05. 2014年10月10日 17:13:27
: jXbiWWJBCA
インタビュー:投機的円安にはドル売り介入が効果=榊原青学大教授 2014年 10月 10日 15:12 JST [東京 10日 ロイター] - 元財務官の榊原英資・青山学院大学教授は10日、日本経済にとって円安のメリットが薄れてきたとの見方を述べた。ロイターのインタビューで語った。足元ではドル/円相場が106円─111円といったレンジに入った可能性があるとの見方を示したほか、急激に進行する投機的な円安に対してはドル売り介入が効果を発揮すると述べた。日銀による追加緩和があるとすれば、来年に見込まれる消費再増税のタイミングではないかとの見方も示した。 <ドルはレンジ相場入り> 榊原氏は、足元の円安は強い米国経済のファンダメンタルズを反映したドル高だとし「市場は米経済の強さを織り込んだ」と見ている。米経済が3%成長などさらに強くなる様子はないとし、「ドル高/円安の局面は終わった。115円や120円と、どんどん円安になる局面ではない」と指摘した。 米国の経済成長ペースは日本を上回っている上、金融政策の方向性の違いもあるため、極端な円高方向への逆回転はないとの認識を示した。一方、円安要因となり得る日銀の追加緩和についてもすでに織り込みが進んでおり、ドルの上値も限られるとみている。米国のQEで円高が進んだが、日銀のQEで元のレベルに戻ってきたと指摘し「半年程度はレンジ相場が続くのではないか」と語った。 <投機的な円安にはドル売り介入が効く> 榊原氏は財務官当時、円高阻止の円売り介入が注目されたが、足元の円安水準については「日本経済にとって円安メリットは薄れてきており、決してプラスではない」と指摘した。かつては輸出促進というプラス効果があったが、今や日本企業のかなりの部分が海外生産している上、輸入面でのネガティブ効果に変化はないとし「恐らく強い円は日本の国益だという局面に入ってきている」と述べた。 ファンダメンタルズからかい離した投機的な円安が進行する可能性もあり得るが、榊原氏は「マーケットの思惑だけで円安になる場合は、短期間しか続かない。放っておいても元に戻るし、ファンダメンタルズと逆ならドル売り介入すれば効く」と述べた。 在任中に榊原氏は、当時の黒田東彦国際局長とともに円安阻止のドル売り介入を実施した実績もある。円高から反転して円安に弾みがついたタイミングでドル売り介入したとの経緯を説明し、「115円、120円と、非常に速いスピードでいくようになったら逆介入は必要だろう」と述べた。 もっとも、榊原氏の在任時に比べて為替市場は巨大化しており「介入してもなかなか効かない状況になってきている」面がある。加えて「ドル売り介入には外貨準備の天井があるため、そんなに簡単ではない」とも指摘した。直近の高値110円は過度な水準ではなく、さらに上振れていく気配もないとして「今はそういう(介入する)局面ではない」との認識も語った。 <追加緩和は消費再増税とセットに> 日銀による追加緩和があるとすれば、消費税の再増税とセットで実施されることを市場は織り込んできていると指摘した。「再増税が来年10月なら、その前後で追加緩和をすることは十分あり得る」との見方だ。 足元の日本経済について、成長率1.5%程度は順調といえると指摘し「これ以上、金融政策で刺激する必要はない。さらなる金融緩和を消費税の再増税前にやるべきではない」と述べた。その上で「おそらく来年の末ごろにもなれば、日本もそろそろ出口の話になってくると思う」と述べ、出口の議論が始まれば、円安も自律的に抑制されるとの見方を示した。 消費税の再増税については、財政健全化の面から不可避との立場で、先送りすべきでないと述べた。これまで国債市場が崩れていないのは、家計の金融資産が非常に多い上、財政再建が着々と進んでいるとの認識があるためだとし「再増税しないリスクは非常に大きい」と指摘した。2─3年の先送りを指摘する声もあるが「2─3年たったら必ずやるということではないだろう。ロードマップは示しにくい」との認識を示した。 「相変わらず政府は、GDPの8%ぐらいの赤字を出している。家計の貯蓄率は2─3%になってる。だんだんギャップが縮まっている」との警戒感を示したうえで「このままの状況が続けば、5年先、10年先、どこかで国債暴落ということはあり得る。それは絶対に回避しないといけない」と語った。 (平田紀之、梶本哲史) http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0HZ0CW20141010 世界的に荒れる金融市場、揺らぐ世界経済や米金融政策への見方 2014年 10月 10日 16:31 JST [東京 10日 ロイター] - 世界的にマーケットが荒れている。金利は反転低下し、ドルも反落、株式市場は連日の乱高下だ。強気相場の反動だけでなく、市場心理の不安定化が大きく作用している。背景にあるのは世界的な景況感の悪化や、弱気化している米利上げ観測などだ。 この動きが一時的な調整なのか、それとも新たなトレンド形成の始まりなのか。市場の警戒感はにわかに強くなってきた。 <材料なき下落> 明確な売り材料があったわけではなかった。9日の米市場でダウ.DJIは334ドルと今年最大幅の下落となったが、「これという売り材料はなかった。ここまで下落する理由がわからない」(米系証券トレーダー)との声は多い。とにかく売りたいという最近の市場ムードが色濃く出たようだ。 米ダウが200ドル以上、上下するのは今月に入って早くも3度目。バーナンキ前FRB(米連邦準備理事会)議長が、量的緩和縮小を示唆して世界市場が荒れていた昨年6月以来の多さだ。VIX指数.VIXなど各種ボラティリティ指数も上昇してきている。 マーケットを不安定化させた第1の要因は、米株などリスク資産価格への高値警戒感だ。S&P500企業でみた予想PER(株価収益率)は15倍程度と割高感が強いわけではない。 だが、リーマン・ショック後の2009年3月に付けた安値から、期間は5年半、上昇率は200%に達する。今年9月19日に付けた史上最高値からの調整率は4%強に過ぎず「もう少し下落しても、調整の範囲内だ」(邦銀)との声も多い。 では調整に入った原因は何か──。特定のきっかけはないものの、世界経済と米金融政策に対する見方が揺らいだことで、市場心理が不安定化したためだとみられている。欧州や中国の景気が芳しくないとの認識は広く市場で共有されていたものの、最近の欧州や日本の経済指標などが悪化し、マーケットの景況感が一段と弱くなってきたという。 「世界経済の機関車役である米経済は依然として堅調だが、米国だけで欧州や中国、そして日本の経済をけん引していくには荷が重すぎるようだと、マーケットは感じ始めている。米経済は相対的に強く、長期的なドル高ストーリーに変わりはないものの、市場の景況感が揺らいでいることで、しばらくは動きの荒い相場展開となりそうだ」と三井住友銀行・シニアグローバルマーケットアナリストの岡川聡氏は話す。 <「機関車」のスピード減速を懸念> 米経済は世界の「機関車」役によく例えられる。「機関車」は今のところ堅調ではあるものの、欧州や中国、日本などの経済が弱くなり、けん引する「車両」が重くなっていることで、米金融政策や米ドルへの見方も揺らいでいるという。 米経済が順調に回復していけば、米連邦準備理事会(FRB)は来年6月にも利上げを決定するとの見方が市場ではコンセンサスだった。そのシナリオをベースにドルは上昇、ドル/円JPY=EBSは今月1日、6年ぶりの110円を付けていた。 しかし、8日に公表された9月の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨は、世界景気に対し慎重な見方を示し、市場の利上げ予想時期は後退。米短期金利先物のレートは2015年第4・四半期(10─12月)の利上げ開始を織り込む水準に後退している。その結果、ドル/円は一時107円半ばまで下落した。円安を買い材料とする日本株も調整を深めている。 JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル・マーケット・ストラテジスト、重見吉徳氏は「ドル高政策への警戒感も市場が調整に入った要因だろう。グローバルな世界景気減速が米経済に波及し、米国もドル高が耐えられなくなれば、他国の通貨安政策も見直しを迫られる。米国が選挙の季節に入ることも、市場の見方を不安定化させている」と指摘する。 <溜まるショートポジション> ただ、世界経済が崩壊するような不安が、マーケット全体に広がっているわけではない。VIX指数も上昇したとはいえ、まだ18ポイント台。米量的緩和の早期縮小観測が強まった昨年6月、米財政問題がクローズアップされた昨年10月、資金巻き戻しが起きた今年2月に付けていた20ポイントにはまだ距離がある。 反発エネルギーも溜まってきている。東証が発表する株式の空売り比率は9日時点では36.2%。10月3日に36.5%と今年最高に上昇した後。6日の日経平均.N225が一時、260円高となったことでショートカバーが進み33.8%まで低下したが、その後再び上昇傾向にある。弱気が増えている証拠ではあるが、いずれ買い戻されるため、きっかけがあれば、自律反発に転じる見通しだ。 ドル安にもかかわらず原油価格の下落が進んでいる。原油価格下落は資源株の下落を通じて米株下落の要因にもなっている。だが、原油市場では、投機的な新規ショートが入ってきたことによるオーバーシュートの雰囲気も強まってきたという。 米原油先物Clc1は10日の市場で1バレル83.59ドルと2012年以来の安値水準まで下落したが、「シェールガスのコスト面などと比較しても82ドル程度がせいぜいではないか。新規ショートも多く入ってきているようであり、きっかけ次第で反発するとみている」とアストマックス投信投資顧問コモディティ運用部シニアファンドマネージャーの江守哲氏は話す。 現時点では、投資家心理の不安定化を要因とした金融市場の乱高下の範囲内との見方が多い。しかし、資産価格の下落と経済悪化の悪循環が始まってしまえば、調整とは言っていられなくなる。世界経済が一段と弱くなっているだけに、警戒も怠れない。 (伊賀大記 編集:田巻一彦) http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0HZ0IH20141010 |