http://www.asyura2.com/14/hasan91/msg/292.html
Tweet |
GPIFは誰のものか
「もっと早く年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用見直しを発表していたら、これほど株価は下がらなかった」。そんな嘆きが市場から漏れる。世界経済の下振れ不安を背景に、日経平均株価は急落し、1万5000円の大台を割り込んだ。
約130兆円の公的年金を運用するGPIFは国債に偏っていた運用比率を見直し、国内株の比率を20%台半ばまで大幅に引き上げる方向で調整している。市場では10月上旬にも発表するとの期待が高まっていた。だが塩崎恭久厚生労働相は、まずGPIFの組織改革を優先させる姿勢を示し、運用見直しの発表も後ずれするとの見方が広がった。
野村証券の試算では、国内株の比率が20%になると、4月からの累計で約6兆円の株買いが発生する。20%台半ばであれば、株価下支え効果も大きい。だが国内株の引き上げ幅は適切なのか。
大手生命保険会社が作った1枚の内部資料がある。民間の生命保険や年金の保険料を運用する民間生保の運用構成の一覧だ。「ザ・セイホ」と呼ばれたバブル期には株式や不動産を買いあさったが、大手4生保の国内株の比率は3月末時点で3〜8%台。長期デフレに直面した日本で大幅に比率を高める意欲は感じられない。
欧米には株式の比率が50%を超える年金基金も少なからずある。ただ日本のような深刻なデフレを経験したわけではない。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは米国最大の公的年金基金であるカリフォルニア州職員年金基金(カルパース)が金融危機で損失を被らないため、一部の高リスク投資からの撤退を検討している、と報道。その後、カルパースはヘッジファンド投資を停止すると発表した。GPIFと正反対の潮流があるわけだ。
GPIFは株価対策のための組織ではない。国民の大切な年金を運用する以上、専門家による運用体制を整え、責任を持って許容できる運用比率を決めるのが筋ではないか。GPIFは政権や市場のためにあるわけではない。
(編集委員 小栗太)
[日経新聞10月20日朝刊P.19]
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。