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絶好調の日立、なぜ年功序列廃止?首相も異例の後押しで、企業に守られる時代の終焉か
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141028-00010001-bjournal-bus_all
Business Journal 10月28日(火)6時0分配信
今回は、最近の人事・雇用関連の経済ニュースの中から、筆者オリジナルの視点で解釈したものを紹介します。
●日立の年功序列見直しが衝撃的な理由
日立製作所の管理職年功序列廃止が諸方面に大きな衝撃を与えています。筆者も複数のメディアからコメントを求められました。すでにソニーやパナソニックが年功序列の廃止を打ち出している中、後発でしかも管理職限定の日立のほうがインパクトがあるのはなぜでしょうか?
答えは、家電中心の経営が成果を上げられず、瀬戸際まで追い込まれた感のあったソニーやパナソニックと違い、日立は2014年3月期決算で過去最高益を更新し、15年3月期でも2期連続での最高益更新を掲げるほど絶好調だからです。しかも重電部門など、ベテラン重視のイメージの強い花形部門も含めた措置です。多くの人にとって「ソニーが年功序列を捨てるのは仕方ないけれども、まさかあの日立まで……」という点が驚きだったのでしょう。
ただ、むしろ日立だからこそ、さっさと年功序列を捨てなければならなかったというのが筆者の意見です。年功序列・終身雇用制度では、日本人以外の人材はほぼ確保できませんから、日立のようにグローバルでのインフラ受注を目指す企業は、現状のままでは営業対象の国々で深刻な人材不足に見舞われるわけです。
もちろん、高度成長期の日本企業のように、日本人の企業戦士を送り込むという手もなくはないですが、お膝元の日本においても、優秀な理系人材は非メーカーの外資系や新興企業に流れ始めており、人材不足の状況にあります。
そのようなわけで、ベテランを重視しようがしまいが、事業を世界で展開する以上は年功序列は乗り越えねばならない壁であり、日立は当たり前のことをやったまでだといえるでしょう。
●総理が「年功序列の見直し」に言及する意味
9月29日に開かれた政労使会議の席上で安倍晋三首相が「年功序列の見直し」に言及したことが話題となっています。これについては、「総理がわざわざ言及するようなことなの?」「民間企業の話なのだから、労使に任せておけばいい」などと、懐疑的な意見を持つ人もいるようです。
実際、現状においても、労使がしっかりルールを決めれば、賃下げや降格を行うことも可能ですし、キヤノンのように職務給に移行することもできます。ただ、政府が介入しなくても企業が自発的に制度の見直しを実施するかといえば、実際には労使だけでは話が前に進まないのが現実です。
そこで政府が音頭を取った上で、政労使の代表を交えた席上で「脱・年功序列でいきましょう」と宣言をすることは非常に大きな意味があるわけです。
同様のものに、オランダのワッセナー合意(1982年)が挙げられます。これも、政労使の代表が「柔軟な賃下げとワークシェアリングを推進すること」に合意し、その後の同一労働・同一賃金に道筋をつけることとなった会議です。政府が音頭を取って民間労使の協議を舵取りすることで一国全体の雇用の流れをつくった画期的なイベントといわれており、今回の政労使会議は明らかにこれを模したものといえます。
具体的には、賃下げや金銭解雇といったルールを明文化し、「同一労働・同一賃金」の原則を法制化することで、脱・年功序列の傾向を後押しすることになるでしょう。いよいよ企業に身分を保障されていた時代から、個人のキャリアで勝負する時代へと移行するわけです。
●東大文系の評価急落の意味するもの
「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社/10月18日号)の記事『ビジネスマンが本音で評価 「使える」「使えない」大学』は、なかなか示唆に富んでいます。ポイントとしては、
・東京大学文系の志望者が減少傾向にあり、中でも法学部の凋落傾向が顕著である
・私立進学校の中では、米国などの有名大学へ進学する生徒が増えている
・ビジネスパーソンのアンケートで、東大が唯一第1位を獲得した質問は「使えない人材が増えた大学」
もちろん、ここから見えてくるのは「東大がダメになった」「これからは京都大学や慶應義塾大学だ」という話ではありません。ダメになりつつあるのは、良い大学を出て大企業に就職すれば幸せになれるという昭和的価値観であり、その王道であるはずの東大文系ほど、組織内で見事な空振り三振気味に見えてしまっているということです。
これからの大学選びでは、上昇志向のある人は最初から海外大学に進学するか、秋田・国際教養大学や立命館アジア太平洋大学のように徹底した国際的な実務教育志向の大学に進むのが主流となるでしょう。東大の秋入学や一橋大学の留学義務化プランは、この新たな流れになんとかして食い込もうという土壇場の踏ん張りといえます。「大学としての気概はないのか」などと小言は言わずに、温かい目で見てあげましょう。
もちろん、これはこれから大学進学する人にだけ関係する話ではありません。ソニーやパナソニック、日立の年功序列廃止を見ても明らかなように、恐らく10年後には多くの日本企業で年功序列は廃止され、少なくとも組織内において人材は流動化しているはずです。つまり、そのようにして昭和的価値観を脱した新型エリートたちと、大学入学時が知的水準のピークだったような昭和型人材が同じ土俵で戦わねばならない時代がそこまで来ているのです。今からその点を意識しつつ、新型エリートとの戦いに備えることもまた、キャリアデザインの重要なポイントでしょう。
城繁幸/人事コンサルタント
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