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注目の外部招聘経営者、なぜ“難しい”?改革を阻む複雑な事情 好業績企業ほど必要?
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141022-00010006-bjournal-bus_all
Business Journal 10月22日(水)6時0分配信
最近たまたま目に留まったので、有名コンサルティング会社が1980年代後半に出した企業戦略に関する書籍を読み返してみました。当時はまだ図表が手書きだったりしますが、書かれている企業が抱える課題について、その内容の本質は現在とあまり変わってないことが興味深かったです。
外部招聘された経営者が機能するかどうかについて、前回連載記事では業績悪化に伴う「危機状態」に陥っている企業の場合について整理しました。今回はそうではない安定的かつ健全な企業の場合について考えていきます。危機から脱却しようという企業と現在すでに儲かっている企業においては、様相が異なります。
業績好調な企業において、上場前から最大株式割合を継続して保有する権力者、例えばオーナーがなんらかの目的を持って外部から経営者を招聘する場合、オーナーと新しい経営者の間でミッションを共有し、どこまで新経営者が権限を委ねられているのかを明確に定めておく必要があります。理想的な実例として、2011年にLIXILグループ社長に就任した藤森義明氏(元米GE副社長)と最大の主要株主である潮田洋一郎会長の関係がメディアなどでよく取り上げられますが、共有するミッションも可能な限り具体的であったほうが良いです。例えば「いま海外の売上比率が30%だが、3年以内に50%にしたい」などです。逆にダメな例としては「会社の体質、社員の気質を変える」などあいまいな内容です。
●育ててきた自負があるがゆえの……
オーナー社長にとって最大のハードルは、本当に身を引くことにあります。口頭や書面でどんなに約束しても、人間同士ですから時間がたてば気持ちがどう変わってくるかはわかりません。特に創業したオーナー社長やその一族においては、変わる可能性が高いです。一度取り交わした約束でも、時と場合によっては覆すくらいの情熱やパワーがなければ、会社を創って育てていけないという側面もあるのかもしれません。
安定した企業において短期の業績だけを考えてしまえば、内部昇格でも外部招聘者でも、誰がトップに座ってもそれほど結果は変わりません。それゆえ、わざわざ外部招聘する経営者への期待の軸としては、将来への仕込みや、変革させて一段違う内容の業績を出すこととなりますが、結果が出るまでには必然的に時間がかかります。解決しなければいけない課題は内部要因だけではなく外部要因も関わりますし、社員を統率するのに時間がかかってしまうからです。
外部から経営者を招聘した場合、この時間をオーナーが粘り強く待てるかといえば、なかなか難しく、当然ながら社内からは反発が出てきます。反目する古参社員から新経営者に対するネガティブな評判が入ったりすると、自分の決断が正しかったのかと、やや気持ちが揺らいでしまったりもします。また、その理由が年齢的なものであろうと不可抗力的なものであろうと、オーナーにしてみれば自分や一族が成し得なかったことを他人が達成するのを目の当たりにすると、複雑な心境がもたげてくることもあるようです。
例えば、8月2日付「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社)記事は、サンリオ創業オーナー社長が次期社長に見据えていた長男の副社長が急逝し、ライセンス事業へのシフトによって危機を乗り越えた実績のある常務が社長になることが順当であるものの、やはりオーナーは親族に継がせたいと思い始めたという内側を紹介しています。真相は定かではありませんが、経営者として、人間として揺れ動く模様を象徴しているように思えます。
著者もかつて、求人内容のミッションに「リストラの完遂ができる人材」と記載された外部経営者募集の最終選考まで残ったことがありましたが、最後にオーナー社長が「この人間が来たら、本当にリストラをきっちりやってしまう。それはしのびない」と言って見送られ、妙に納得してしまった記憶があります。
招聘された経営者が、オーナーをも絶妙に御すような人間力を有していたり、抜群にオーナーとの相性が合う人物であれば何も問題は起こりませんが、その見極めには少々時間を要するものです。
●社員と同じ方向を向けるか
資本主義社会では、株式の過半数を持っているオーナーと経営者が対立してしまった場合には、仮に過去・今後の取り組みが正しかろうとも、経営者に勝ち目はありません。ただし、社員全員が経営者の味方になっている状態であれば、資本の論理に勝る流れが起こる可能性があります。なぜなら、オーナーとしても社員全員がいなくなってしまったら元も子もないからです。
しかし優良企業であるほど、落下傘的にやってきた外部招聘経営者が本質的な課題や将来のあるべき姿を示そうとも、受け取る社員の側は「言っていることはたぶん正しいのでしょうが、今のままでそんなに問題なのですか?」という冷めた反応をしがちになります。中期的な未来を見据えて危機感を持つ社員は、当然ながら会社が安泰な時間が長いほどまれな存在になっています。これは能力の優劣などとはまったく関係なく発生する状態です。
こうした雰囲気の中で社員をドライブするのは、最終的には本質的に正しい戦略方針、評価と報酬の制度設計、継続的な対話と覚悟があれば切り抜けられるものです。ただし相当に骨が折れますし、どこかで間違えると労働紛争めいたものが発生したり、反感を覚えてオーナーや前経営者などを焚きつけて退任を画策しようという人が出てきたりするリスクを抱えながら試行錯誤を繰り返さなければなりません。
このようにステークホルダーをまとめることが成否の大きな鍵となってくると考えられます。そしてもしそれに成功すれば、すでに業績の良い企業なので、外部要因の障壁が大きくなければ容易に業績をさらに上向かせることができます。
●最も外部招聘が必要な企業には現れない
オーナー色が強い企業は、外部招聘した経営者と一枚岩になれずに空中分解したとしても、ただちに経営が傾くことはありません。オーナーにはやはり純然たる愛情が根底にあるため、会社に決定的な打撃を与えるようなことはしないためです。例えば、雪国まいたけは13年に創業者である大平喜信氏が不正経理発覚の責任を取り社長を退任した後、14年の株主総会で実質的な大株主である創業家が突然、全取締役を入れ替えるという事態が発生しました。前代未聞の出来事により経営が混乱し、いまだに落ち着く気配が見えないものの、同社商品は相変わらず店頭に並んでいます。
厄介なのは、オーナー色が弱いために、サラリーマン組織を生き抜いて権力を握った人が長い間君臨している会社です。親会社でサラリーマン闘争を続けて、敗れて子会社に降ってきた人が社長をしている子会社のパターンも含まれます。会社やグループに思い入れはあったとしても、根本的な愛情は長い年月の末に忘れ去られ、内向き思考が常態化しているために、真摯に市場と戦う癖がなくなってしまっている人が社長をしている状況です。自分を継ぐリーダーがいないことを口では問題視するものの、心の底ではむしろ自分の安住の地が続くことに対して心地よいと思っています。外では普通に「若い人に鍛錬の場でもあるチャンスを与えていかなければならない」など語り、その瞬間は本気で思っていたりもしますが、行動は伴いません。足掛け30〜40年の出世闘争を勝ち抜いた末に手に入れたポストを、たやすく手放せるはずもありません。もちろん、それがあるべき姿かどうかということは考えもしません。
経営トップがそのような姿勢では、必然的に内部に課題が多くなっていきます。そうした企業こそ外部招聘経営者が活躍できる条件が揃っていますが、外部資本を入れなければならないほど業績が悪化するまで、そうした誘因は発生しません。融資をしている銀行が唯一その流れを生み出せるのかもしれませんが、なかなか難しいのが実情です。与信の格付けが相当低いわけでもない融資先企業の経営体制を変えるという、リスクを伴うアクションはとれないからです。
古くからある産業において、現時点では業績が良いものの経営面で多くの問題を抱えている企業は、結構な割合を占めているのではないでしょうか。こうした企業に外部招聘経営者が入ってくる機会が増えてくると、日本経済もさらに活性化するのだと思います。果たしてそうした動きが広まるのか、現在クローズアップされている外部招聘経営者の方々の活躍次第ともいえ、陰ながら応援しております。
中沢光昭/経営コンサルタント
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