04. 2014年10月29日 16:19:53
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FOMC声明の注目点:低過ぎるインフレ率に焦点 10月28日(ブルームバーグ):米連邦公開市場委員会(FOMC)はワシントン時間29日午後2時(日本時間30日午前3時)に政策決定に関する声明を発表する。イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見はなく、当局者による新たな経済予測の公表もない。注目点は次の通り。 FOMCは今回、量的緩和(QE)第3弾としての債券購入の終了を決める見通しだ。一方、当局者らはインフレ率と期待インフレの鈍化傾向を憂慮している点を強調したいと望むかもしれない。 2004−08年にFRBでエコノミストを務めたジョンズ・ホプキンス大学のジョナサン・ライト教授(経済学)は、当局者らは連邦準備制度の目標を「持続的に下回っているインフレ率の推移に懸念を表明」するだろうと予想している。 FOMCは9月の声明で、「インフレ率が2%を下回り続ける可能性は今年の早い段階以降に幾分か低下したと判断する」と説明。ブルームバーグ・ニュースが調査したエコノミスト62人中、今回もこの文言が維持されると回答したのは33人だった。 ただ、連邦準備制度がインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)総合価格指数は、8月が前年同月比1.5%上昇と、2年4カ月連続で目標を下回っている。 コーナーストーン・マクロのパートナー、ロベルト・ペルリ氏は顧客向けビデオコメントで、FOMCが低インフレについて何らかの脅威を認める可能性があるとしつつも、インフレ率押し下げの最大の要因はエネルギー価格の下落であるため、懸念はその分緩和されるかもしれないと語った。 QEは終了へ ブルームバーグの調査では、今週のFOMCでのQE終了決定を予想したエコノミストは64人中62人。クレディ・スイス・セキュリティーズUSAの米経済調査担当ディレクター、ダナ・サポータ氏は「仮に終了しないとなれば、それはかなりの声明となる」としている。 一方、QE終了後も「相当な期間」にわたって事実上のゼロ金利政策を続けるのが適切とする文言については、変更なしとの回答が80%に上った。スタンダードチャータードのエコノミスト、トーマス・コスターグ氏は、このところの市場のボラティリティ(変動性)の高まりと世界的な成長鈍化の兆しを背景に、当局者らは慎重に対応することになるとみる。 9月の米失業率は5.9%と、08年以来の低水準に改善したが、「労働力の活用がなお極端に低い状態にある」とした文言は声明に残されるとブルームバーグ調査で回答したエコノミストは64%だった。 世界的な需要低迷 今月28、29両日のFOMCで、欧州から中国に至る世界的な需要低迷が米国の成長に脅威となるかが話し合われるのは確実だ。8日に公表された9月のFOMC議事録では、この問題について懸念が示され、米株式市場は金融危機以来、週間ベースで最もボラティリティが高まった。 スタンダードチャータードのコスターグ氏は、世界の成長に言及する場合、当局者らは「細心の注意を払うだろう」と分析。「声明で取り上げたいと当局者が考えるかは不明」で、11月19日に公表の「議事録に盛り込まれるのではないか」と話した。 原題:Fed Decision Day Guide: FOMC Seen Focusing on Too-LowInflation(抜粋) 記事に関する記者への問い合わせ先:ワシントン Christopher Condon ccondon4@bloomberg.net;アトランタ Steve Matthews smatthews@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先:Chris Wellisz cwellisz@bloomberg.netMark Rohner, Gail DeGeorge 更新日時: 2014/10/29 12:11 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NE6NXY6S972C01.html
コラム:米中間選挙が問う「林冠経済」の持続力=斉藤洋二氏 2014年 10月 29日 12:08 JST 斉藤洋二 ネクスト経済研究所代表 [東京 29日] - 11月4日に迫った米中間選挙は、もともと争点がないことが特徴であり、市場への影響も軽微と思われてきた。しかし、ドル全面高への懸念や世界経済先行き不安が台頭し相場が荒れていることから、選挙結果のインパクトは当初想定より大きくなる可能性がある。 今回の選挙は、2008年11月に「チェンジ」を掲げて大統領選を制したオバマ大統領の信任が問われるものでもある。大統領2期目の中間選挙は厳しい戦いとなるのが常と言われ、さらにかつて7割近くあったオバマ大統領の支持率が目下4割程度へ下落しているだけに民主党の苦戦は免れない。 民主党が上院(定数100)において改選36議席のうち17議席を確保して多数派を維持できるかが最大の注目点となっている。一方、全議席が改選される下院(定数435)では共和党が勝利する可能性が高いと伝えられている。つまり、現状の予想では、民主党が上下院双方で多数派となり議会のねじれ現象を解消するシナリオは描き難い。 中間選挙が終われば16年の大統領選に突入していくため、在任期間が残り2年となった現政権のレームダック化が加速することは必至である。中間選挙を前にした今、オバマ政権6年間の経済・通貨政策を評価するのによい機会だろう。 <オバマノミクスには一定の成果> オバマ大統領は格差のない社会の構築を目指し、医療保険改革や金融規制強化など弱者救済と強者の規制を進めてきた。しかし、「結果の平等」を求め福祉政策を進める一方で、富裕層に対する増税を図ったことから、「機会の平等」を主張する共和党の反発が強まった。さらに株価上昇に伴う格差拡大が加わったことから、オバマ政権が目指す平等社会の実現は遠のくばかりだ。 このオバマ政権の6年は、米国が08年9月に起きた金融危機から再生する時期にあたり、積極的な財政政策そして緩和的な金融政策が推し進められた。その過程で米財務省は金融機関やゼネラル・モーターズ(GM)など個別企業に公的資金を注入。さらに大統領が支持するバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)前議長、そしてその路線を引き継いだイエレン議長は、緊急対策として3度にわたる量的緩和策(QE)を実施し大量のドル紙幣を増発した。 このような政策に対し節度ある金融政策遂行を求める共和党や保守層が眉をひそめたのは無理からぬところである。ただ、間もなく出口戦略の一環としてQE縮小(テーパリング)が終了する見通しであり、金融政策の正常化へ一歩進むことになる。 大統領就任直後の09年3月に株価(ダウ工業株30種平均)が6500ドル台になり景気の底割れが懸念される場面もあったが、その後1万7300ドルを超え史上最高値を更新するなど回復を示した。 労働市場も実態は不本意なパートタイムや長期失業者の割合が高水準で推移するなど労働市場のスラック(弛み)が観測されるものの、失業率は一時の10%台から直近(9月雇用統計)では5.9%に下がり、新たな雇用は月20万人のペースで創出されている。実質経済成長率(14年4―6月)を見れば、日本(マイナス7.1%)やユーロ圏(ゼロ%)とは対照的に、4%を超え利上げ期待が高まるに至っている。 このようにオバマ政権による経済政策は一定の成果が出たと考えてよい。しかし、成長力を失いつつある米国経済や、拡大する格差社会など、構造的問題への対処が不十分である点は否めない。 <「林冠経済」の富は一部エリートへ> 米国が経済の成長力を失い長期的な停滞に入っていることは、ローレンス・サマーズ・ハーバード大学教授らが昨年末に提起した通りと言えよう。リーマンショック以降、金融緩和政策により実質金利がマイナスになる状態が継続されたにもかかわらず、労働力人口と生産性の伸びが鈍化し、それにつれて投資需要が減少した。 産業革命から250年を経過した現在、米国に限らず先進国の経済は成熟化し、投資機会が減少して経済の停滞を回避し難くなっている。もちろんITの躍進は目を見張るものがあるが、19世紀から20世紀にかけての技術革新には遠く及ばない。さらに先進国は人口増加率の低下もあり、期待収益率が低いことから投資が増大しない。その結果、インフレを高進させ実質金利を下げる必要性が高まっている。 これまで低成長に喘ぎつつも金融依存による資産バブルに覆い隠されてきたが、そのかさ上げも限界に達する日は近い。今後、成長はこれまで以上に金融政策頼みとなり、その結果としてバブルは循環的に発生する可能性が高まる。 一方、格差は是正されるどころか一段と拡大しており、米国社会はチャールズ・ファーガソン氏が著書「強欲の帝国」(原題=PREDATOR NATION)で指摘するように、まさしく「林冠経済(Canopy economy)」の様相を呈している。 「林冠」とは森の天辺部分の植物相そして動物相であり、太陽光を受けて枝葉が繁茂する「光」の部分である。他方、その枝葉は太陽光が下の層に届くのを防ぎ、「光」と「影」の差は一段と大きくなる。このような生態系の特徴を有した米国は「林冠経済」と呼ぶにふさわしい。 「林冠経済」では最上層にいる一握りの超エリートが富を独占し、中間層そして貧困層とのつながりを失う。つまり、林冠が栄えれば栄えるほど生態系が崩れていくように、富の集中により中間層が崩壊し消費の減退がもたらされる。イエレン議長も10月17日の講演で、上位5%の富裕層の保有資産は全体の6割超に達するなどと指摘し、格差拡大に対して強い懸念を表明している。 ちなみに、林冠に属することができるのはコンピューター・サイエンスを習得するか、経営学修士(MBA)を取得する者を除けば、もともとの富裕層もしくはそれに準じる階層に属した子弟・子女にほぼ限定されている。それがアメリカンドリームを可能にしてきた平等社会の変質、つまり階級化を意味していると言えよう。 <「民主党敗北=ドル安・株安」は本当か> 最後に相場の行方について、言い添えておきたい。このところ、ドルは主要通貨に対して全面高の様相となっており、米連邦公開市場委員会(FOMC)でもこの状況を懸念する声が聞かれ始めている。 では、オバマ政権の通貨政策はいかに運営されてきたのだろうか。クリントン政権下の1995年にドルの信認を守り米国債への投資を促す狙いから、ルービン財務長官(当時)が「強いドルは米国の国益」と強調した。オバマ政権は時にウォール街が望むドル高、時に産業界が望むドル安へとバイアスをかけつつも、基本的にルービン氏が示したスタンスを維持してきたと見られる。 近頃、「意図的な通貨安の誘導があってはならない」とのルー米財務長官の発言が報じられたが、米国が現在のドル高を回避するために日欧と通貨切り下げ競争を挑むつもりがあるとは思えない。 ドル高の経済への影響を考えると、米国の製造業の多くはこれまでオフショアリングを進め、海外へ生産ラインをシフトしてきた。このところの中国での労働コスト上昇により国内回帰(リショアリング)の動きは見られるものの、大半の企業にとってドル高は国外での売り上げを圧縮し、また株価の下押し圧力として働く。 ただ一方で、米国の国内総生産(GDP)の7割は個人消費であり、ドル高に伴う輸入品の値下がりにより家計の購買力が高まるメリットを享受できる。このようにドル高とドル安のどちらが米国へのメリットが大きいか判然としないのが実情であり、積極的にドル安誘導を図る必然性は乏しい。 米国の通貨政策もさることながら、世界経済への不安に疑心暗鬼が高まっている現在の金融市場において、中間選挙で民主党が上院で過半数を割り込むことがあれば、オバマ大統領への不信任としてドルが下落する場面が想定される。ただ、それは一時的と考えてよいのではないか。 ちなみに、株価(S&P500騰落率)について過去の実績を見ると、中間選挙後6カ月は、大半の場合、強含みで推移していた。果たして今回もその経験則が通じるのだろうか。世界の株価が不安定化している今、中間選挙後の米株価動向はとりわけ注目される。 *斉藤洋二氏は、ネクスト経済研究所代表。1974年、一橋大学経済学部卒業後、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。為替業務に従事。88年、日本生命保険に入社し、為替・債券・株式など国内・国際投資を担当、フランス現地法人社長に。対外的には、公益財団法人国際金融情報センターで経済調査・ODA業務に従事し、財務省関税・外国為替等審議会委員を歴任。2011年10月より現職。近著に「日本経済の非合理な予測 学者の予想はなぜ外れるのか」(ATパブリケーション刊)。 *本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here) http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0II02Z20141029 |