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任天堂、苦境を招いた複雑な社内事情 岩田社長、抜本対策を示せず“動じない”理由
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141010-00010000-bjournal-bus_all
Business Journal 10月10日(金)0時10分配信
スマートフォン(スマホ)にクラウド。急速に進むゲーム業界の技術革新で家庭用ゲーム専用機(以下、ゲーム機)の需要が先細りする中、任天堂が業績回復のきっかけを掴めずにいる。その同社の岩田聡社長に対し「危機意識が感じられない」(同社関係者)との批判的な声も一部からは聞こえる中で、岩田氏をめぐり様々な臆測が飛び交っている。
同社が7月30日に発表した2015年3月期第1四半期(14年4―6月)連結決算の純損益は99億円の赤字(前期は86億円の黒字)。売上高も前期比8.4%減の747億円だった。14年3月期(通期)の連結決算も売上高が前期比10.0%減の5717億円、営業損益が464億円の赤字、純損益が232億円の赤字。売上高は5期連続の減少で、営業赤字は3期連続だった。
同社は当初、据置き型ゲーム機「Wii U」の販売台数を900万台と見込んでいたが、272万台しか売れなかった。当初3800万本を見込んでいたソフトウェアも半分以下の1886万本にとどまった。これで13年3月期連結決算発表時の業績予想が大きく狂い、売上高は当初見込みの9200億円を3483億円も下回る5717億円で、ピーク時売上高のほぼ3分の1に縮んだ。さらに13年1月の経営方針説明会で岩田社長は「1000億円以上は公約」と宣言した営業利益に至っては464億円の赤字。公約と実績の乖離は実に1464億円に膨らんだ。
●岩田社長の余裕
証券アナリストは「スマホやクラウドの普及に、従来型ゲーム機は押されつつある。任天堂は『ゲーム機離れ』をしない限り、業績改善は難しいのではないか」と指摘する。一方、岩田氏は「ゲーム機ビジネスは博打のようなもの。当たる時もあれば外れる時もある」として一向に動じる気配をみせない。同アナリストは「岩田氏をインタビューしていても、追い詰められている意識がないようだ」と評している。
このような岩田氏の姿勢は一貫している。1月17日付日本経済新聞のインタビューで、3期連続営業赤字に陥った原因については「前期までの2期は超円高への対応で大変だった。しかも、主力ゲーム機の乗り換え期で普及台数が少なく、ソフトの売れる数が限られた。今期はもっと売れると準備もしていたが、結果はそうならなかった。一方で利益を出しやすい旧来のゲーム機の販売が大幅に減り、主力ゲーム機の切り替えに苦戦している」と説明する。
また、ゲーム機の需要は縮小しているとの指摘に対しては「ゲーム機はスマホやタブレットなどのスマート端末に取って代わられているとの論調がある。だが『ニンテンドー3DS』の国内販売台数は好調だ。スマート端末が普及しても、世の中の変化に合わせて提案をすればゲーム機はなくならない。ゲーム機ビジネスの未来は暗くない」と回答。さらに「抜本的なテコ入れ策を考えている。それを今月末の経営方針説明会で発表する」と語り、株式市場関係者の注意を引いた。
それから約2週間後の1月30日、東京都内で開催された経営方針説明会。岩田氏は「ハードとソフト一体型のゲーム機ビジネスは今後も経営の中核」と述べると共に、「スマホに任天堂のソフトを供給する考えはない」と断言。現状の経営路線継続に揺るぎない自信を示した。そして、注目の「抜本的なテコ入れ策」として「ゲーム機を活用した健康ビジネスへの参入」(15年度開始予定)と「マリオ(スーパーマリオ)など自作ゲームキャラクターを活用した版権ビジネス拡大」の2つを発表した。その説明が始まった途端、会場内の一部からは失笑が洩れた。抜本的テコ入れ策とは程遠い内容だと受け止められたためだ。
この内容が伝わった同日午後の株式市場では、同社株に失望売りが殺到。同社の株価は一時、前日比570円安の1万2310円まで下落した。それでも「ゲーム機ビジネスは、新作ソフトを1本ヒットさせれば苦境を打開できる」と岩田社長の余裕は変わらず、「なぜこれほどの余裕を持てるのか」と様々な臆測が飛び交う結果を招いているのだ。
●潤沢な内部留保と社内力学
玉石混交の臆測のうち、ゲーム業界関係者の間で本命視されているのが「潤沢な内部留保説」と「社内力学説」だ。
前説の根拠は、同社の並み外れた財務体質の良さ。同社は長期にわたって無借金経営を貫いている数少ない企業の1社として株式市場では有名。実際、14年3月期連結決算を見ると、流動資産や固定資産を合わせた資産合計は1兆3064億円、長年の事業活動の結晶ともいえる内部留保(利益剰余金)は1兆3781億円で、純資産合計も1兆1184億円に達している。11年2月に発売したニンテンドー3DSで業績が失速するまで、同社がいかに超優良企業だったかを示している。
中長期的な事業の安定性を示す指標の自己資本比率(純資産÷資産合計)も85.6%の高さ。固定資産が多いメーカーの場合の安定性は20―30%が目安とされているので、同社の安定性は群を抜くといえる。また、流動資産に関しては現金・預金と有価証券だけで7952億円もあり、キャッシュフローも豊富だ。反対に負債は手形・買掛金の477億円が最高で、退職金引当金などの固定負債を合わせても負債総額は1880億円でしかない。銀行借り入れなどの有利子負債はもちろんゼロ。したがって、3期連続程度の営業赤字では財務体質が揺らぐことはない。
だが、今後も営業赤字が続けば、株主から引責辞任圧力が強まってくる。昨年の株主総会でも岩田氏への信任率が77%まで低下するなど、その兆候も出ている。業界関係者は「それに岩田氏がいつまで耐えられるかが問題」という。
●「スマホ対応しない」宣言を生んだ双頭体制
後説は岩田氏と宮本茂専務の関係が根拠。業界関係者は「ゲーム機のハードウェアは岩田社長が担当、ソフトウェアは宮本専務が担当というのが同社内部の不文律」といい、次のように説明する。
宮本氏は金沢美術工芸大学を卒業して同社に入社、頭角を現した生え抜きのゲームクリエーター。『スーパーマリオブラザーズ』『ゼルダの伝説』など数々のヒットゲームを生み出したゲームソフトのヒットメーカー。社内では「任天堂ソフト開発の総帥」といわれている。
一方の岩田氏は、創業家2代目の山内溥相談役(故人)が自らヘッドハンティングした外部登用社長であり、02年の社長就任以降、WiiやニンテンドーDS開発の指揮をとったハードウェアのヒットメーカー。経営者としても同社の業績を飛躍的に向上させた実力者だ。
そんな経緯から「同社の実質的トップは生え抜きカリスマ専務と外様社長の双頭体制であり、両者は相互不可侵の関係」(前出・業界関係者)という。根っからのゲームクリエーターである宮本氏は経営方針に口を挟まない代わりに、岩田氏も宮本専務に遠慮してソフト開発には口出しをしないのが鉄則。「だから、スマホやクラウドに興味のない宮本氏に、岩田社長はスマホ対応のソフト開発を指示できない。この微妙な社内力学関係が経営方針説明会で岩田社長に『スマホ対応をしない』と断言させた背景」と別の業界関係者は指摘する。
同社の業績不振は、外部からは窺い知れない複雑な内部要因に根差しているようだ。
田沢良彦/経済ジャーナリスト
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