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金融引き締めの強化を懸念して中国株は軟調だ(Imaginechina/アフロ)
中国経済の減速に潜む莫大なリスク 金融引き締め後の軟着陸は可能か
http://toyokeizai.net/articles/-/51272
2014年10月25日 ケネス・ロゴフ:ハーバード大学教授 東洋経済
中国政府は成長を持続可能な水準まで減速しようと努めている。内需主導でサービス業中心型の経済へ移行する過程で、より緩やかな成長へ向かうことは不可避であり、望ましい。しかしそれに伴う課題は計り知れないほど大きく、ソフトランディング(インフレを伴わない経済成長抑制)は簡単ではない。
中国では、多くの地域で大気汚染や水不足が深刻化しているのに、消費を拡大し生活の質を向上させねばならない。債務をGDPの200%を超える水準まで急増させた国が、大投資プロジェクトの破綻を広範囲に引き起こすことなく、成長を徐々に抑制していくのは容易ではない。十分な資力を持つ中国でさえ、リーマン・ブラザーズ級の倒産が1つ起こればパニックに陥る可能性は否定できない。
■不景気の増幅は金融引き締めがきっかけ
過去の多くの不景気は、金融引き締めがきっかけで、増幅されてきた。1990年代にグリーンスパン元FRB(米連邦準備制度理事会)議長が「マエストロ」と呼ばれたのは、インフレの抑制と力強い成長の持続を同時に成し遂げたからだ。
公式発表の市場成長予測で判断するなら、リスクは小さいとの結論に行き着く。中国の公式な目標成長率は7.5%だ。7%を予測する人は「弱気筋」と見なされ、6.5%予測は異常とされてしまう。
では現状はどうなのか。大部分の証拠が、中国経済が大幅に減速したことを示している。電力需要の年間伸び率は、2014年の1月から8月までで4%を下回るなど、大幅に低下した。2008年の金融危機を除くと、記録したことのない低さだ。
電力需要の減少によって、国内の石炭産業が厳しい不況に陥り、多くの炭鉱が事実上破産した。住宅価格の低下も、景気の低迷を示す典型的な指標だ。ただし、主な住宅価格指標は、提示価格を評価するだけで、実際の販売価格を評価の対象としていないため、低迷の度合いを正確に評価するのは難しい。
中国の景気減速は、オーストラリア、インドネシア、ブラジルなど、1次産品の輸出国にも影響を与えている。ドイツやスイスなど、資本集約財に対する中国の旺盛な需要を満たすことに軸足を置く国々についても、同じことがいえる。
残念ながら、中国のデータは、先進国の信頼性には程遠い。電力使用量は通常、経済成長を測る最も信頼性の高い指標の1つだが、経済がサービス業へと重心を移し、セメントや鉄鋼生産など、エネルギー集約型産業の多くが減速する状況では、電力需要低迷は経済再均衡化の兆しにすぎない可能性も十分にありうる。
住宅価格の下落も、短期間に倍増以上に高騰した後の現象だ。中国が穏当で健全な修正局面にあるのか、明白な破綻に直面しているのか、判断は難しい。
中国の指導部が、13年度の第3回全体会議で承認された市場志向の改革の大半を実現しようと躍起になっているのは明らかだ。習近平主席は積極的に汚職防止キャンペーンを推進しているが、これは経済自由化を見据えて政治的抵抗力をつけるためだと考えられる。
■改革努力自体が引き金になりかねない
その一方で、中国の汚職は従来、経済をマヒさせる要因というよりも経済に課された一種の負担金であり、物事のルールを民主的に改革しようとすれば、その改革努力自体が引き金となって生産高を急減させかねない、という見方も成り立つ。
中国政府は汚職を撲滅し、公害を減らし、市場を自由化して長期的な成長を確保しつつ、ソフトランディングできるだろうか。危険度は高い。もし中国の成長が行き詰まれば、米国の標準的な不景気が引き起こす悪影響よりも、はるかに甚大な悪影響を世界中に及ぼしかねない。
中国の成長率は極めて高い水準にとどまっており、下落する余地はかなり大きい。西洋諸国では、輸出と株価が潜在的に非常に大きな脆弱性を抱えている。米国と中国が引き締め政策を取っているが、FRBの策のほうが理解しやすい。しかしそれは必ずしも、米国の動向のほうが中国より重要だというわけではない。
(週刊東洋経済2014年10月25日号)
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