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死を招く危ない食品、食の不祥事…“リスク分析システム”は、なぜ機能不全に陥った?
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141025-00010002-bjournal-bus_all
Business Journal 10月25日(土)6時0分配信
昨年社会問題化した関西有名ホテルのレストラン食品偽装、今年初めのアクリフーズ(現マルハニチロ)農薬混入事件、そして7月の中国食肉加工工場で発覚した使用期限切れ鶏肉問題――。この1年間、消費者の食への不安をかき立てる、重大な不祥事件が続いた。
ここで不思議なのは、食品のリスク分析についてはすでに世界共通の考え方が導入されているにもかかわらず、上記のような事件がなぜ立て続けに起こっているのかという点である。安全性確保については、2000年代に世界中を巻き込んだ脳障害で人をも死に至らせるBSE(牛海綿状脳症)問題などの経験に基づいて、世界共通の「リスク分析」【編註1】という考え方が導入され、「農場から食卓まで一貫した対策を行う」という国際的な合意がすでに形成されている。リスク分析とは、どんな食品にも人に危害を加えるリスクがあり、そのリスクを科学的に評価し適切な管理をすれば、健康への悪影響を未然に防ぐことができる、とする考え方であり、次の3つの要素から成る。
・リスク評価:リスクを科学的に評価
・リスク管理:リスクを適切に管理
・リスクコミュニケーション:消費者やメディア、研究者、行政、産業界など関係者の間で、情報や意見を交換すること
なお、国際的な合意は具体的には、FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)の合同による国際食品規格委員会(コーデックス)などで取り決められている。
●リスク分析システムに抜け穴
日本はこの国際的な合意を基にして、食品安全委員会がリスク評価、厚生労働省と農林水産省、消費者庁などがリスク管理を分担し、そして必要に応じて消費者やメディア、研究者、産業界など関係者がリスクコミュニケーションをしてきたはずである。つまり、食の不祥事件が起こるたびにこのリスク分析システムが作動し、行政は関連法令や制度を修正・整備し、罰則などを強化させ、産業界も企業単独で、あるいは業界ぐるみでそれぞれの安全確保システムをチェックし、自主規制を強化するようになっている。
ところが、過去の苦い経験を忘れかけた頃、類似パターンの食の不祥事件が、それも手を替え品を替えて一気に再現される。消費者は既視感にとらわれ、またかとうんざりしながら、そのたびになすすべもなく再び食の不安のるつぼへと投げ込まれてしまう。
なぜ国際的な合意によるリスク分析システムが、機能不全に陥っているのか。少なくとも、リスク分析システムが社会全体をカバーし切れず、システムのどこかに抜け穴があることを示しているのではないか。
●おおむね安心して食べるには…
私たちは何としてでも、その抜け穴を探り当てる必要がある。食の不安を抱えながら、危ない食品を食べ続けるわけにはいかないからだ。ここで、改めて「食べること」の意味を再確認しておきたい。
こんな話がある。月面着陸を目指すアポロ計画(1961年)の際、米国航空宇宙局(NASA)は宇宙飛行士の食事のためにチューブ式の完全栄養食品を開発し、それによって宇宙飛行士は無事帰還。チューブ式は「米国栄養学の勝利」と称賛されたが、肝心の宇宙飛行士たちはチューブ式の食事ではストレスになると訴え、結局、その研究は頓挫したそうだ【編注2】。
一方、80年代半ば、日本の文部省の特定研究【編注3】で、食品の機能性が世界で初めて明らかにされた。食品には、生存に必要なビタミンやミネラルなどの栄養補給機能だけでなく、おいしさを味わう感覚機能があるという。チューブ式には感覚機能の代わりに、ストレス蓄積のマイナス機能がある。噛んで飲み込んでおいしさを味わってこそ、ストレスも解消され、明日への活力も湧く。
危ない食品では栄養もおいしさも損なわれがちで、病どころか、時に死を招く。つまり、これは毒物に近い。本連載では順次「危ない食品の正体と多様性」や「戦後日本と危ない食品の深い関係」「なぜ食品は工業製品並みに品質管理ができないのか」などのテーマに迫る。その最終的な目標は、おおむね安心して食べられる日本人の食の状況を築く、そのための道筋を探ることにある。
【編注1】中島隆・内閣府食品安全委員会事務局次長「食肉の生食による食中毒のリスクについて」(11年8月23日、「食の安全フォーラムinとやま」ネット掲載)などを参考。
【編注2】中村丁次・神奈川県立保健福祉大学学長「時代とともに変化する日本の『栄養』」(『ヘルシスト』ヤクルト本社、11年5月10日)
【編注3】文部省の特定研究(藤巻正夫代表「食品機能の系統的解析と展開」1984〜86年)
石堂徹生/農業・食品ジャーナリスト
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