェックしてみてほしい。 http://diamond.jp/articles/-/61404?page=2 オヤジの幸福論 【第33回】 2014年10月31日 後藤順一郎 [アライアンス・バーンスタイン株式会社 クライアント本部戦略ソリューション室長、兼DC推進室長] 公的年金は本当に大丈夫なのか? 前回までは確定拠出年金をうまく活用することで、老後の生活資金を効率的に準備できるという話をしてきました。そんな話をしている中で公的年金の財政検証結果が公表され、メディアでも頻繁に取り上げられています。今回からはこの公的年金の財政検証について、オヤジ世代の皆さんにどのような影響があるのかを見ていくことにします。 今回の財政検証結果はそんなに悪くない 新聞を欠かさず読んでいる皆さんの中には、今年の6月3日に公的年金の財政検証結果が公表され、新聞各紙で大きく取り上げられたのを覚えていらっしゃる人も多いでしょう。そこでの論調はどれも比較的ネガティブなものが多かったように思います。 実は、私は今回の財政検証を総じてポジティブに受け止めています。なぜなら、(1)標準シナリオの所得代替率(現役男性の手取り収入に対する年金額の割合)が前回(平成21年)の財政検証よりも改善しているからです。前回の基本ケースでの所得代替率は50.1%であるのに対し、今回の標準シナリオ(ケースE)では51.6%(ここでは前回と同じ基準の数値を使用)と1.5%も改善しています。また、(2)今回はより多くのシナリオを分析したことで、想定される結果の範囲を計量的に把握することができるようになった点や、(3)今後論点となり得るいくつかの制度改革を実行した場合の影響度分析も実施しており、今後の公的年金改革の議論のベースになるという点も評価できると思います。 財政検証により「不確実性」が軽減 (1)の所得代替率の改善はもちろん好ましいのですが、それよりも、私は(2)(3)が重要だと思います。(2)(3)については、シミュレーション結果が多すぎて何が大事なのかがわからないとの批判もありますが、私は多くのケースについて分析していること自体がとても大事だと考えます。年金制度のような将来についての議論をする際に、人々を最も不安にさせる要因は、将来を見通せないということではないでしょうか。先が見えないと不安だけが募り、人間はなかなか行動できなくなるものです。実際、こうした現象はリーマンショックに端を発した金融危機時に起こりました。通常、金融資産のリターンは何らかの確率分布(一般的には正規分布)に従うと考えられており、標準偏差はもちろん、100年に一度(1%)の悪い事態が実現した際のダメージについても、この確率分布を使えば算出できます。これらはいわゆる「リスク」と呼ばれるものになります。一方、金融危機後には、金融危機により生じたリターンがあまりに正規分布から乖離していたために、金融資産のリターンの真の確率分布につき誰も自信が持てず、不安を抱えた状況に陥りました。つまり、「リスク」が計算できなくなってしまったのです。結果として投資家は行動を起こすことができず、回復までにかなり時間がかかったのは皆さんもご記憶の通りだと思います。このような状況をアメリカの経済学者のフランク・ナイトは「不確実性」があるとし、計量できる「リスク」とは異なるものとして定義しました。 翻って日本の公的年金を見てみると、従来は限られたシミュレーションしか実施していなかったために「リスク」が計算できず、「不確実性」が高い状態にあったのだと思います。このような状態では国民の不安が高まるのも無理はありません。一方、今回の財政検証では単に経済シナリオ数を増やしただけでなく、制度改革をした場合についてもシミュレーションしており、将来起こる可能性が高い事象とそれが起こった場合の結果を、広い範囲で捉えることができるようになりました。厳密な意味では確率分布を求めることはできませんが、現状で最悪のシナリオが実現したときの年金額、制度改革する効果などを計量的に示すことで、国民の漠然とした不安を少しは和らげることができたのではないかと個人的には思っています。 最悪の場合はどうなるの? では、具体的にどのくらいの範囲が示されたのでしょうか。先ほどの標準シナリオ(ケースE)の場合、厚生年金や共済年金が統合される前提で計算すると50.6%となります。次に、所得代替率が非常に悪くなるケース(ダウンサイド)を見てみます。最も悪い経済シナリオ(ケースH)の場合、出生率や死亡率が標準的であっても、資産が枯渇し、所得代替率は35〜37%まで下がります。ケースHよりも少し経済状況の良いケースGであっても、出生率が想定より悪化した途端に資産が枯渇し、やはり所得代替率は35%まで下がります。つまり、下限は35%くらいということです。では逆のケース(アップサイド)はどうでしょうか? 現状の制度では、比較的経済の状況がよく(ケースC)、出生率が高くなると54.4%まで所得代替率は上がります。 つまり標準が50.6%、アップサイドが54.4%に対し、ダウンサイドは35%ですから、いわゆるテールリスクが大きい状態と言えます。どうやら標準ケースのみで考えず、ダウンサイドも踏まえて老後の生活設計を行ったほうがよさそうだ、ということですね。 このように現状制度ではアップサイドは期待できませんが、制度改正すれば期待できるかもしれません。例えば基礎年金の加入期間を60歳から65歳に引き上げたうえで年金支給を2年遅らせた場合、経済状況が良いケースCが実現すれば、所得代替率が劇的に改善し68.7%になります。 このように今回の財政検証では、条件が良いとき/悪いとき、そして制度改定した場合の所得代替率の範囲が明確になったことが一番大きな効果だと私は思います。状況が良くても悪くても先が見えれば計画を立てることができるからです。次回は、多くのシミュレーションの中から、オヤジ世代にとって大事なものに焦点を当ててお話しします。 今回の川柳 正確に 理解し活用 公的年金 ※本記事中の発言は筆者の個人的な見解であり、筆者が所属するアライアンス・バーンスタイン株式会社の見解ではありません。 http://diamond.jp/articles/-/61444
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