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2050年、日本は先進国でなくなっている!?「経済成長不要論」の行き着く先
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40735
2014年10月13日(月) 高橋 洋一「ニュースの深層」 現代ビジネス
『母をたずねて三千里』というアニメをご存じだろう。130年前、イタリアからアルゼンチンに出稼ぎに出た母を訪れる物語だ。今ではアルゼンチンを先進国と思う人はいないだろうが、当時は出稼ぎを受け入れる立派な先進国だった。
かつて筆者がプリンストン大学で学んでいたとき、クルーグマン教授が面白い話をしてくれた。クルーグマン教授は、しばしば「研究対象としては、日本とアルゼンチンが興味深いね。日本もアルゼンチンも病理学的見地≠ゥら他に類を見ない面白い例なんだ」と言っていた。
日本がアルゼンチンとなぜ同じなのかという真意については、「(経済学者の)クズネッツが言ったが、世界には先進国・途上国・日本・アルゼンチンの4種類の国しかない。先進国と途上国も固定メンバーだ。例外として、日本は途上国から先進国に上がったが、アルゼンチンは逆に先進国から途上国に下がった。その意味で、両国ともに面白い」と。
■金融緩和の効果打ち消した消費増税の愚
人口が減少する中で、日本は成長より成熟を目指すべきだとする論者は多い。特に左翼系の知識人がよく言う。かつて日本が高度成長の時代、成長は揺るぎないものだったので、そのアンチテーゼとして「成長は要らない」という考え方が流行ったが、今でも言っているわけだ。
また、筆者が名目4%成長(実はこれでも控えめ)を言うと、すぐさま、日本はもう成長できないと批判される。かつて、筆者は「上げ潮派」と言われたが、先進国の最低クラスである名目4%を政権内で主張しても、ことごとくはね返されてしまった。先進国でビリラインの名目3%成長ですら、楽観的という烙印が押されている。
最近、4月からの消費増税で再び景気は悪くなったが、その増税前までは、金融緩和の効果によってインフレ率2%、実質2%成長で名目4%成長が手に届くところだった。まったくバカな増税をしたものだ。
本コラムで再三述べてきたように、金融政策の効果がフルパワーになって景気が過熱するまで2年程度は待ったほうがいい。維新の党では、消費増税凍結法案を提出するようであるが、経済状況から、消費増税の根拠になっている消費増税法の付則に書かれている経済条項を根拠として、凍結法案を出すのが筋である。
成長できないという主張の人たちは、ここ20年間の日本はさぞかし居心地がよかっただろう。しかし、金融緩和のアベノミクスが登場して今年4月までは成長したので不愉快だった。そして、消費税増税後はまた気分がいいようだ。
たしかに、4月までは好調だった。以下の図は、2012年10-12月期比で見た各期の実質GDPの増加額とその内訳だ。
今年1-3月期は消費増税による駆け込み需要、4-6月期はその反動減とそれ以上に大きい消費増税による需要減になっている。これから、消費増税がなかった場合の金融緩和効果と財政政策効果をおおよそ推計できる。
今年1-3月の民間消費と民間投資が2013年10-12月期並であったとしてみよう。その場合、2013年1-3月期から2014年1-3月期までの5四半期で実質GDPは15.4兆円増加している。そのうち、民間経済(民間消費、民間投資等、純輸出)はその65%を占め、残り35%は政府支出になっている。これは、金融政策は民間経済に効くわけなので、その効果が10兆円増となって、財政政策の効果が5兆円程度であると考えることができる。
それ以前の、最近20年間は本当に酷かった。なにしろ日本は、名目GDP、実質GDP、一人当たりGDPのどれをとっても、世界の中でほぼビリの伸び率だった。先進国でビリではなく、世界の中でほぼビリだったのだ。そのため、その成長実績のために、何を言っても成長できないと言われたものだ。
もし、ここ20年間の伸びのまま2050年まで行くとどうなるだろうか。今の日本の一人当たりGDPは4万ドル程度で、世界で20位程度だ。先進国とは、基本的には一人当たりGDPが1万ドル以上の国を言うので、日本は立派な先進国である。ところが、ここ20年間で日本の平均伸び率は0.8%で、世界でほぼビリ。そのまま2050年になると、日本の一人当たりGDPは5万ドル程度だ。
アメリカは3.6%の伸びなので、一人当たりGDPは今の5万ドルが19万ドルになる。ユーロでは3.8%の伸びなので、今の4万ドルが15万ドルになる。
世界の平均の伸び率は4.3%程度である。となると、今の1万ドルは2050年には5万ドルになる、
つまり、今のままであれば、日本は2050年には先進国とは言えないだろう。
■成長は「マネーの力」で実現できる
経済成長は、ボウリングのセンターピンと同じだ。センターピンを第一投で倒せばスペアも容易だし、ストライクの可能性もある。センターピンを第一投で倒さないと、ストライクはまず出ないし、スペアを取ることも格段に難しくなる。これと同様に、経済成長はすべてとは言わないが、多くの経済・社会問題の解決に有効である。
例えば、経済成長によって、経済的理由の自殺はかなり救えるし、強盗問題も少なくなる。ちなみに、筆者は学生時代にボウリングにはまり、パーフェクト・ゲームも経験したので、この例えを好んでいる。
また、所得再分配問題・格差問題でも、成長した上でパイを大きくしたほうがより対応が容易になる。成長なしの分配問題は、小さなパイを切り分けるように難しいものだ。もう一枚パイがあればいい。
そこで、どうしたら経済成長できるのかという経済学で最重要問題がでてくる。これが解決すると、経済学はなくなるとも言われている最難問で、すっきりとした解はない。ただし、部分的な答えらしきものはだいたいわかる。
人によっていろいろだと思うが、筆者はマネーの力、言い換えれば金融政策を挙げておきたい。今年4月の消費増税までは金融緩和が効いた。もちろん、そうした短期的なことから、長期の答えを出すのではないが、ヒントにはなる。
最近20年間、世界各国の一人当たりGDPの成長率とマネー伸び率を見よう。
両者は相関関係になっている。相関係数0.5という数字は決して強い相関とはいえないが、こうした関係は他にまずないから、経済成長を説明しうるものだ。もちろん、相関関係は因果関係を意味していないが、各国のデータを個別に調べると、マネー伸び率は1〜2年程度のラグで、経済成長に影響していることがわかる。
ということは、ある意味の因果律となっていると思う。ちなみに、マネーを刷って増やすことや減らすことは金融政策で簡単にできる。このように、人為的に操作できるものが原因となるのは自然な話である。
マネー以外にこうした相関関係のものを探すのはかなり難しい。
日本で人気のある「人口減少が経済成長を妨げている」という説は、世界を見る限りまったく説得力がない。下のグラフが示すように、人口減少でも成長している国は多いし、一人当たりGDPの成長率は人口増減率と相関はないのである。
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