02. 2014年10月08日 13:56:26
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ドルは108円台前半、FOMC議事録の公表控え売り一服 10月8日(ブルームバーグ):東京外国為替市場では、ドル・円相場が1ドル=108円台を回復する展開となっている。この日の米国時間に連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の公表を控えて、ドル売り・円買いの動きが一服している。 午後零時2分現在は108円33銭付近。朝方には世界経済の減速懸念を背景としたリスク回避に伴う円買いが先行し、一時は107円75銭と9月17日以来の水準までドル安・円高方向に振れていた。その後は108円44銭まで値を戻している。 IG証券の石川順一マーケットアナリストは、FOMC議事録で、具体的な利上げの時期について議論されていたことが示されれば、次回会合で低金利を相当期間維持するという文言を修正する可能性が高まってくると指摘。その上で、「タカ派的な内容と捉えられれば、ドルを買い戻す動きが強まってくる」とみる。 米連邦準備制度理事会(FRB)はこの日、9月16、17日に開催したFOMCの議事録を公表する。同会合では、資産購入が終了した後も事実上のゼロ金利政策を「相当な期間」維持する方針があらためて示された。 石川氏は、世界的に株式相場が不安定化している状況下で、FRBのタカ派姿勢が確認された場合は、「株式市場にとってネガティブ要因になりやすい」面もあると説明。議事録公表後に株が一段安となれば、円買い圧力につながる可能性も残ると言う。 世界経済の減速懸念 国際通貨基金(IMF)は7日に公表した最新の世界経済見通し(WEO)で、2015年の世界成長率の予想を3.8%と、7月時点の予測値4%から引き下げた。日本については、14年の成長率を0.9%、15年を0.8%とし、それぞれ前回から0.7ポイント、0.2ポイント見通しを引き下げた。 前日の米株式市場では、IMFの見通し下方修正を受けて、ダウ工業株30種平均 が大幅下落。この日の東京株式相場は日経平均株価 が200円を超える大幅安となっている。 日本銀行は6、7日の日程で金融政策決定会合を開き、政策の現状維持を決定した。7日の会合は、黒田東彦総裁が参院予算委員会に出席するため、一時中断された。総裁の国会答弁で会合が中断されたのは1998年9月以来のこと。 黒田総裁が同委員会で答弁した際、金融政策運営について、見通しが下振れた場合は追加緩和を行う姿勢をあらためて示したことで、市場では今回の日銀会合で追加緩和が実施されるとの期待感から円売りが進んだとの指摘が聞かれていた。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジストは7日の電話インタビューで、黒田総裁が会合を中断してまで国会で発言したことによって淡い追加緩和期待が生じていたが、現実には期待がつぶされる格好になったと指摘。さらに、「安倍晋三首相の発言という不規則要因も加わって、ボラティリティが無用に上がってしまう格好になった」としている。 安倍晋三首相は同じ委員会での答弁で、円安について、家計、中小・小規模業者にデメリット出てきているなどと発言していた。 米国のルー財務長官は7日、ピーターソン国際経済研究所(ワシントン)での質疑応答で、「強いドルは米国にとって良いことだと確信するが、まず第一に重視しなければならないのは米経済のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)だ」と述べた。 記事についての記者への問い合わせ先:東京 三浦和美 kmiura1@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先:Garfield Reynolds greynolds1@bloomberg.net青木 勝, 崎浜秀磨 更新日時: 2014/10/08 12:09 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-ND3K7H6K516F01.html 伊藤教授:GPIF新資産構成は12月発表も、株買いなど先行なら (1) 10月8日(ブルームバーグ):年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF )による新たな資産構成比率の発表は12月にずれ込む可能性がある−。公的・準公的資金の運用・リスク管理を見直す政府の有識者会議で座長を務めた政策研究大学院大学の伊藤隆敏教授は、ブルームバーグ・ニュースの取材に対して電子メールで述べた。 伊藤教授は、GPIFの運用委員会による審議は当初期待していたよりも遅いようだと指摘。GPIFが保有資産の変更を発表前にしてしまうか、発表後に実施するかを議論していると語った。 仮に新資産構成の発表前に国内債券の売却と日本株式や外貨建て資産の買い増しを実施する場合には、発表は12月まで遅らせる必要があると言う。また、現時点で望ましい資産構成は国内債が35−40%、日本株が20−25%、外国株式が20−25%だと答えた。 GPIFは国内債の削減と収益向上を求める圧力に直面している。昨年6月には資産構成を2006年の創立後、初めて変更。政府の有識者会議は昨年11月、国内債偏重の見直しやリスク資産の拡大を提言した。政府は今年の日本再興戦略の改定版で、GPIFの資産構成をできるだけ速やかに見直すと明記した。 運用資産127.3兆円を抱えるGPIFの資産構成目標値は国内債が60%、国内株が12%、外国債券が11%、外国株式が12%、短期資産が5%。ブルームバーグ・ニュースが5月に実施した予想調査の中央値では、GPIFは国内債の目標値を40%に下げる一方、国内株は20%、外債は14%、外株は17%に増やすと見込まれていた。 記事に関する記者への問い合わせ先:東京 野沢茂樹 snozawa1@bloomberg.net;東京 北中杏奈 akitanaka@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先:Garfield Reynolds greynolds1@bloomberg.net崎浜秀磨, 青木勝 更新日時: 2014/10/08 12:29 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-ND3ORM6JIJUT01.html
日本株は続落、IMF予想下げや円高嫌気−景気敏感中心売り 10月8日(ブルームバーグ):午前の東京株式相場は続落。国際通貨基金(IMF)の世界成長率予想の下方修正やドイツ鉱工業生産指数の低下、為替の円高が嫌気された。業種別下落率トップの輸送用機器をはじめ、鉱業や機械株など海外景気敏感業種を中心に幅広く安い。 TOPIX の午前終値は前日比19.11ポイント(1.5%)安の1271.78、日経平均株価 は231円57銭(1.5%)安の1万5552円26銭。 パリー・インターナショナル・トレーディングのマネジングディレクター、ギャビン・パリー氏(香港在勤)は「IMFのコメントを踏まえ、為替も1ドル=108円を急激に割り込み、日本株へのネガティブカタリストとなった」と言う。特に日本は輸出に頼っており、世界景気の懸念はネガティブだとしている。 IMFは2015年の世界成長率予想について、7月時点の4%から3.8%へ下げた。ユーロ圏は1.5%から1.3%、ロシアは1%から0.5%、ブラジルも2%から1.4%へ下方修正。日本も1.1%から0.8%へ下げた。一方、米国は3%から3.1%へ上方修正した。その上でIMFは、株式相場が泡立つ水準に達し、金融市場が調整に見舞われる可能性に警戒感を示した。 また、ドイツ経済省が7日に発表した8月の鉱工業生産指数は前月比4%低下し、09年1月以来の大幅な落ち込みとなった。ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想は1.5%減。ユーロ圏景気の弱さとロシアとの間の政治的緊張が景気に悪影響を及ぼしている。 これを受けてきのうの米国、欧州株は大幅安。米ダウ工業株30種平均や小型株で構成する米ラッセル2000指数は7月31日以来の下落率を記録した。米国株オプションの指標であるシカゴ・ボラティリティ指数(VIX )は7日に11%高と大幅続伸。 一時107円台、米国の需給事情 きょう午前のドル・円相場は一時1ドル=107円75銭と、9月17日以来のドル安・円高水準に振れた。リスク回避から安全性の高い資産が買われる流れが強まっている。きのうの東京株式市場の終値時点は108円57銭だった。 「米国ではヘッジファンドや投資信託などの決算を控え、10月上旬はファンドのポジション(持ち高)絡みの動きがオーバーに出てくることがある」と、内藤証券の田部井美彦市場調査部長は指摘する。世界の景況感が悪いとなれば、「そうした投資家の資金引き揚げに伴う影響は、日本株も例外ではない」とみている。 午前の日経平均は一時263円安の1万5520円と、きのうのシカゴ先物の清算値まで下げた。SMBC日興証券株式調査部の西広市部長は、8月8日から9月25日までの上げ幅の半値押しの1万5576円、75日移動平均線の1万5545円など日経平均1万5500円近辺には「節目も多く、一時的に割り込んでも抵抗を示すのではないか」と話した。 東証1部33業種は輸送用機器、鉱業、空運、情報・通信、機械、ゴム製品、精密機器、電機、パルプ・紙、海運など32業種が下落。水産・農林の1業種のみ高い。東証1部の午前売買高は11億7785万株、売買代金は1兆707億円。値上がり銘柄数は239、値下がりは1523。 売買代金上位ではソフトバンク、トヨタ自動車、マツダ、三井住友フィナンシャルグループ、アイフル、日立製作所、富士重工業、NTT、三菱電機、国際石油開発帝石などが安い。これに対し、前日発表のTOPIX浮動株比率の見直しで需要が期待されたりそなホールディングス、野村証券が目標株価を上げた味の素は堅調だった。 記事についての記者への問い合わせ先:東京 長谷川敏郎 thasegawa6@bloomberg.net 記事についてのエディターへの問い合わせ先:Sarah McDonald smcdonald23@bloomberg.net院去信太郎 更新日時: 2014/10/08 11:53 JST http://www.bloomberg.co.jp/news/123-ND3JD86KLVR801.html
日経平均は大幅続落、世界景気懸念で主力株に売り 2014年 10月 8日 11:54 JST [東京 8日 ロイター] - 前場の東京株式市場で日経平均は大幅続落。一時263円安となり、9月2日以来、約1カ月ぶりの安値水準となった。世界的な景気の先行きに対する不透明感を背景に米国株が大幅安となった流れを引き継ぎ、朝方から売りが先行。
円高に振れた為替も市場心理の後退につながった。主力株を中心に売りが広がり、東証1部上場銘柄の8割強が値下がりした。 8月の独鉱工業生産が前月比4.0%減と、2009年初頭以来、5年半ぶりの大幅減少となったほか、国際通貨基金(IMF)が世界経済の成長率予想を引き下げたことを受け、世界景気に対する警戒感が高まった。円高進行を背景に自動車やハイテクなど主力輸出株が売られたほか、機械や海運、素材など景気敏感株も軟調に推移。日経平均は75日移動平均線(1万5548円06銭=8日前場)が目先の下値めどとみられているものの、「米QE終了後の米国株の動向を見極めたいとして、押し目買いが入りにくくなっている」(いちよし証券・投資情報部課長の及川敬司氏)との声が出ていた。 個別銘柄では、岩崎電気(6924.T)や遠藤照明(6932.T)が反発。ノーベル物理学賞の発表を受けた思惑買いからLED(発光ダイオード)照明関連銘柄の一角が堅調だった。自社株買いを発表したアルプス技研(4641.T)は年初来高値を更新した。 きょう東証2部に新規上場したヤマシンフィルタ(6240.T)の初値は3350円となり、公開価格2800円を19.6%上回った。 東証1部の騰落数は、値上がり239銘柄に対し、値下がりが1523銘柄、変わらずが68銘柄だった。 日経平均.N225 前場終値 15552.26 -231.57 寄り付き 15574.60 安値/高値 15520.81─15602.8 東証出来高(万株) 117785 東証売買代金(億円) 10706.62 (杉山容俊) 円安に関する日銀総裁と私の発言に温度差ない=菅官房長官 2014年 10月 8日 11:46 JST [東京 8日 ロイター] - 菅義偉官房長官は8日午前の会見で、最近の円安に関する黒田東彦日銀総裁の発言と自身の発言に「温度差はまったくない」と語った。 黒田日銀総裁は7日の会見でこのところの円安について、「自然な変動だ」とし、「ファンダメンタルズにそくした変動はむしろプラス」などと述べた。菅官房長官は1日に行われた経済財政諮問会議で、円安になっても輸出が増えてこない、などと発言していた。 菅官房長官は自身の発言について「円安になればJカーブ効果が働いて輸出が増えるという経験則があったが、そこにはいたってないと話した。円安の水準が良い悪いではなく、政府は3本の矢を進め、企業は好調な収益を設備投資、賃上げ、雇用改善に投入して欲しい」と述べた。 さらに、「経営者は円安を含めて、世界の景気動向をまだ見極めている段階だ」とし、「内部留保は増えている。設備投資も増え始めている。一定の見通しが立てば日本で(生産などを)やったほうがいいとか、そうしたことはあり得る」と語った。 (石田仁志) http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKCN0HX07D20141008 http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPKCN0HX03720141008 コラム:米利上げ期待の落とし穴、ドル106円に下落も=山本雅文氏 2014年 10月 8日 11:42 JST 山本雅文 プレビデンティア・ストラテジー マーケットストラテジスト [東京 8日] - ドル円相場は2月以降、102円を挟んだレンジ取引が続いていたが、8月に急上昇し、一気に110円をつけた。 確かに、国内景気は消費増税後の需要反動減からの回復が予想外に鈍く、また順調に上昇してきた消費者物価(CPI)前年比も鈍化し始め、日銀の追加緩和期待が再燃しつつあるほか、公的年金運用改革を受けた外貨資産投資への期待感も円売り圧力とはなった。 とはいえ、最大の要因はドル全面高で、特に為替市場において米国の利上げが早期に開始されるとの期待感が急に高まったことが背景にある。 きっかけは非常に些細な変化だ。7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨および8月下旬のジャクソンホールにおけるイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長発言が従来ほどハト派ではなかったとの解釈が、9月FOMC参加者のフェデラルファンド(FF)金利予測の単純集計が上方修正されたことで視覚化され、ドル買いに拍車がかかったのだ。しかし、FRBが本当にタカ派化したのか、利上げ開始を早めたいのかは大いに再検討の余地がある。 第一に、9月FOMCで示された参加者のFF金利予想だが、単純集計ではタカ派方向にバイアスがかかっているリスクがある。最近の米金融当局の高官発言を分析してみても、来年第1四半期あるいは春の利上げ開始を主張しているのは最もタカ派の部類に入るメンバーで、彼らのほとんどは来年のFOMCで投票権を持たない。タカ派の中で来年投票権を持つのはラッカー・リッチモンド連銀総裁のみだ。市場はこれらの「声高な少数派」の意見を必要以上に知覚してしまいやすい。 今後、利上げ開始に向けて利上げ賛成票の多寡を見極めるには、現在合計10票のうち6票を占める、イエレン議長をはじめとするFRB理事ら5人とFOMC副議長を務め常に投票権を持つダドリー・ニューヨーク連銀総裁が明確に利上げに向けたスタンスを示すかが重要だ。 イエレン議長とダドリー総裁以外の理事らの発言は通常少ないため、市場が「物言わぬ多数派」の発言に触れる機会はそう多くない。現在でもこの6人がやると決めれば強行採決で利上げは開始可能だが、政治的にも不人気である利上げを実行するためにも、またイエレン議長の指導力を示すためにも、できるだけ反対票は少ないほうが望ましい。 来年投票権があるハト派のうち、ウィリアムズ・サンフランシスコ連銀総裁や、ロックハート・アトランタ連銀総裁を賛成側に取り込みたいところだ。エバンズ・シカゴ連銀総裁は最もハト派の部類に入ることから、最初の利上げ時には賛成側に取り込むのは難しいかもしれない。 <米金融政策の英国化リスク> 第二に、インフレ圧力が強まっていないことから、FRBは利上げを急ぐ必要性が低い。FRBが最重視しているとされる個人消費支出(PCE)コア価格指数は5月以降、前年比プラス1.5%で横ばいだが、コアCPIやクリーブランド連銀が算出する加重中央値や刈込平均は5月をピークにむしろ小幅低下している。インフレ連動債から抽出される市場のインフレ期待も低下基調にある。さらに、資産価格も鈍化しており、米株価は9月後半以降、調整色が強まり、住宅価格の伸び率は明確に鈍化している。 利上げを先取りした急ピッチのドル高も、金融条件の引き締めにつながり、また輸入インフレ抑制を通じて、インフレ率およびインフレ期待を抑制する方向に働いている。つまり利上げを急がずとも、通貨高が利上げの代わりに引き締め効果を米国経済にもたらしている面がある。これに加え、利上げをすれば、金融条件が引き締まり過ぎてしまうリスクすらある。 インフレとの関連で気になる他国の先例がある。今年6月から8月にかけて市場を翻弄したイングランド銀行(英中央銀行、BOE)だ。英国ではカーニーBOE総裁が6月に利上げ開始早期化を示唆するとポンド高が加速したが、その後、政治的圧力を受けてか、スコットランド住民投票というイベントリスクを控えてか、当時前年比マイナスで推移していた賃金上昇率の弱さを強調し始め、8月のインフレ報告で今後の利上げに向けては賃金を重視する姿勢を示し、市場の早期利上げ期待を大きく後退させたことがあった。 米国でも現在、実質賃金上昇率はゼロ%台で推移しており、イエレン議長も賃金上昇率の弱さに懸念を示していることから、FRBが「BOE化」するリスクはゼロではない。 <先走り過ぎのドル円> 第三に、利上げ開始に向かうとしても、ドルが一方向に上昇を続けるとは限らない。毎回のFOMCでいわゆる「メジャード(慎重な)ペース」と称された0.25%ポイントずつの小刻みな連続利上げを継続した2004―06年の前回利上げ局面には、最初の利上げ開始前の半年間は104円から114円と広いレンジで上下しつつも方向感は出ず、その後利上げ幅が1%超に達する途中で102円まで下落する局面もあった。 今回と比較してみると、来年第2四半期に利上げを開始するとしてもその半年前にも達していない段階ですでにドル円は8%上昇した。これは、前回の利上げ局面でフルに4.25%ポイント利上げした期間中の上昇率6%と比較しても、かなり先走っている面があることが分かる。 日本側も、円安を手放しで喜んではいない。確かに、輸出企業は輸出数量こそ増えずとも、外貨収入が円換算で増加するのはプラスだし、日銀としても2%の目標達成に向けて、ホームメイドインフレが弱い中で輸入インフレは援軍だ。とはいえ、輸入品への依存度が高い産業は急激なコスト増に見舞われており、円安で苦しむ企業のための支援策すら議論され始めている状況だ。賃金上昇率が緩やかにとどまる中での輸入インフレは、家計にとっても痛手となる。 こうした中、政府高官からの円安に関する発言も明確に変調した。安倍首相の発言もアベノミクス初期の「過度の円高是正」から直近では「円安にはプラス・マイナス両面ある」とバランスの取れた微妙なものとなってきている。これは、「現在の水準は正当化されず持続可能ではなく、さらなる大幅下落の余地がある」と繰り返すニュージーランド(NZ)や、通貨安歓迎姿勢をにじませるユーロ圏、豪州やカナダなどとは対照的なスタンスと言える。 ドル高シナリオを基にしたトレード戦略を組むにしても、円安を歓迎しない国内当局者コメントが障害となり得る円ショートより、当局が通貨安歓迎姿勢を隠さないNZドル、ユーロ、豪ドル、カナダドルの対米ドルでのショートのほうがクリーンな米ドル上昇が実現しやすいとみる投資家が増えてもおかしくない。 長い目でみれば、来年にかけて米日間の金融政策面でのコントラストは強まる方向で、115円を目指す展開もあり得よう。ただし、足元110円への対円でのドル高は先走り過ぎていた感があり、スピード調整として、いったん106円程度に下落するリスクに注意する必要があるだろう。 *山本雅文氏は、外為投資に関する調査・分析・情報発信を行うプレビデンティア・ストラテジーの代表取締役兼マーケットストラテジスト。日本銀行で短観調査作成、外為平衡操作(介入)や外為市場調査・モニタリングに従事した後、ドイツ・フランクフルト駐在を経てセルサイドに転出。日興シティグループ証券で通貨エコノミスト、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド銀行東京支店およびバークレイズ銀行東京支店で日本における為替ストラテジーチームのヘッドを歴任後、2013年8月にプレビデンティア・ストラテジーを設立。国際基督教大学卒業。
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