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DVD『ブラックバイトに負けない! クイズで学ぶしごとのルール』(PARC)
残業代のかわりにネギ支給…ブラックバイトで暗黒街化する日本!
http://lite-ra.com/2014/10/post-528.html
2014.10.08. リテラ
「ブラック企業」が問題化して久しいが、今やその毒牙は学生アルバイトにまで迫っている。低賃金にもかかわらず正規雇用労働者並みの義務やノルマ、重労働を課される通称「ブラックバイト」が急増し、“使い潰しの若年化”が進んでいるのだ。
そんな中、ブラックバイトの被害から若者を守ることを目的としたユニークなDVDが発売された。『ブラックバイトに負けない! クイズで学ぶしごとのルール』。発売元であるNPO法人アジア太平洋資料センター(PARC)は「ブラック企業大賞」企画委員会にも携わっている団体である。
内容は、ドラマ仕立てのクイズ形式を交えながら、アルバイトをする際に最低限知っておくべき法律や知識を専門家たちが解説するというものだが、注目したいのは、同作の中に収録されている、学生たちによるブラックバイト体験談の数々。とにかく、唖然とするような理不尽な労働環境がめじろ押しなのだ。その一部をDVDから紹介しよう。
まず、明らかな違法行為であるのに意外とスルーしがちなのが、受け取るべき賃金の未払い。実際、この被害に会っているアルバイトは多い。
「月に2回ミーティングがある。強制参加で。でも時給が発生しない。面接で言ったというが、聞いていないってみんなも言うし、私も思ったし」(居酒屋バイト)
「お着物で仕事をしている。自分で着なきゃならなくて、経営理念の唱和、あいさつの仕方など全部やってからタイムカードを押す。1時間前には職場にいないと間に合わない」(会席料理店バイト)
仕事をするための着替え等を含む拘束は労働時間にあたると判例で認められている。にも関わらず、実際には賃金が支払われていないのだ。しかも出勤の記録をタイムカードで管理している店舗では、こんな姑息な手段が後を断たないようである。
「(タイムカードリーダーが)通常の時間より3分進んでいる。たとえば6時にアルバイトに行こうとすると、5時58分だとアウト。30分単位なので30分の時給が支払われない」(本屋バイト)
なんとなく文句をつけにくい風潮があるが、本来時給は1分単位で計算されるべきもの。こうした仕組みが常態化することで、事実上の拘束時間がむやみに増し、学生バイトの負担が増加してしまうのだ。しかも正規の残業代すら支払われないという恐ろしいケースも珍しくない。
「ほんとは10時以降は25%アップなんですけど、夜11時以降でプラス100円ってぐらい」(居酒屋バイト)
「(店長が)さらっと『残業代はウチは出ない』というので、面白いなというか」(雑貨店バイト)
法定労働時間外に発生する割増賃金や深夜手当の未払い等は労働基準法違反である。当然看過されてはならないが、なかにはアルバイトを軽視しているのか、こんな珍妙な“現物支給”さえ存在するという。
「夜10時以降は仕事しても物々交換みたいなヤツなんですけど、物々交換のものがネギなんですよ。使えないじゃないですか。あとご飯。冷凍されたご飯。しょうがもくれます。ミョウガ。薬味が多いです」(居酒屋バイト)
お金のかわりに薬味で誤摩化そうとは……。もはや法がどうこう以前の問題だ。
他にも本DVDには、異常な長時間労働や、いわゆる自爆営業的な行為がまかりとおっている現状が明かされている。
「週5で入ってて、1日8時間から9時間とかで、(中略)夜勤とか明けた日に、そのまま家に一回帰って、そのままお風呂入って、またバイト行って。また帰ってきて夜勤行くみたいな」
「23時から翌日10時まで働くということをやったこともある。正直、死にそうになりました」(ともに牛丼店バイト)
「スコーンとかマフィンとか、菓子パンですよね。廃棄ってわかっているものは、6掛けとかの値段で食べろ(と命令された)」(カフェバイト)
「クーポンがいっぱい挟まっているクーポンブックみたいなの。売らなきゃいけなくて。私、フロントなんで、なんかノルマみたいなの。売れなかったら自分で買わなきゃいけなくて。結局使わずに3000円捨てるっていう」(カラオケ店バイト)
もはや一部のバイトは“ブラック職業訓練校”となっているわけだ。由々しき事態としか言いようがない。
ところが、こういう状況について抗議をし、改善要求をすると、企業側からは「働くということはそういうことだ。学生バイトだからといって甘ったれるな」「社員はもっと大変なんだぞ。文句言うなら辞めちまえ」という恫喝がかえってくる。ある種の買い手市場である昨今、序列の低い学生バイトの労働環境改善は二の次という風潮が支配しているのだ。
ブラックバイトに遭遇した人はこうした身勝手な企業側の論理にごまかされず、労働基準監督署やユニオン、労働関係の弁護士などに相談して、徹底して闘ってほしいところだ。というのも、ブラックバイトの問題はたんに悪辣な労働条件という以外に、もうひとつ深刻な問題をはらんでいるからだ。
ブラックバイトという言葉を提唱した中京大・大内裕和教授は「POSSE vol.22」(NPO法人POSSE/2014年3月)収録の対談のなかで、以下のように語っている。
「ゼミの合宿やコンパを実施することがこの数年間とても難しくなっています。それは学生にアルバイトの予定が入っているからです。曜日固定制のバイトであればその曜日は絶対に動かせない。直前までシフトが決まらないバイトの学生もいる。テスト前にも休むことができない」
その背景には、学生の経済状況の悪化や奨学金制度の矛盾がある。家庭の仕送り額は年々減少し、学生が一日に使えるお金は800円以下というデータが出ており、仕送りだけでは就学不自由・困難だと感じる学生が40.3%もいる(2012年度/全国大学生協調査より)。さらに、かつてはほとんどが無利子だった奨学金制度は、今や有利子の学生ローンと化していて、奨学金の返済計画のため在学中からバイトにいそしんだり、卒業後も事実上の借金を抱えながら四苦八苦する者が大勢いるのだ。
つまり現在の学生にとってアルバイトとは、飲み代や趣味に使うお金を得るための“小遣い稼ぎ”ではない。多くの学生が“生活のための労働”を強制され、それによって学問に身が入らなくならざるをえないというのが真実である。前述のDVD『ブラックバイトに負けない!』でも、学生たちはこんな証言をしている。
「電話が授業中にかかってきて、早く来てって。このあいだは、連続14連勤でした」
「結構疲れが溜まってて。完全に学業に力が入らなくなってきて」
学生の本分は学業だ、と説教をするつもりはないが、ブラックバイトに見られる労働市場の劣化は、教育の場を破壊し、未来の日本を背負う若者の精神的・教養的摩耗を誘発する。ここから導きだされる結論は、経済を含む日本全体の地盤沈下だ。つまり、“ブラック化”の危険性を軽視した先に待っているのは、日本の“暗黒街化”だと言えよう。
「嫌なら辞めろ」を通用させてはならない。ブラックの一寸先は文字通り闇なのである。
(梶田陽介)
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