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http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NDUVLR6K50Y101.html
10月23日(ブルームバーグ):
国庫短期証券(TB)市場で起きたマイナス金利の影響は、2年物国債利回りをほぼゼロ%に低下させるという事態にまで波及した。日本銀行の黒田東彦総裁による巨額の国債購入を背景に、市場関係者からは、償還まで1年超の国債でもマイナス金利が生じるのは時間の問題との指摘が出ている。
長期金利の指標となる新発10年物国債利回り は先週、0.465%と1年半ぶりの水準に低下した。2013年度の長期金利を0.5%台まで低下すると予想し、的中させた東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは昨年9月以降、同金利が0.25%まで下がるとの予測を変えていない。
TBの利回りは日銀の継続的な巨額の国債買い入れに加え、欧州中央銀行(ECB)による前例のない金融緩和を受けた海外からの資金流入を背景に低下。先月5日に3カ月物、9日には6カ月物がそれぞれ、流通市場では少なくともブルームバーグ・データでさかのぼれる09年以降で初めて、マイナス圏に突入した。21日は3カ月物がマイナス0.10%と最低を更新。6カ月物も17日に付けた過去最低のマイナス0.05%と同水準で取引された。
スピロ・ソブリン・ストラテジーのマネジングディレクター、ニコラス・スピロ氏(ロンドン在勤)は、日銀が償還まで1年超の国債を買い入れるオペでもマイナス金利が発生するのは「時間の問題に過ぎない」、と電子メールで指摘。日本の金利を押し下げる材料が国内外から相次いでいると言い、市場取引量が枯渇する「流動性の死」がその最たるものだと述べた。
前例なき金融緩和
日銀のTB買い入れオペでは17日、金融機関からの応札が募集額に届かない「札割れ」が昨年3月の黒田総裁の就任後初めて生じた。2年国債利回りは同日、0.005%と過去最低を記録。スピロ・ソブリン・ストラテジーは、日銀は2年債までマイナス金利に陥っても前例なき金融緩和を貫くと読む。
東海東京証券の佐野氏は、2年債利回りの低下は日銀による「無理な政策」が招いた結果だと指摘。国債購入を続ければ、金利は「フリーフォール」するとみている。国債の期間の短い金利から順に並べた利回り曲線が手前から押しつぶされれば、日銀は「より長いものを買わなくてはならなくなる」と語った。
日銀は昨年4月、マネタリーベース を年間60兆−70兆円積み増す「量的・質的金融緩和」を導入。うち約50兆円は長期国債の買い入れで賄うが、残りの10兆−20兆円は償還まで1年以下の短国買い入れと貸出支援基金のオペなどで積み上げる必要がある。
ついに札割れ発生
マネタリーベースは9月末に前年比36%増の253兆円。日銀による前例のない金融緩和で昨年3月末の146兆円から、今年末には270兆円程度に増える予定だ。ブルームバーグの予想調査(中央値)によると、エコノミストらは来年末に347兆円、16年末には400兆円まで膨らむと見込んでいる。日銀による長期国債の保有残高は9月末に180兆円と1年間で43%、TBは17%増えて49兆円となった。
「巨額の短国買い入れオペによって、マネタリーベースの大半を占める日銀当座預金を積んでも、金融機関がそれを融資に回すわけでもない」。岡三アセットマネジメントの山田聡債券運用部長はこう指摘し、日銀が実効性に乏しい大量購入をやめれば、短期金利はプラス圏に「すぐに戻るだろう」と話した。
先月9日のTB買い入れオペでは、落札利回りが初のマイナスとなった。それ以降のオペもマイナス圏での落札が続いている。日銀は今月3日と14日に過去最大となる3兆5000億円の買い入れオペを実施。17日のオペでは募集額を3兆円に減らしたが、応札は2兆6220億円しか集まらなかった。
時間の問題
TB買い入れオペの札割れを受け、2年物の国債利回りは0.035%から一時急低下した。UBS証券の井川雄亮債券ストラテジストは「短国の需給逼迫(ひっぱく)でマイナス金利でも買えなくなった日銀が量的・質的緩和の内訳を変え、長期国債を増やすのではないかとの思惑が浮上した」と説明。来週31日の金融政策決定会合で決まるか否かは不透明だが「時間の問題とも言える」と語った。
落札・売買価格に利払いが加わる利付債とは異なり、TBは利払いがなく満期に額面価格で償還される割引債だ。平常時は利回りがプラスとなる額面未満で売買されるが、100円を超える水準で取引が成立すればマイナス金利となる。償還前にさらに高く転売できなければ、損失を被ることになる。日銀はマイナス金利のコストをかけてでも、オペを通じた資金供給による金融緩和を優先している格好だ。
財務省がきょう実施したTB3カ月物の入札では、平均落札利回りが初めてマイナスを記録し、投資家が政府に対して余分の手数料を支払ってでもTBを購入する異常の事態が起きた。最高落札利回りも0.0000%と、2005年12月14日に付けたこれまでの過去最低水準に並び、直接購入からの運用益を見込めない結果となった。
ドイツ証券の山下周チーフ金利ストラテジストは、この落札結果について、「日銀の買い入れの下限金利が存在しないのが一番の理由だ」と指摘した上で、「3カ月物の短国を落札し、結局は日銀の短国オペに投げることもでき、それでさやを抜くことが可能」と説明した。また「短いところの金利がここまで沈んでいる状況だと、2年−5年債ぐらいまでをサポートする材料になる」と話した。
マイナス金利で日本の先を行く欧州では22日、ドイツ やオランダ、フィンランド、スイスなど7カ国以上の2年物国債の利回りがマイナス圏で推移した。デフレ圧力に直面するECBが6月に利下げ に加え、主要中銀では初となるマイナスの中銀預金金利を導入し、先月には追加利下げとともに同預金金利のマイナス幅も広げたことが背景にある。
入札制限案も影響か
国際投信投資顧問の加藤章夫トレーディング部長は2年物国債の利回り低下をめぐっては、財務省が国債入札で一部の金融機関による買い占めを防ぐための検討を始めたことで「品薄感が強く意識された」面もあると指摘。15日に同省で開催された「国の債務管理の在り方に関する懇談会」では、1回当たりの応札規模に上限を設ける仕組みについて議論があった。
2年物と10年物の国債利回り格差 は先月1日に41.7ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と昨年4月以来の水準に縮小した後、拡大気味となっている。ブルームバーグのアナリスト予想調査(中央値)によると、2年物利回りは今年末に0.07%、来年末も0.10%にとどまる一方、10年物利回りは同0.57%、0.80%に上昇すると見込まれている。両者の利回り格差は50bp、70bpと拡大へ向かう見通しだ。
岡三アセットマネジメントの山田氏は、2年物国債利回りが「マイナス圏に下がるかは微妙だ」とみる。金融機関が最も安全な預け先である日銀から受け取れる当座預金の超過準備分に対する利息(付利)を大幅に下回る金利で、他の金融機関に余剰資金を貸し出す可能性は低いからだ。ECBが下限政策金利をマイナス圏に下げたユーロ圏とは状況が異なっていると言う。
もっとも、利回り曲線の起点となる無担保コール翌日物 金利がプラス圏を維持しているのに、ほかの短期市場金利が需給逼迫の影響とはいえ、マイナス圏に定着しているのも事実。国際投信投資顧問の加藤氏は、今月末まで相場環境が変わらなければ、2年物国債利回りが「マイナスに転じる可能性もゼロではないだろう」との見方を示した。
記事に関する記者への問い合わせ先:東京 野沢茂樹 snozawa1@bloomberg.net;東京 石川茉莉子 mishikawa9@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:Garfield Reynolds greynolds1@bloomberg.net崎浜秀磨, 山中英典, 青木勝
更新日時: 2014/10/23 15:47 JST
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