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『失職女子。私がリストラされてから、生活保護を受給するまで』(大和彩:著、小山健:イラスト/WAVE出版)
借金か風俗か自死か、役所に頼るか…100社不採用の『失職女子。』が語る“生きるために選んだ生活保護という道”(前編)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141027-00005070-davinci-ent
ダ・ヴィンチニュース 10月27日(月)11時40分配信
「輝く女性の活躍」や「ウーマノミクス」が声高らかに叫ばれる一方で、女性の貧困が広まっている。2014年に厚生労働省が発表した日本の相対的貧困率の推移によると、2012年の日本の相対的貧困率は16.1パーセントと、国民の6人に1人が貧困層にあたる。そのうち、単身女性の3人に1人が貧困と言われており、その理由として家事、育児や介護等のために就業中断が生じやすいこと、給与所得が男性に対して低いこと、非正規雇用の割合が高いことなどの就労環境によるものがある。
前述の日本の相対的貧困率は、OECD加盟国中、世界第2位。かつて、1億総中流社会といわれた日本が、世界最低レベルの格差社会となっていることについて、OECDは「危険な状況」であると警鐘を鳴らしている。
そんな中、ごく平凡な生活を送っていたひとりの女性が、リストラされてから、生活保護を受給するまでの過程やそのノウハウを赤裸々に綴った『失職女子。』(WAVE出版)が書籍化された。ネット上ではすでに「他人事ではない」というコメントが多数寄せられており、議論を巻き起こしている。「借金か風俗か自死か、行政に頼るか」…著者である大和彩さんは、100社不採用を経験しながら、最終的に行政に頼り、生活保護を受ける道を選んだ。とかく偏見の目に晒されやすい生活保護や現代社会における雇用システムの問題点について語ってもらった。
■吐き出せる場所はネットしかなかった
――同著が生まれたきっかけについて教えてください。
大和:約80社を落ち続けたあとに、ようやく手にした契約の仕事を3ヵ月で切られ、失業保険も出ないと知った時に、自分の思いを吐き出すためにブログを立ち上げました。別にブログもあったのですが、そこではとても恥ずかしくて書けなくて、わざわざ裏アカをつくりました。それを読んでくださっていた人が「Messyで連載しませんか」と声をかけてくれ、生活費欲しさに書き出した連載をまとめたのが同著です。
――新卒入社の企業で、契約社員から正社員になれた直後に、扱っていた商材でアレルギー反応が出て、休職なさっています。当時を振り返り、「正社員の仕事を辞め、実家に帰ったのは最大の失敗」と書かれてありますが、仲の悪かった両親でも、優しく迎え入れてくれるかもしれないという期待があったのでしょうか。
大和:認めたくないけれど、ひょっとするとあったかもしれませんね。それまで10年ほど親と離れて暮らしていたので、彼らがどういう人なのか、忘れていたのかもしれません。親からは「お前は実家に帰ってくるものなのだ」と言われるし、会社の人たちもみんな「実家へ帰るんでしょ」と言ってくるから、それが最善なのかもしれないと、その時は愚かだったので、帰ってしまいました。今は一切、会っていません。
――そのあと再び就職活動を始めていますが、一番のモチベーションは「家から出たい」という気持ちが強かった?
大和:暴力を振るわれたり、持病の薬を捨てられたり、病院へ行かせないように阻止されたりすることが続いていたので、何としてでもお金を貯めて、ここを出ないと命が危ないと思いました。それと仕事がしたいという気持ちも大きかった。せっかく正社員になれたのに、すごく不本意なかたちで仕事を辞めなくてはならなかったので、挽回したい気持ちがありました。
■交通費、セクハラ面接、オーバー35…転職を拒むもの
――著書のなかで、ハローワークと転職エージェントの違いについて言及されています。どんなところが違っていたのでしょう。
大和:転職エージェントの場合、「弊社にてご相談させてください。大和さんにぴったりの案件がありますから」と連絡がきて、案件内容も伝えられないままオフィスに出向くと、自分が一切関わったことのないような業務内容の場合が多々ありました。「人事やIRなんて関わったことすらないのに、絶対通るわけがないですよね」と言っても、「万が一のことがありますから、エントリしましょうよ」と押し通される。エージェントにはきっと営業ノルマのようなものがあって、私たち求職者は数合わせの手駒に過ぎない。そんな担当者に当たってしまった場合は、交通費くらい返してほしいと思います。また、案件ごとで担当者も違えば、その担当者によって好みとする履歴書や経歴書の書き方も違う。10人のエージェントに会ったら、10通りに書き直さなければならない手間も嫌でした。その点、ハローワークの場合は、役所なので営業ノルマがないのがすごく大きいです。その場で案件を見ながら「これは向かない。これは向く」と、同じ担当者がずっと私の転職活動に付き合ってくれます。また、履歴書や経歴書のフォーマットが統一されているので、書き直す必要もありません。不採用通知も、転職エージェントの場合はコピペのメールでくるけど、ハローワークの場合は必ず書面でいただけるので、メールでペロッとくるよりは丁寧さを感じます。
――失業中って、面接へ行く交通費の捻出もきついですよね。
大和:交通費はもちろんですが、ストレス太りでスーツが入らなくなって、面接に着ていくものがなくなるのもきつい。履歴書写真も高いですし、履歴書をプリントアウトするお金もバカになりません。それでやっとの思いで面接会場に到着すると、「あれ、写真と顔違うじゃない」とおっさんの面接官に言われる始末。断固お断りですよ。
――「35歳限界説」についても触れられています。2010年は、応募した12社中、複数社からオファーがあったのに対して、2011年〜2012年の無職シーズンは100社近くから不採用に。目立った違いはただ一点だけ、オーバー35歳だったことだと書かれてあります。
大和:雇用者の意識改革なしに、「年齢制限を募集要項に記載するのは違法」と、表面だけ見繕っても、求職者にとっては、「年齢で切るなら、最初から書いておいてよ」と思う無駄足や無駄金が増えるだけです。あと、面接へ行くと結婚について聞かれることも多々あります。私は子どもを産むつもりも、結婚するつもりもないから素直にそう伝えると、面接官が笑うんです。自分たちは子どももいない、結婚もしていない女性がほしいのに、どう答えていいかわからないです。
――正社員から正社員への転職だとキャリアアップにつながりますが、一度、病気やライフイベントで退職し、正社員から非正規雇用への転職を経験すると、再び正社員になるのは難しい風潮はぬぐえませんね。
大和:表向きは「みんな前向きにチャレンジして、明るく働こうよ」という建前があり、いざその建前に踊らされて真に受けて仕事を探してみたら、求人もなければ、全然雇ってもらえない。そこに絶望があるのかもしれません。あと、最初に就いた職や業種はたまたまなのに、経験を重視されるので、どんなに合わない業種や職種でも、そこから抜け出せない負のスパイラルがあります。
――派遣社員や契約社員の契約だと、1ヵ月や3ヵ月ごとの更新は珍しくありませんが、それだと失業保険も出ないんですよね。大和さんの場合も、最後の契約のお仕事は3ヵ月契約で失業保険が出ず、大きなショックを受けました。
大和:もう、何の希望も抱けないですし、真っ暗な思いしかないですね。ぜんぜん良いことなんかないと思ってしまう。「うちも長期で働いてくれる人を探しているから、3ヵ月で辞めるなんて言わないでよね」と言われて、「はい、大丈夫です。私、定年まで働きたいです!」というやりとりをしておきながら、しれっと3ヵ月で切られてしまう…。急に切るのは、「死ね」と言われるのと同じです。家で横になっているだけでも一日日割りの家賃が発生し、お金がかかるんですから。
>>後編は、貧困に陥った女性が性風俗へと向かいやすい理由、誠実な区の福祉課やハローワークの対応、生活保護申請がおりたあとの気持ちの変化について語ってもらいます。
取材・文=日暮葵
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借金か風俗か自死か、役所に頼るか…100社不採用の『失職女子。』が語る“生きるために選んだ生活保護という道”(後編)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141027-00005071-davinci-ent
ダ・ヴィンチニュース 10月27日(月)11時40分配信
順風満帆に働いていた女性が、病気になったのを機に休職。その後、転職先を探すも、100社不採用となり、最終的に選んだ道は「生活保護」だった――とかく、「甘えてる」「努力が足りない」などと言われがちな生活保護受給者だが、生活保護を受給するまでの過程やそのノウハウが書かれた『失職女子。私がリストラされてから、生活保護を受給するまで』(小山健:イラスト/WAVE出版)の著者、大和彩さんは、生活保護申請が通ったことで「私なんかでも、生きていていいんだ……」という実感がじわじわ心に沁みわたっていったという。転職活動に関わる苦難について語ってもらった前編に続き、後編では、貧困に陥った女性が性風俗に行きやすい理由、誠実な区の福祉課やハローワークの対応などについて聞いた。
■性風俗の情報に比べて、生活保護に関する情報が少なすぎる
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――大和さんは家賃が払えなくなり、総合支援資金貸付や住宅支援給付、生活保護を受給しながら、ずっとハローワークで仕事を探し続けていらっしゃいますが、一方で生活保護受給者や貧困に苦しむ人たちに対して「努力が足りないから」という偏見がいまだ根強い風潮をどう思われますか。
大和:その点、私は無職になる時、友達がひとりもおらず、親とも縁を切っていたので、不用意な言葉を聞かずに済んだのは良かったと思います。というのも、最初に病気で正社員の仕事を辞めなくてはいけなかった時に、「ダメもとでここ受けてみなよ」とか、「高望みしすぎじゃないの」とか、「上を見てもキリがないんだから、もっと悪い条件の人もいるんだから」とか、そういった言葉をSNS上で投げかけられて、とてもグサッときた経験があったので、それ以降、プロ以外には誰にも相談しないと決めていたので。
――著書の中で触れている“プロ”のお二人、役所手続きのさまざまな相談にのってくれる区の福祉課の諸葛孔明子さん(仮名)も、ハローワークで一緒に仕事を探してくれるハローワー子さん(仮名)の大和さんへの対応は、とても親身でメディアで取り上げられる役所仕事のイメージとはかけ離れています。
大和:諸葛孔明子さんは、ありとあらゆる制度やシステムを熟知していて、今まで出会った社会人の中で一番頭がいいと思います。ふんわりしていて優しくて、ベテランならではの安心感があります。一方、ハローワー子さんは、テキパキとしていて、率直なアドバイスをくれます。真実を言われてつらい時もあるんですが、言ってもらったほうが無駄な交通費を使わなくても済むので、とても助かっています。私がいた業種だと自分より年上の女性が働いていることがほとんどなかったので、それを知ることができたのもよかったです。
――女性の失業と性風俗、売春などの相関関係についても触れられていますね。
大和:売春をしないというのは、強く思わないと自分自身、本当に門を叩いてしまいそうでした。そっちへ行かないための材料を自分の中に準備したとも言えます。以前、読んだ西原理恵子さんの著書で「自分の娘には売春させない」と書いてあったのが大きかったです。あれだけいろいろな経験をされている西原さんが言うのだから、そうなのだろうと。
日本って、生活保護に対するネガティブなイメージがあるから、生活保護を受けるくらいなら、女性であれば性風俗で働けよという無言のプレッシャーがある気がします。事実、セックスワークがセイフティネットみたいな意見も最近よく聞くけれど、そもそもそれはおかしいと思うんです。それをセイフティネットと思わなくていいんじゃないかな。性風俗業の人たちがチラシやティッシュ、ネットを介して発信する働く情報はたくさん入ってくるけど、生活保護に関する情報は何もない。だから自分に適性はないのに、なんとなくそちらに流れてしまう人があとを絶たないのではないでしょうか。
――生活保護を受ける際に大和さんが一番気にしていたのが、親御さんへ通知がいく“扶養照会”でした。原則義務付けられているようでしたが、大和さんの場合、扶養照会は免れることができたんですよね。
大和:私は親から虐待を受けていて、とにかく親へ連絡が行くことだけは避けたかったので、「扶養照会を免れます」という一文を探して、あらゆる本を読みました。そして、ある本を開いた時、はっきりとは書かれていないのですが、「本当は抜け道があるよ」と暗に示しているような一文を見つけ、そこに賭けてみようと思ったんです。それでダメなら支援団体に連絡して、一緒に説得してもらうつもりでしたが、結果的に私は扶養照会を免れることができ、現在、生活保護を受けることができています。生活保護申請がおりた時は、本当にほっとしました。私は生きて、最低限度の生活を営んでいいんだと思いました。
■正直に生きていこう、生きていきたいと思う
――大和さんにとって、理想の働き方とは?
大和:私、最初の会社を病気で辞めて以来、ずっと病気だって隠しながら働いていたんです。誰にも言わず、嘘をつきながら、うまいことやっていこうというスタンスだったので、そういう病気であることを受け入れつつ働こうという発想はありませんでした。だから、これからは、もっと正直に生きていこう、生きていきたいと思います。
――最後に、どんな人に読んでもらいたいと思いますか。
生活保護を受けながらでも、働くことは可能ですし、自立するための就職活動もできます。今のお給料では少ないから、足りない分だけを生活保護で充当する、という考え方です。ちょっと前まで普通に働き、税金もきちんと納めていた人が、ある日突然、職を失い、生活保護にしようかどうしようかと悩んだ時に、同著を参考にしてもらえたらとてもうれしいです。あとは、学校では生活保護のことを習わないし、ネットにもこういった情報はほとんどないので、小学生にも読んでもらいたいですね。
リストラに遭い、失業保険が出ないと知った時は、「もう死ぬしかない」とまで思いつめた大和さんにとって、行政に救いを求めて、役所の職員に実際に手を差し伸べてもらえたことは、とても大きなできごとだったという。「今の願いは、自分の生活を立て直して、支えてくれた人たち、そして社会にも少しでもお返しできるような人生を歩むことです」――生活保護に命を救われたからこそ、借金や風俗や自死に走る前に、より多くの人たちに生活保護申請について知ってもらいたい。『失職女子。』は、そんな彼女が発する実践的アドバイスと、生々しい人間ドラマが詰まった良書である。
取材・文=日暮葵
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