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10月23日、消費再増税の先送り論が、海外投資家の間でじわりと広がっている。都内で9月撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)
焦点:海外勢に広がる消費再増税先送り論、根強い腰折れ懸念
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0IC0FK20141023
2014年 10月 23日 15:10 JS
[東京 23日 ロイター] - 消費再増税の先送り論が、海外投資家の間でじわりと広がっている。4月の消費増税以降、減速する日本経済を目の当たりにし、再増税実施なら景気が腰折れしかねないとの懸念が強まっているためだ。「延期したら日本売り」の声は、数カ月前に比べてかなり勢いを失っている。
ただ、1年ないし1年半の延期後に再延期すれば、日本政府の統治能力に決定的な疑問符が付きかねず、その点を懸念する声もささやかれている。
<急速に変わる市場の風向き>
消費増税が実施された今年4月以降、しばらくの間は国内企業経営者の中で、7─9月期には景気は回復基調になるとの見通しが多く、海外投資家の中でも、増税延期は「日本売り」の声が目立っていた。
消費増税の先送りは、日本の財政再建を遅らせ、金利が急上昇し、「日本政府に財政再建への強い意思がないということが世界中に知れわたる。ヘッジファンドは、その時を待って円建て資産をそろって売る日本売りを考えている」(外資系証券の関係者)との構図だ。
だが、9月以降、風向きが急速に変わり、マーケットでのムードは一変しつつある。10月中旬にかけ70社ほどの海外投資家を訪問したゴールドマン・サックス証券・エクイティデリバティブトレーディング部長の宇根尚秀氏は、消費増税に対する海外勢の見方が変化していたと指摘する。2週間前までは消費増税に対する賛否は五分五分だったが、足元では先送り論が優勢になりつつあるという。
海外投資家の間に広がる消費再増税の先送り論。その背景には、日本の景気が夏場を過ぎても一向に上向かない厳しい経済実態がある。
9月百貨店売上高や9月コンビニ既存店売上高は、消費増税があった4月以降、6カ月連続でマイナスとなっている。天候要因や休日の変動などはあるものの、消費増税で落ち込んだ個人消費は依然として戻りが鈍い。賃金は上昇し始めているが、物価上昇と消費増税分を上回るまでには至らず、実質所得がマイナスを続けているためだ。
景気は7月以降、回復すると強調してきた政府自身の情報発信も、「強気」な表現が後退してきた。月例経済報告は、直近の2カ月連続で下方修正。このような現象は、1997年4月や2014年の消費税引き上げ時の1年前にはなかったことだ。
10月の月例報告では、生産について「弱含んでいる」から「減少している」へと判断が引き下げられた。個人消費の低迷が生産を下押しているとみられており、生産の低迷が続けば、景気回復のけん引役となるはずの企業の設備投資にまで影響が及びかねない。
市場では「景気が腰折れてしまえば、財政再建どころではなくなる。増税強行は日本株の売り材料とされかねない」(外資系証券エコノミスト)と、率直に指摘する見方が広がっている。
<金利上昇懸念が後退>
BNPパリバ証券・日本株チーフストラテジストの丸山俊氏は、金利上昇リスクの後退が株式市場の再増税先送り論を支援していると指摘する。「増税を先送りしても金利が上昇しなければ、国内景気の腰折れ回避で株価にプラスというロジックが働く」。
足元の円債市場では、日銀による量的質的金融緩和(QQE)により新発国債の約7割が吸収され、需給は極めてタイト。「再増税先送りで金利が一瞬上昇しても、運用難の国内機関投資家が買いに出て、金利上昇は限定的」(国内銀行ストラテジスト)との見方が多い。
実際、円債市場では、消費再増税の先送り論が強まるなかでも、10年最長期国債利回りJP10YTN=JBTCは節目の0.5%以下で推移している。
海外当局者から消費増税の影響を懸念する声が出ていることも、先送り論の追い風だ。ルー米財務長官は4月以降の日本の成長鈍化に対し「期待外れになった」と表明。市場では「もはや消費増税イコール国際公約ではなくなっており、増税を先送りしても海外勢がすぐに国債売りを強めるとは思えない」(国内証券)との観測も浮上している。
<増税対応の刺激策、オプション限定の指摘>
マーケット内で増税賛成論が根強いのは、再増税を実施するなら、補正予算や追加金融緩和など増税による景気下押し圧力を緩和させるための政策がパッケージで打ち出されるとの期待があるためだ。
しかし、政策発動余地はそれほど大きくない。4月の消費増税に対応して、政府は5.5兆円の補正予算を組んだが、来年度にはプライマリー・バランス(基礎的財政収支)の赤字半減(2010年度対比)という財政再建目標が迫る。
財政再建のための増税実施の副作用を財政支出で軽減するという対応は、「お湯」と「水」を同時に流し込むような「矛盾」を秘めているように、国民からは見えるだろう。
「消費増税に対して効果が高い政策は『ばらまき』だが、(投資家などの)評判は悪い」とインベスコ・アセット・マネジメント・日本株式クライアント・ポートフォリオ部長の三輪敏之氏も指摘する。
日銀による追加緩和期待は市場で根強くささやかれているが、円安進行による国内経済へのデメリットを懸念する声が政界や産業界に増え始め、一段の円安を招きかねない追加緩和政策は、実施しづらいとの見方もある。
昨年4月の「異次元緩和」では、円安によって株高が進み、資産効果で内需が上向いた。だが、円安の副作用を安倍晋三首相自ら指摘し、一部の海外勢からは「アベノミクスの限界が表面化してきた」(別の外資系証券関係者)との指摘もある。
日銀の追加緩和が仮に実行されても、前回と同じような株高効果が出てくるのか、疑問視する声も少なくない。
<延期なら政策余地は縮まる>
来年4月の統一地方選を控え、消費増税に対する国民全体の関心が高まる中、各種の世論調査で消費増税に反対する意見が約7割に上っているのは、安倍政権にとって頭の痛い問題に違いない。
増税に踏み切れば、高い支持率という安倍政権の安定装置にひびが入るリスクが出てくる。「政策対応に頼って消費増税を断行しても、国民の反感を買えば、空いた穴を埋め切れるか疑問」(外資系証券)と市場では見られている。
三井住友アセットマネジメント・シニアストラテジストの濱崎優氏は「次回の増税は、好景気が持続し増税の悪影響を吸収できるバッファーが出来てからでも遅くはない。現実的な路線として、日銀が緩和スタンスを継続しながら増税時期の1年以上の先伸ばしが妥当」と述べる。
こうしたなか、本田悦朗内閣官房参与は22日、消費税の10%への再増税は、最低でも2017年4月まで延期すべきと言及。その場合に株価は上昇するとの見解を示したほか、消費再増税を先送りしても、世界的な信用を失うことはないと述べた。
<許されない再延期>
ただ、10%への消費再増税はアベノミクスの信認と密接につながっている。1000兆円を超える「借金」は、海外の長期投資家にとってもリスク要因。財政再建の看板に傷が付けば、昨年15兆円超の日本株を買い越した海外投資家の心理に、微妙な変化を与えるかもしれない。
プルデンシャル・インベストメント・マネジメント・ジャパンの取締役投資運用本部長の坂口憲治氏は「増税見送りは、債券市場よりも株式市場の方が影響があるのではないか。海外投資家からアベノミクスへの疑念が高まるリスクがある」と話している。
さらに、1度見送れば2度目の先送りは許されないという声が圧倒的に多い。「1度目は市場が許したとしても、2度目の先送りとなれば、日本政府の信用は地に落ちる」(外資系投信)。
しかし、1年後に景気が回復しているとは限らず、海外経済の動向次第では、今よりも景気が悪くなっている可能性すらある。増税を1度見送れば、政策の選択肢は確実に縮まる。
増税断行か見送りか、女性2閣僚の辞任で支持率が低下しているという外的環境の変化もあり、株式市場は安倍政権の決断をかたずを飲んで見守っている。
(杉山容俊 編集:伊賀大記、田巻一彦)
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