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本当にダメにならないとやはり改革は無理なのか?アベノミクスの“空手形”に日本の将来を案じる
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141028-00061184-diamond-bus_all
ダイヤモンド・オンライン 10月28日(火)8時0分配信
● 株価の不安定化に相次ぐ閣僚の辞任劇 アベノミクスに「賞味期限切れ」の声も
最近、投資家や経済専門家と話していると、彼らのアベノミクスに対する関心が低下していることがよくわかる。話やメールの中に、ほとんどアベノミクスという言葉さえ出てこない。たまにアベノミクスという言葉が出てきても、「アベノミクスは賞味期限切れ」などという内容がせいぜいだ。
関心が低下している理由は、アベノミクスに対する期待が持てなくなっていることだ。具体的に言えば、金融・財政政策で一時的に株価が上昇し、景気回復への期待が醸成されたものの、肝心要の成長戦略に目ぼしい政策が出てこない。それでは、「今までと何も変わらない」ということが露呈し始めているのだ。
今年に入って、久々に給与が上がり始めたが、足もとにおけるインフレ率の上昇で家計部門の実質所得が低下し、「生活が苦しくなった」という家計が増えている。また、“金余り”によって一時的に株価が上昇したものの、景気先行き懸念などの影響で株価の上昇トレンドは長続きしていない。
世界経済の下振れリスクの顕在化によって、最近、株価が不安定な展開になっており、ここへ来て人々の心理状況にも、やや不安材料が影を落とし始めている。
さらに相次ぐ閣僚の辞任もあり、アベノミクスの神通力は低下している。安倍政権にとって最も重要なポイントは、規制緩和や大胆な改革などの政策を通して、わが国の将来に希望が持てるような構図を示すことだ。
それができないと、アベノミクスは今までの政策と何も変わらないことになる。ただ、現在の情勢を考えると、アベノミクスに大きな期待を持つのは難しいかもしれない。
我々が期待を抱いたアベノミクスのセールスポイントは、主に2つあった。1つは、日銀に黒田総裁を誕生させ、思い切った金融緩和策を実施したことだ。
● やはり金融・財政政策だけでは不安 2つのセールスポイントと期待外れ
昨年春に就任した黒田総裁は、4月4日の金融政決定会合で、異次元の金融緩和策をぶち上げた。具体的には、大量のお札を印刷し、それを市中に供給することで景気を刺激すると同時に、円安傾向を演出する政策だ。
その金融政策よって株価が大きく上昇したことや、財政支出の拡大で景気が拡大したこともあり、少なくとも一時的に景気は先行きに明るさを取り戻した時期があった。また、輸入物価の上昇によって、長く苦しめられてきたデフレから脱却する期待ができたことも確かだ。
しかし、今年4月の消費税率の引き上げに伴う駆け込み需要の反動と、その後の天候不順によって、消費が思ったほど伸びなかった。それに加えて、円安にもかかわらず輸出がほとんど拡大しないことも、景気の先行きに不安感を醸成し始めている。
こうした状況を見ると、金融・財政政策だけでわが国経済の復活を目指すことは難しいことがよくわかる。
もう1つのセールスポイントは、思い切った規制緩和や大胆な改革に基づく成長戦略だ。わが国の社会には、昔つくられた制度や仕組みで現在の状況に適合しないものが残っている。そうした仕組みを思い切って変えることで、社会全体の効率を上げることが必要になる。
もちろん、それを遂行するためには痛みを伴うケースもある。既得権益層から猛反対が出ることは必定だ。だが、その反対を押し切ってでも改革をしなければならない。
足もとで、その成長戦略が遅々として進んでいない。アベノミクスが「期待」を裏切っているのである。
最近、気になることがある。それは安倍首相の言動を見ていると、どうも“空手形”が多いと感じることだ。
● 実現可能性は検証されているか? 最近気になる安倍首相の“空手形”
たとえば、安倍首相はさまざまな機会において、「岩盤に“アベノミクス”というドリルで穴を開けて、改革を実施していく」と発言している。そうした発言に真剣な期待を寄せた人は、少なくなかっただろう。
ところが実際に、アベノミクスで実現した主な政策は、異次元の金融緩和策と古典的な財政出動が中心だ。円安によって大手企業の業績回復の道筋はついたものの、改革によってわが国経済の本格的な再生を図るところまでは行っていない。
最近、中小企業の経営者と話したとき、彼は「安倍首相はしっかりした実現可能性を検証する前に、耳触りのよい政策について口にしてしまうのではないか」と指摘していた。
多くの人々が安倍首相の“空手形”を意識するようになると、政権と国民との信頼関係が希薄化することが懸念される。信頼関係が低下するということは、実際の支持率が下がることを意味する。それは、政権にとって命取りになる可能性もある。
支持率が低下すると、自民党内部で安倍政権に不満を持っている人たちの存在が顕在化するだろう。そうなると、特定の既得権益層をバックにした族議員の声が大きくなり、改革が一段と困難になる。
改革への取り組みが進まないと、アベノミクスは従来と同じ金融・財政政策による景気刺激しかできなくなってしまう。それではわが国経済の再生の道は霧消し、国内外の投資家の期待が後退、株式市場は不安定な状況になる可能性が高い。
安倍政権は民主党政権の後を受けて、当初高い支持率を背景に発足した。高い支持率があるからこそ、思い切った政策を打つことができる。多くの人々がそうした期待を抱いたはずだ。
思い切った政策の中には、一部の既得権益層や、多くの国民が痛みを受けるような政策もあるだろう。しかし、今痛みを伴う政策であっても、それを断行しておかないと、将来我々の子どもや孫がさらに大きな痛みを受けることになるかもしれない。
● 憎まれ役になっても改革を続けよ 次世代につなげたい政策への期待
全てとは言わないが、多くの国民はそれを理解しているはずだ。1990年代初頭、大規模なバブルが崩壊して以降低迷が続いてきたわが国経済は、そろそろ本格的に再生への道を見つけないと、世界の中で弱小国になってしまう懸念もある。
そうした事態を防ぐために、大胆な改革を行うことが必要だ。前述した中小企業経営者は、「高い支持がある安倍政権に、憎まれ役になってでも改革を続けてほしい」と言っていた。かなりの人が、彼の意見に同調するだろう。
最近の政治情勢を見ていると、近い将来、安倍政権のように高い支持持った強い政権ができる保証はないだろう。だからこそ有言実行の姿勢で、痛みを伴う改革にも積極的に手を付けてほしい。
10年以上も前、尊敬する経済専門家の1人が、「日本という国は、本当にダメにならならなければ改革をすることはできない」と、ため息をついていたことを鮮明に覚えている。そうならないためにも、アベノミクスで最も重要な成長戦略を積極的に推進してほしいものだ。
時に国民に痛みが及ぶこともあるだろう。しかし改革をしないと、我々の子孫が大きな痛みを受けることをわり易く説明して理解を求めればよい。その努力を惜しまないでほしい。
真壁昭夫
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