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1986年のサッカーW杯で、伝説の5人抜きを見せたディエゴ・マラドーナ。この離れ業にたとえたマーケットの「マラドーナ現象」とは?(Press Association/アフロ)
マーケットの「マラドーナ現象」に要注意 起こるべくして起きた、株高と円安の揺り戻し
http://toyokeizai.net/articles/-/49747
2014年10月05日 馬渕 治好:ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト 東洋経済
■世界の潮流に歩みをそろえた国内株価とドル円相場
先週の10月2日(木)は、日経平均株価が420円もの大幅下落を演じた。米ドル円相場も1日(水)には一時1ドル=110円超えとなったが、その後反落し一時は108円近辺に迫った。
9月21(日)付の当コラムでは、「大きな円安トレンドは変わらないが、当面は、いったん円高方向へ振れ戻る展開を予想する」「短期的には為替が円高へ反転するとともに、いったん株価も下押し、日経平均は1万6000円を割り込む可能性もある、と警戒している」と述べた。その通りになったわけで、先週の株安・円高には全く違和感はない。
こうした市場の暗転には、2つの背景があったと考える。1つは、すでに海外株式市場や米ドル以外の通貨では、株価の反落や外貨安・円高が生じ始めており、国内株価や米ドルが、遅れてその輪に加わった、という点だ。
たとえば世界の株式市場を見回すと、米・独の最近の高値が9月19日(金)、英国が9月4日(木)、インドが9月8日(月)、ブラジルが9月3日(金)と、日経平均の9月25日(木)に先んじている(例外は上海総合など、ザラ場ベース)。
つまり、日本株は、他主要国の株価軟化に、後から参加したに過ぎない。為替市場でも、10月初めにかけて対円で棒上げを見せた外貨は、(これも例外である中国元などを除けば)米ドルくらいのものだった。米ドルの独歩高が一休みし、先行して下落した「非米ドル通貨」に加わっただけだ。
もう1つは、最近の日本株高や米ドル高・円安には、「官製相場」期待があり、それが崩れた、という点だ。具体的にはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)など公的資金が、日本株や外貨資産を買い上げる、という観測だ。確かに、GPIFは株式や外貨資産への配分を増やすだろうが、長期的にゆっくり行なうだろう。
また、9月29日(月)から臨時国会が始まり、それが政策期待を国内株式市場にもたらしたのかもしれない。しかし、当コラムで過去述べたように、一発で景気や株価を大きく押し上げる、「バズーカ砲」はないだろう。
■当面の下値固めから、年末に向けた上昇相場へ
こうして先週の相場乱調の背景を分析するとわかるように、内外の経済実態などには、深刻な悪化が生じたわけではない。米国では地道な景気回復が持続し、9月分の雇用統計も堅調な内容だった。よって、株価の大幅な下押しを懸念する必要は薄いだろう。
と言っても、すぐに市場に楽観があふれかえるわけでもなく、目先の日経平均は、米雇用統計を受けた反発の後、1万6000円前後での値固めとなろう。その後は、今月下旬から始まる国内企業の決算発表で、収益見通しの上方修正を消化しつつ、年末に向けて上昇基調に復しよう。今週の日経平均の見通しは1万5500円から1万6300円と予想する。
経済実態面では、日本も消費増税で4月に国内景気が下振れしたあと、8月の大型小売店販売額が前年比でプラスに浮上するなど、脆弱ながらも徐々に回復を見せている。
また米国を含め、極めて緩やかに改善する世界経済の実態からは、内外株価の緩やかな上昇基調が見込める。しかし現実には、行き過ぎた楽観と悲観が交錯し、株価はトレンドの前後で、上振れと下振れを繰り返すだろう。
■今後も市場を支配する、「マラドーナ現象」
こうした局面で思い出すのは、前イングランド銀行(英国中央銀行)総裁のマーヴィン・キング氏から聞いた話だ。
キング氏は、極めつけのサッカーファンだ。筆者は以前の訪英時に、1986年のサッカーワールドカップ準々決勝、アルゼンチン対イングランド戦の話を聞いたことがある。そう、伝説となっている、マラドーナの5人抜きのゲームである。
アルゼンチンチームのマラドーナは、ハーフライン手前から独走、ドリブルで5人を抜いて決勝点をあげた。キング氏によると、実はマラドーナはほぼまっすぐ走っていた、という。ではなぜマラドーナは5人も抜けたかというと、イングランドの選手が、マラドーナが右に行くかもしれない、いや左だ、と邪推し、勝手に左右に動いたためだというのだ。
キング氏はこの時、英国の金融政策は方針を曲げず、まっすぐ進んでいるだけなのに、市場が勝手に悲観と楽観に振れている、と語っていた。その市場のブレを「マラドーナ現象」と呼ぼう。
今後の内外株式市場も、「米連銀の利上げは早いのでは、いや、遅いかも」「日本で大規模な経済政策が発動するのでは、いや、しないかも」と、勝手に邪推し、経済実態以上にブレることを何度も繰り返すはずだ。その時、投資家に必要な心構えは、浮かれすぎず落胆もせず、ということに尽きる。
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