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トヨタ、ユニクロ…優良企業に共通する、速く・高精度な改革を維持する秘密とは?
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141004-00010000-bjournal-bus_all
Business Journal 10月4日(土)6時0分配信
現在では数多くの経営理論が提唱され、各企業は自社に合うと考えられる方法を実践している。また、大学やビジネスカレッジで経営学を学んだ経営者も多く、経営効率を上げるためにさまざまな努力がなされていることだろう。しかし、どんなに優れた経営理論や経営手法を学んだ経営者が舵取りをしたとしても、必ずしも業績が上向くとは限らない。経営が成功している企業と失敗した企業では、どこに違いがあるのだろうか?
そんな問いへの答えについて、低迷する企業の立て直しを小説仕立てで描きながら探る書籍『経営参謀』(ダイヤモンド社)が6月に上梓され、話題を呼んでいる。今回は、その著者であり世界有数のコンサルティング・ファーム、マッキンゼー・アンド・カンパニー出身の経営コンサルタントで、数多くの企業で経営改革を実現させてきた稲田将人氏に
・何が企業の実践力を生み出すのか
・企業が成長するために必要なことは何か
・トヨタ自動車や花王などの優良企業の共通点とは
・PDCAを適切に運用する方法
などについて話を聞いた。
--まず本書を執筆することになった経緯をお聞かせください。
稲田将人氏(以下、稲田) 本書は前作『戦略参謀』の続編で、経営は品質管理手法のPDCA(Plan/計画→ Do/実行→ Check/評価→ Act/改善)そのものであることをアパレルメーカーの再建を題材にして、ストーリー形式で執筆しました。前作は当初『企業改革大全』としてノウハウ書に仕上げたのですが、編集者から「これでは数千部しか売れません」と指摘されたのです。
そこで「万単位の部数で売れるには、どうすればよいのでしょうか?」と尋ねたところ「小説にすればよいのですが、稲田さんは小説を書けますか?」と問い返されました。書けるかどうか以前に私が小説を読まないことを話したら、東野圭吾さんと池井戸潤さんの作品を読むように言われ、それぞれ何冊か読み、アウトプットのイメージをつかんで前書を書き上げたのです。それが好評だったため、続編の出版が決まりました。
--本書ではPDCAの重要性が説かれていますが、今や自治体までPDCAで費用対効果を検証しようとするなど、各界で導入されている一方、PDCAの真似事が蔓延しているような印象もあります。
稲田 その通りです。PDCAとは実践力であり、業務の実践体制と連動していなければ単なる形式に終わってしまいます。業務の改善を繰り返し、精度を高めることで進化させていくのがPDCAの目的であり、突進力や実行力、イレギュラーな事態への対応力を持っていたとしても、PDCAが回っていなければ成長企業もいずれ低迷を余儀なくされるでしょう。
例えば、トヨタ自動車や花王などの優良企業に共通しているのは、業務の実践体制を重視して、その手順に対してもPDCAを回して、常に改善と改革を繰り返していることです。
--ファーストリテイリングはどう評価していますか? 成長力に持続性がありますね。
稲田 ファーストリテイリングは2001年にユニクロの海外展開を始めて10カ国以上に出店しましたが、しばらく赤字が続いていました。その後、グローバル旗艦店をアメリカ・ニューヨークや中国・上海などに出店することができたのは、恐らく赤字の時期にPDCAを的確に回していたからだと思います。企業にとっては改革を常態化させていることが健全な状態で、それを可能にするのがPDCAの精度とスピードです。戦略という言葉をファンタジーのように錯覚する風潮がありますが、戦略は精度の高い初期仮説にすぎません。PDCAが明暗を分けるのです。
●経営者に求められる要素
--本書の登場人物である田村夏季常務は保身に走るあまり、社内政治に終始していますが、こういう人物が経営幹部にいたら、PDCAを正常に回すことができないのではないでしょうか。
稲田 業績向上よりも保身を優先させて、自分に都合のよくない役員や社員を悪者に仕立て上げるような人物は、どんな企業にでもいるのはないでしょうか。しかも、組織人にとって保身は煩悩のようなもので、大なり小なり誰にでも保身本能は備わっているでしょう。
PDCAはその弊害を抑制して、経営を健全化させるツールでもあるのです。PDCAが正常に回っていれば、社内政治の発生する余地がありません。よこしまな考えを持つ役員や社員も健全に業務を遂行せざるを得なくなります。つまりPDCAは、役員と社員の行動を健全化させるツールともいえるのです。
--常務に遠隔操作される社長と副社長は性善説の好人物とはいえ、企業経営においては無防備にすぎますね。
稲田 社長も副社長も、他人への“お任せ経営”をやっています。それが、常務の邪心を肥大化させ、社内政治への暴走を許してしまったともいえます。マネジメントにおいては、意思決定やコミュニケーションの精度を上げるという基本動作を定着させ、それを常に高いレベルで維持していなければなりません。バランスを取って組織を動かす神経系統を機能させれば、リーダーシップを発揮する前提が出来上がります。そのためにトップには慈悲の菩薩の顔だけでなく、時には厳しい不動明王の顔も必要です。
--本書では顧客プロファイリングの重要性も指摘されています。プロファイリングで参考にすべき事例はありますか?
稲田 セブン-イレブンの「セブンカフェ」が挙げられます。すでにコンビニエンスストアは朝、昼、夜の1日3食を提供する体制になっていたのに、顧客がコーヒーだけはカフェチェーンで買わなければならないことに疑問を持つところからセブンカフェの開発は始まっています。ドリンクを食品と一緒に買うことは自然な購買行動です。セブンカフェは、顧客の購買行動をプロファイリングして成功したビジネスであるといえるでしょう。
--舞台や経営課題を変えた第3弾を執筆する予定はありますか?
稲田 シリーズ化を計画しています。本書では主人公が米国にMBA(経営管理学修士)留学しましたが、MBAを取得した後には新たなキャリアが開けますから、主人公のその後にも触れてみたいと構想しています。
--ありがとうございました。
編集部
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