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太陽光など再生エネルギーは全国的にも岐路に立たされている(写真はソフトバンクグループの高砂ソーラーパーク。撮影:Bloomberg)
再エネに冷や水浴びせる電力会社の契約中断 太陽光発電の買い取りを止めた九州電力
http://toyokeizai.net/articles/-/50377
2014年10月13日 中村 稔:東洋経済 編集局記者
「電力会社にも、国にも、裏切られたような気持ちだ」
九州電力が10月1日に福岡県で開いた事業者向け説明会。そこでは詰めかけた数百人の再生可能エネルギー事業者から厳しい声が相次いだ。九電による電力買い取りを当て込んで太陽光パネルに投資した個人事業主は、「投資が無駄になったらどうしようかと毎日不安。慰謝料は考えてくれるのか」と訴えた。
事の発端は9月24日、九電が再エネの「全量固定価格買い取り制度」(FIT)を通じた買い取り申請への回答を、翌日から数カ月間「保留する」と発表したことだ。突然の“契約中断”宣告は、30日には北海道、東北、四国の各電力会社にも連鎖した。
各社ともに、出力10キロワット未満の住宅用太陽光は当面対象外としたが、10キロワット以上の住宅用も少なくない。九電の説明会では、「太陽光を含めローンを組んで家を着工したが、契約中断で工事を中断している」「マンション屋上に太陽光パネルを設置する計画が頓挫した。顧客にどう説明すればいいのか」といった苦情も聞かれた。
■「電力の供給不安定」を理由に拒否
今までも各管内の一部エリアや沖縄では、「送電線の容量不足」を理由に、接続の拒否や高額な接続工事費の請求を行う、ローカルネックの問題はあった。だが今回は管内全域が対象。自治体からも「九州全土とは想定外。福岡県は再エネ導入量全国1位だが、ブレーキになりかねない」(福岡県総合政策課エネルギー政策室)と懸念が広がる。
九電によれば、今年3月だけで、FITの買い取り単価引き下げ直前の駆け込みもあり、従来の1年分に匹敵する、約7万件の太陽光の接続契約申し込みが殺到。詳細を確認した結果、7月末までの申し込みの全量が接続された場合、総量は春・秋の昼間の電力需要約800万キロワットを上回る。契約申し込み前の設備認定分も合わせると、夏のピーク需要約1600万キロワットをも超えるという。
電力を安定供給するには、需要と供給を常時一致させる必要がある。もし、太陽光を含む発電の供給が需要を大きく上回れば、周波数が上昇、場合によっては自動的に発電機が停止し、大規模停電が発生するおそれがあるというのが、電力会社の回答保留の理由だ。太陽光は夜間に発電できず、昼間でも晴天から雨に変わると発電量が急減する。安定供給には太陽光以外の電源が不可欠とも強調する。
今後は再エネの受け入れ可能量を数カ月かけて見極める方針。結果的に受け入れ拒否となる事業者が多数出る可能性がある。FIT法では、電気の円滑な供給確保に支障の生ずるおそれがあれば、受け入れを拒める。事業者の損害を補償する義務もない。
だが問題は電力会社が再エネの受け入れ可能量を増やすための対策だ。要は、昼間に太陽光の発電で需要をオーバーする分を、どこまで調整・転用できるかである。
第一には揚水発電。昼間に太陽光の電気を使って、揚水運転を行い(水を上部のダムにくみ上げ)、夕方や夜間に水を落とし発電する。通常のやり方と昼夜の運転が逆だが、これを行うことで、夜間の火力発電もセーブできる。第二は地域間連系線を使った管外への送電である。現在の連系線の空き容量を活用し、電力会社間の送受電を増やすものだ。ほかにも、太陽光の出力抑制や、蓄電池の活用といった方法が考えられる。
■原発再稼働にらみ、再エネを減らす?
そもそも今回の回答保留には疑問点も多い。一つには、接続申請が集中した3月から今回の発表まで、約半年もかかったことだ。電力側は、申し込み内容の詳細確認に時間がかかったというが、もっと早くできなかったのか。
また九電の場合、7月末の再生エネの設備認定容量(政府認可)は1900万キロワットに及ぶが、導入容量(運転開始済み)は400万キロワット弱にすぎない。「この状態で唐突に回答を保留することは、通常のビジネス常識では考えられない」(大林ミカ・自然エネルギー財団事業局長)。
気になるのが原子力発電との関係だ。事業者からも「川内(せんだい)原発が再稼働するから再エネの枠が減ったのでは」との質問が出た。これに対し九電は「再エネのみでは安定供給できない。ベースロード電源としての原発と、調整可能電源としての火力発電も入れた前提で、再エネの接続可能量を見極めたい」と説明。ただ川内原発1、2号機の計178万キロワット、玄海原発3、4号機の計236万キロワットの再稼働を前提にすれば、おのずと再エネの入る枠は狭まる。
この点はまさに再エネに対する、国としての姿勢が問われる。欧州では再エネの優先給電が欧州連合(EU)指令で義務づけられ、再エネの出力を抑制する前に、火力や原子力を抑制しなければならない。結果としてベースロード電源が消滅に向かっているともいわれる。
もちろん、電力系統の安定が大前提ではあるが、日本はまだFIT法によっても、再エネの優先義務が徹底されていない。電力会社にとっては「厄介な代物」との意識が根強く、受け入れ対策も後手後手の印象が強い。
「系統接続に厳しさがあり、受け入れ容量拡大が必要なことは、FIT開始前からわかっていたはず。揚水発電の設備利用率は低く、連系線を通じた他地域への供給もあまり行われていない。本当に受け入れ枠はいっぱいなのか」と、高橋洋・富士通総研主任研究員は疑問を投げる。
日本の全発電量に占める再エネの比率は、欧米に比べて低く、普及の本格化はこれから。FIT導入で、住宅用の太陽光発電の導入コストは急速に低下し、2016年には家庭向け電気料金より安くなる可能性も指摘される。低コストでエネルギー自給率を高めるためにも、電力会社が先進国の需給調整ノウハウを見習い、そして政府も再エネの推進姿勢をより明確にする必要があろう。
(「週刊東洋経済」2014年10月11日号<10月6日発売>掲載の「核心リポート03」を転載)
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