02. 2014年10月07日 22:39:43
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2014年10月07日 第129回 ドル高の時代到来、10月リスクはドルの買い場探し 【大橋ひろこのなるほど!わかる!初めてのFX】 10月1日にドル/円相場は110円台大台乗せ達成。しかしながらその後、米国株式市場が不安定な値動きとなっていることで、ドル/円相場も108円台にまで下落を見せ、110円台の大台水準を維持できるかどうかまだ確信が持てない相場となっています。9月の雇用統計は予想を上回る好結果となったことでドル買いが再開し、為替市場ではドル高回帰となったように見えますが、米国の株式市場ダウ平均のチャートは9月19日のアリババのIPOの日にトップアウトし上値が切り下がってきており、株価パフォーマンスが9月に次いで2番目に悪いとされる10月相場にはまだまだ警戒が必要かもしれません。1929年の大恐慌時、米株大暴落した「暗黒の木曜日」(ブラックサーズデー)は10月24日。1987年の史上最大規模となった世界的株価大暴落ブラックマンデーは10月19日でした。リーマンショックは2008年9月だったのですが、9月の株価下落が▲13.9%、その翌月10月の下落率は▲23.8%で、10月にさらに株価が急降下していました。マーケットを崩落させる事件が10月に多いことは不思議ですが、こうした極端な事例とは別に、アノマリーとして10月の下落が多いことの背景には米国の投資信託の決算は10月決算の設定が多いとされ、損益を確定させるためのポジション整理が9月頃から出てくるとされていることが一因とされています。また米国のヘッジファンドの決算は10〜11月に設定されているところが多く、これもまた10月のポジション整理が増える一因ではないかといわれているため、需給的に「上がっているものは利益確定に押されやすく、下がっていたものは買戻しで上昇しやすい」時期であることには違いないことから、今年の相場はアノマリー通りにならない(Sell in Mayは起こらなかった、夏場の円高もなかった)からといって、この時期の警戒を怠らないことが肝要になってくるかと思っています。米株が大幅調整を強いられる結果となった場合、ドル/円相場もチャート分析からは、8月20日のレンジブレイク上昇を起点にフィボナッチリトレースメントすると、38.2%押しの107.30円近辺、50%押しの106.50円近辺までの調整があっても何ら不思議はないという分析ができますね。 しかしながら、ドル/円相場は今回の米株の調整局面で日経平均も大きく15500円台まで16300円台の高値から800円を超える下落を見せた割には大きな下落に繋がっておらず、108円台が非常に固い相場となっています。これは、今回の円安局面でドルを買いくたても、上昇が速すぎて買い遅れ、ドルを買えなかった向きが、今回の下落局面では、こぞって下で口を開けて待ち構えていたという印象ですが、一部には「巨大なドル買い注文」に支えられたという指摘もあり、下がったところには、公的マネーが出てきているのかもしれません。IMMの投機家ポジションは円売りが膨らんできていることから、スピード調整への警戒を指摘する向きも出始めており、大きな下落につながるリスクはゼロではないのですが、投機筋と呼ばれる短期マネーの存在は巨大な為替市場ではあまり大きな影響を持つものではなく、こうした短期筋が商いの薄い時間帯(シドニー時間や東京早朝)に仕掛けてきて、瞬間的に相場を崩すという暴力的な動きを見せることはあっても、結局は膨大な実需の動きに飲み込まれていくため、現在の貿易の構造においては、仮に107円台、106円台への瞬間的円高局面が訪れたら、そこは積極的に拾われてしまうという相場環境であると考え、売りに乗るよりも安値に指値注文を置き、買うスタンスで「10月のリスクはドル買いチャンス待ちの相場」と捉えておいた方がいいでしょう。日本の貿易赤字の推移を見れば、日本がエネルギー輸入のためにどれほどのドル買いが必要な構造になっているかがわかります。これはすでに日本が円高ではなく、今後は「行き過ぎた円安」に苦しめられることを示しています。また、ドルインデックスはプラザ合意以降続いた円高局面の超長期のレジスタンスラインを突破し、新たなドル高の時代に入ったことを示しています。ドル高の時代は始まったばかりです。これまでの円安ドル高が過度な円高の修正であったかもしれませんが、今後は円安による苦しみが始まるリスクを考え、株などの資産への投資、外貨投資を真剣に考える時代に入ったといえるでしょう。 コラム執筆:大橋ひろこ フリーアナウンサー。マーケット関連、特にデリバティブ関連に造詣が深い。コモディティやFXなどの経済番組のレギュラーを務める傍ら、自身のトレード記録もメディアを通じて赤裸々に公開中。 TwitterAccount @hirokoFR 前の記事:第36回 「為替」を読み解く 【市場のテーマを再訪する。アナリストが読み解くテーマの本質】 −2014年10月06日チーフ・ストラテジスト 広木 隆が、実践的な株式投資戦略をご提供します。(@TakashiHiroki ) [ プロフィール ] 2014年10月7日 印刷用PDF (521KB) 二極化と多様化 恩恵に浴する側と不利益を被る側がある ドル円相場が1ドル110円をつけるなど円安が加速している。それを受けて、経済界や市場関係者の間で円安を巡る議論が熱を帯びてきた。これ以上の円安は日本経済にとってプラスなのか、という議論である。以前から繰り返していることだが、為替レートというのは2国間の通貨の交換比率である。だから、本来は「円が強い」とか「円が安い」というような表現は一概にはできない。円の総合的な価値を測るには「実質実効為替レート」というものが用いられる。「実質」とは、名目の為替レートを、自国と他国のインフレ格差で調整することである。例えば、日本製品の価格上昇率がゼロで、米国製品の価格上昇率が 10%であれば、名目のドル円レートが変化しなくても米国製品は割高になるため、日本製品の対外競争力は 10%改善する。「実効」とは、複数の為替レートを貿易量などを基準として加重平均することである。対ドルでは 10%競争力が改善していても、対ユーロ、対ウォン、対人民元では、10%競争力が悪化していれば、日本製品の対外競争力がグローバル全体で改善しているとはいえない。ある分析によれば、現在の円レートは実質実効ベースで、円が変動相場制に移行して以来の最安値水準にあるという。これ以上の円安は未曽有の領域に足を踏み入れることになり、日本経済にとってのマイナス面のほうが多くなるという意見もある。無論、ものごとには常にメリット・デメリット両面があるので、「(円安は)良い・悪い」の二元論で決着がつくような話ではない。「デメリットもあるが日本経済全体で見れば現時点ではメリットのほうがまだ大きい」というのがコンセンサスのように思われる。 メリット・デメリット両面がある、と述べたが、正確に言えば、恩恵に浴する側があり、不利益を被る側がある。だから、「日本経済全体で見れば」とか「(メリット・デメリットを)ネットアウト(相殺)すれば」というのは実態のない議論である。「日本経済全体」という主体も、相殺された主体もないからである。 好調な外需企業と内需企業の不振 「現在の円安水準ではまだメリットのほうが大きい」というのは、大企業製造業などグローバルプレーヤーの視点に立った意見だろう。円安にも関わらず日本からの輸出が伸びないが、それは長く続いた円高に対応するため製造業の海外生産移管が進んだせいである。よって、以前に比べて円安の効果は限られるものの、韓国企業等ライバルとの価格競争力は確実に増すし、円換算の収益が増加し為替差益が企業業績を押し上げる。海外でビジネスをおこなっている企業にとっては、円安はメリットのほうが大きいことは明らかである。 一方、内需企業にとっては円安はメリットがないばかりか、デメリットが大きい。消費増税後の落ち込みからの持ち直しが鈍いところに、輸入コスト増で値上げを強いられる。さらに人手不足による人件費高騰も追い打ちをかける。 好調な外需・製造業と低迷する内需・非製造業という二極化の構図が鮮明になっている。月初に発表された9月の日銀短観の結果もそれを裏付ける内容だった。大企業非製造業の業況判断DIは前回調査から大きく落ち込んだ一方、大企業製造業のDIは、低下を見込んでいた市場予想に反して改善を示した。ところがDIが改善したのは「大企業」の製造業だけであり、中堅・中小企業は製造業であってもDIは悪化している。二極化は、外需・製造業VS内需・非製造業という構図だけでなく、大企業VS中小企業、都市部VS地方、といろいろなアングルで捉えるべきであろう。 上場企業目線と国内景気目線 東証一部の時価総額比率は、製造業が半分、非製造業が3割、残りが金融業である。製造業:非製造業:金融業の時価総額比率、5:3:2はそっくりそのまま利益額の比率でもある。上場企業の時価総額と利益で見れば、半分が製造業だ。しかし、日本全国、中小企業も含めた会社の「数」では、製造業の比率は1割に満たない。圧倒的な大多数は国内のローカルなサービス産業である。これは前回のレポートでも述べたことだが、<外需好調>という事実は、ドメスティックな世界で生きているわれわれには実感が乏しい。どうしても<内需不振>にばかり目がいきがちである。なぜなら、われわれの周りにあるのは低迷している内需産業ばかりだからである。 本日の東京外国為替市場はまさにこの点を巡る要人発言で揺れ動いた。参院予算委員会に出席した黒田東彦日銀総裁は民主党の福山哲郎氏との質疑の中で「ファンダメンタルズを反映した形での円安は景気にプラス」などと述べた。同発言を受けて円相場は伸び悩み、それに歩調を合わせる形で日本株にも買いが入った。ところが午後に入ると円相場は再び1ドル108円台に上昇した。安倍首相が午後の参院予算委員会で、円安の影響について「ガソリン価格の高騰、燃料費高騰などによって家計、中小・小規模事業者にはデメリットがでてきている」などと答弁したことをきっかけに円高ドル安が進んだのである。
グローバルプレーヤーが主役の上場企業の視点に立つか、大多数の内需産業主体の国内景気の視点に立つかで円安の捉え方は180度違ってくる。グローバル製造業にはプラス、国内景気にはマイナスである。代表的な景気指標のGDPはGross Domestic Product、文字通りDomestic(国内)の景気動向を表す指標だ。いくらグローバル企業が海外で稼いでも(輸出が増えなければ)GDPにはカウントされない。だからこれからの時代は、GDPが悪くても、グローバル製造業の業績がいい、ということはじゅうぶんあり得る話である。このギャップをどう捉えるかが、今後の相場の焦点になるだろう。 さらに、前述した通り、外需・製造業VS内需・非製造業という単純な構図だけでなく、大企業VS中小企業、都市部VS地方、といろいろなアングルで捉える視点が必要である。というのは、一律に外需=好調、内需=不振という構図が、上場企業については成り立っていないからである。業種別指数を見れば、確かにグローバル製造業の業績とパフォーマンスが良く、内需・非製造業のパフォーマンスが悪い、ということは言える。しかし、個別にみれば例外はいくらでもある。全般に好調な電機セクターにおけるソニーの不振を挙げるまでもないだろう。自動車株のなかでは富士重が大幅高となる一方、ホンダの出遅れが顕著である。精密機器のなかではキヤノンが右肩上がりの推移に対してニコンの年初来騰落率はマイナス2割を超える。 一方、全般に低調な内需のなかでは小売セクターの良品計画が連日の高値更新となっている。小売りのなかで目立つのはビックカメラの株価上昇だ。2014年8月期の純利益が前期比で4倍となり過去最高となった。都心中心の店舗網で夏の賞与が増えたサラリーマンや訪日客向けに、高価格の家電が売れた。一方、ヤマダ電機など郊外や地方が主力の家電量販は苦戦している。これは衣料品で地方・郊外のロードサイド店が主体のしまむらが低迷しているのと同じ構図である。内需VS外需だけではなく、首都圏VS地方という二極化の典型例である。内需ではほかに清水建設などの建設株、京成などの電鉄株の多くも高値圏にある。もはや内需ディフェンシブ株という位置づけでは括れない医薬品セクターのなかでもアステラスが武田を時価総額で逆転した。利益率の高い新薬の販売が欧米で好調で、成長期待の差がパフォーマンスに現れている。
外需が好調、内需が不振とステレオタイプの二分化はできない。株はあくまでも個別銘柄次第である。
http://www.monex.co.jp/Etc/00000000/guest/G903/strategy/index.htm 広木 隆「ストラテジーレポート」 http://lounge.monex.co.jp/pro/special2/2014/10/07.html |