04. 2014年10月07日 11:05:32
: nJF6kGWndY
人生は、そう長くはないよく考えることだな http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20141003/272119/?ST=print 「河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学」 40代を襲う「つまらないオジサン化現象」にブチ切れた妻のホンネ 志を必死に持ち続けることが“前向きな力”になる 2014年10月7日(火) 河合 薫 今回は、「ウチの夫」について書こうと思う。 といっても、私の“夫”ではありません(夫持ちじゃありませんし……苦笑)。学生時代の友人M子の“夫”である。 彼女の話というか愚痴の内容は、おもしろさ半分、切なさ4分の1。でもって、残りはニッポンの、いや、オジサンたちの未来を考えさせる示唆に富んだ内容である。が、彼女のあまりにストレートな物言いに、 「おい! そりゃあないだろう。男の気持ちをわかってない!」と、怒る方もいるかもしれない。 いずれにしても、アナタの妻もこんな風に思っているかもしれないので、我が事として聞いていただければ幸いである。夫婦円満のためにも……。 ちなみに、M子は、某大手企業に勤め、2年前に部長に昇進。20代後半で結婚。会社の福利厚生が恵まれていたこともあり、その後2人の子どもを出産し、仕事と家庭を両立した。 M子の“夫”は、某大手企業に勤め、半年前に現場から外れ、新しい部署に異動になった。年齢は、49歳である。 2人の愛娘のうち1人は、来年、大学受験を控えている。 では、早速、彼女の愚痴をお聞きください。 「辞令を受けたときは、さすがにショックだったみたいだけど、もともとライン上の人ではなかったから『仕方ないね〜』って感じだったの。それに、今までもいろいろと苦労して頑張ってきた人だし、独立してフリーになるようなタイプではないので、私も大して気にしなかった。ところがさ〜、なんか最近、すっかりつまらない男になっちゃったんだよね」 「オーラゼロ! っていうか、一緒にいるとこっちに負のオーラが伝染するんじゃないかっていうくらい、冴えない男になった。二言目にはセカンドライフ、セカンドライフって。まだ50前なのに、そんな話ばっかりだよ! いったい何十年先のこと言ってるんだっちゅーの。お願いだから、しっかりしてよ! って感じだし、しけた顔ばかりしないでほしいんだよね〜」 「今まで、夫と仕事の話をするのは、結構楽しかったの。彼は私の一番の理解者であり、応援者だった。お互いやりたいことが明確だったし、それをやるために入った会社だったんで、紆余曲折ありながらも、自分の理想とか、欲望とか、上手くいかないこととか、折り合いのつけ方とか……、よく語りあった。たまには意見が対立することもあったけど、ホントに夫と話すのは楽しかった」 「夫は決して目立つ人ではないけど、的を射たこと言うし、お互いに成長してるって感じが好きだったの。彼がいるから私もやってこられたんだよね。なのにさぁ〜、セカンドライフだの、老後どうする? だの、そんな先の話ばっかりで。野心とか欲望とか皆無。完全にフェードアウト体制で、正直、ウンザリしてる」 “つまらないオジサン”になっていませんか 「で、こないだ大学時代の同級生たちと久しぶりに飲んだんだけど、これがまた、つまらなくてつまらなくて! ウチの夫と同じような話ばっかりでさ〜。バリバリがんばっていた同級生が、ただの“つまらないオジサン”になってた。なんで、男たちはこんなに超内向きになっちゃってんだって、がっかりしたよ」 「旦那さんも、同級生たちも、65歳までは会社に居られるだけいようって思ってるのかな? 独立とか、転職とか、起業とか、そういうのはないの?」(河合) 「ないない。全くない。おまけに危機感ゼロ。数年前、40代がリストラされていた時期があったでしょ? あのときのほうが危機感あったし、なんかあがいている感があって共感できた。でも、今は給料下がっても、とりあえずは会社にいられるから、開き直ってるっていうか、完全に死んでる。しかも、夫も同級生たちも、『会社に貢献してきた』感がやたらと強くて、“それが何か?”って言いたくなる」 「私からすれば、だったらこれからも貢献しろよ! って思うんだけど、その気は一切なし。どんな部署にいたって、どんな仕事してたって、新しいことってやろうと思えばなんでもできるでしょ? っていうか、それをやらないと会社だって生き残れないのに、それがわからない。みんないい大学出て、それなりにやってきた人たちなのにね〜」 「でも、意外と外では別人かもよ。新天地でバリバリ働いて、後輩の育成とか潤滑油になって、結構、貢献してたりして?」(河合) 「ないね。それはない。だいたい、なんで俺がそんなことやらなきゃいけないんだって感じアリアリだもん。夫はついこないだまで、50過ぎても現場に居続けるオジサンを批判してた。オリンピックが決まった時に、その人が『7年後か。ギリギリ現場に入れるな』って嬉しそうに言ったのを聞いて、『そのときまで現場に居続ける気かよ! 後輩に譲れよ!』って文句言ってたの」 「自分は異動で現場外れたから、それだけで後輩の育成に貢献したって思ってたりして(苦笑)」(河合) 「そうかもしれない! でもね〜、なんでこんな魅力のない、つまらないオジサンにみんななっちゃうんだろう。ホントがっかりだよ。それなりのキャリアを築いてきた人たちなのに、なぜ、それを生かして次のフェーズに挑まないんだろうね。そういえば、同級生の1人が、『こんなに出世できないとは思わなかった』ってボヤいてた……」 「入社面接のときに、“御社の社長になりたいです!”とか言って、“いいね〜。向上心があって”なんて、上司に気に入られたタイプかも(笑)」(河合) 「ボヤくくらいなら、なんとかしろっつーの! だいたいセカンドライフだの、老後だのって、そんな悠々自適な生活できるほど、おカネないし。しっかり働いて稼いでもらわなきゃ困るのにさ〜。ったく。男たちはつまらない! 女の人たちと話しているほうが元気出るし、よっぽど楽しいよ」 「ウチの夫」話は以上です。 彼女の言いたいことがなるべく伝わるよう、ありのままを書き連ねたので、お聞き苦しい言葉が少々あったかもしれませんが、どうかご容赦くださいませ。 ふむ、……。こうやって熟年離婚になっていくのだろうか? 「会社のために30年近く頑張ってきたのは、紛れもない事実なんだから、少しくらい楽させてもらってもいいじゃないか」 「っていうか、夫婦なんだから老後のことを話して、何が悪いんだ!」 彼女の夫にも、異論・反論があるかもしれない。 前向きに頑張っている男性は尊敬できる ただ、かなり個人的な意見を言わせてもらえば、役職や立場に関係なく、前向きに頑張っている男性は(女性も)、かっこいいし、リスペクトできる。おそらく彼女も、夫のそういうところが好きだった。男であり、夫であり、父親であり、同志であり、先輩であり、助言者であり――。 そんな夫がいるから、仕事もがんばれた。慣れない育児も、子どもが反抗期になったときも乗り越えられた。 ところがその夫が、しょぼくれたオジサンになった。セカンドライフだの、老後だのと、気分はすっかり定年後で、しけた話に明け暮れる始末だ。 ヒエラルキーの階段は閉ざされたとしても、会社人生が終わったわけじゃない。定年まで、あと15年、いや20年近くもある(老齢年金の受給開始年齢がさらに引き上げられ、定年が伸びる可能性もあり)。その貴重な時間を、20年以上のサラリーマン生活を、定年気分で過ごすのか、と。 奇しくも、先日、日立製作所が管理職の年功序列制度廃止を発表した。安倍政権も「日本型の賃金・労働慣行を見直して若い世代の賃金を手厚くすべき」と問題提起し、「年齢だけでなくいろんなことで賃金が決まるのが望ましい」と、塩崎恭久厚生労働相も記者会見で述べた。 つまり、時代の流れで考えると、オジサンたちの給料が今後下がることはあっても、上がる可能性は極めて低い。悠々自適なセカンドライフなど、夢のまた夢。 「我が家のどこに、そんな余裕がある? まだ、子どもの学費も払わなきゃならないし、家のローンだって残っているというのに、いったい何?」 と彼女が言いたくなるのも、無理もない。極めて現実的な話なのだ。 定年気分になるには早すぎる 米国の組織心理学者エドガー・シャインは40代を、「気が滅入り、落胆した状態。あるいはガソリンが切れて、モチベーションを失った状態であり、彼らは彼らの仕事に興奮を得られず、もし経済的に実行可能なら劇的なキャリア転換さえ夢見る時期である」と評した。 ところが、夫には、「劇的なキャリア転換の夢」もなければ、自分のキャリアと向き合う気配もなければ、危機という認識すら感じられない。 かつて、仕事や人生を熱く語り合ったときにあった、「志」はどこにいってしまったのだろう? そうなのだ。彼女が失望したのは、夫が志を失ったこと。 それが“夫への愚痴”の真意なのである。 志――。 最近、滅多にこの言葉を目にすることも、耳にすることもなくなったけれど、志は、人間の生きざまを決める大切な土台である。やる気とかモチベーションとはちょっと違う。その人の内側から、フツフツと湧いてくるエネルギーのようなもので、志のない人生ほど味気ないものはない。 心理学でいえば、「人生における目的(Purpose of Life)」であり、「人格的成長(Personal Growth)」。どちらもポジティブな方向に人生を導く力で、ウェルビーイングを高める重要なリソースである。 「人生における目的」は、自分の進もうとする方向を見据えることができて、初めて手に入る感覚で、この感覚を持っている人は、人生を退屈に感じたり、他人の意見にむやみに振り回されたり、世間の評価をやたらと気にすることがない。 また、「人格的成長」は、自分の人生は新しい経験に向けて開かれていると思える感覚で、新たな知識習得や経験に前向きな姿勢や、チャレンジ精神を高める。この感覚を持っている人は、自分の可能性を信じることができる。 目的と成長は人生満足度と関連性が高い 「人生における目的(Purpose of Life)」と「人格的成長(Personal Growth)」は、心身の健康、幸福感、人生満足度と関連性が高いことが、多くの実証研究で確かめられている。しかしながら、どちらの感覚も年齢と共に低下しやすくなるため、自ら積極的に高めることが求められるようになる。 そのためには、「もういいや」とあきらめちゃダメ。「もう若くはないけど、自分にはまだ秘められた可能性がある」と前を向いて、ゆっくりでもいいので歩きだすしかない。途中休憩してもいいし、しんどいときには寝たふりをしてもいい。 だが、そこでうつむいて歩くのを止めるんじゃなく、少しだけ顔を上げて足を動かしてみる。そうすることでしか、「人生における目的」と「人格的成長」を持ち続ける方法はないのである。 彼女は、「女の人と話していると楽しい」と語っていたけれども、確かに女性たちのほうが、「こうありたい」とか「もっとこうなりたい」といった貪欲さがある。 「野郎はさ、結局なんやかんやいっても、だんだんと男社会の計算をするようになる。だから、自分の組織での先が見えちゃったとき、なんかこうわけのわからない得体の知れない気持ちになる。どうすることもできない自分に、罪悪感みたいなもの感じたりしちゃうんだよね。そんなとき、組織で動いてないヤツらを見ると、かなわないなぁ、なんて思っちゃうんだよ」 こんなことを、同級生の男性の友だちが言っていたことがあった。ひょっとすると女性たちの貪欲さが、男性たちをうろたえさせているのかもしれないし、女性たちに吹く時代の風に、少しばかり嫉妬する気持ちもあるのかもしれない。 40代以上の男性に逆風はあっても“輝かせよう!”という風は吹いていない。 人は往々にして、利益よりも損失に敏感に反応する傾向がある。手元にあるものを失わないためにはどんなことでもするが、リスクを冒してまで未来の利益を得ようと思わなくなる。 そして、その損失の罠にはまった時、「未来」という文字が消え、今失われつつあるものだけに時に固執し、不安に襲われ、身動きできなくなり、非現実的な妄想の世界に浸ることで精神状態を保とうとする。 だが、志は、貪欲な気持ちなくして持てないモノ。 若いときのように体力もなければ、気力もないかもしれないけれども、精神機能は60代半ばまで緩やかに上昇し続けることが確認されている。 今まで読んだことなかった本を1冊読むだけもいい。目的もなく勉強することで、未来が広がることだってあると思う。志を必死に持ち続けることが、生きる力を高め、前向きなエネルギーのトリガーになり、危機を乗り超える強さにつながるのだ。 妻の愚痴は、「まだまだ、がんばれるよ! 一緒にがんばろうよ!」というメッセージだ。だって、ホントに嫌になったら愚痴も言わなくなるから。愛の反対は無視。そうならないために、耳の痛い話にも耳を傾け、もうちょっと踏ん張りましょ。私もどちらかといえばオジサン圏の女性ですが、まだまだ踏ん張ります。 このコラムについて 河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学 上司と部下が、職場でいい人間関係を築けるかどうか。それは、日常のコミュニケーションにかかっている。このコラムでは、上司の立場、部下の立場をふまえて、真のリーダーとは何かについて考えてみたい。 |