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竹中平蔵:中国に左右される「アジアの地政学リスク」
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141003-00000004-fukkou-bus_all
nikkei BPnet 10月3日(金)14時41分配信
先日、二つの大きな会議に出席した。一つがアジアと世界の結びつきをテーマにした「シンガポールサミット」である。これは2012年からシンガポール政府の肝いりで行われている大きな国際会議だ。もう一つは、ある金融機関がトルコ・イスタンブールで主催した投資家向け会議である。
■世界の投資家が関心を寄せる「アジアの地政学リスク」
シンガポールサミットでは、リー・シェンロン首相もスピーチをした。首相スピーチのすぐあとに開かれたセッションにおいて、私はロバート・ゼーリック元世界銀行総裁、韓昇洙(ハン・スンス)元韓国首相らとともにパネルディスカッションを行った。
イスタンブールの会議では、ノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大学教授とともにパネルディスカッションを行った。
どちらの会議でもテーマになったのが「アジアの地政学リスク」である。現在、世界で浮上している地政学リスクといえば、ウクライナや「イスラム国」が目立っているが、世界の投資家はアジアの地政学リスクにも非常に敏感だ。日本人が思っている以上に、彼らの関心は高い。
アジアの地政学リスクについて説明を求められた私は、次のような話をした。
■中国は世界のパートナーか、それともチャレンジャーか
まず、アジアの地政学リスクについて大きな視点から考えてみたい。それは、中国は現在のグローバルオーダー(世界秩序)を受け入れるグローバルパートナーなのか、それとも現在の秩序に対するチャレンジャーなのかという問題である。
この答えはそれほど単純ではない。一見したところ、中国は二つの顔を持っているからだ。
中国は2001年に世界貿易機関(WTO)へ加盟した。WTOという良い意味での“外圧”をうまく使いながら、中国は国内改革を進めてきた。その点で言えば、グローバルパートナーとしての役割を果たそうとしている。
しかし、領土問題などでは非常にタカ派的な動きを見せている。特に2012年の中国共産党大会で「海洋強国」という言葉が使われるようになったことが大きい。それまでは陸の覇権のようなものを求めた時期はあったものの、海の覇権を公然と求めたのは大きな変化である。現在の秩序に対するチャレンジャーとして振る舞い始めたように思える。
こうした二つの顔について、どのように解釈するかが、中国の問題を知る手がかりとなり、アジアの地政学リスクを考えるうえでのヒントになる。
■2017年は中国指導層の重要な節目
さらに、今の習近平体制が持つ性格も重要な要素になってくる。習近平体制は、キングメーカーによって作られた体制ではない。従来の体制が、キングメーカーによって作られ、キングメーカーの庇護のもとで動いてきたのとは対照的である。
キングメーカーを持たない習近平体制は、国内の改革派と保守派のバランスを巧みに取りながら、権力掌握を進めているようだ。改革派としては、李克強首相の「リコノミクス」を推進している。一方、保守派は領土問題などで非常に強硬な態度で臨んでいる。
また、中国の指導層は2017年を重要な節目と考えている。その年に、次の共産党大会が開かれるからだ。
中国の指導層というのは、党常務委員7人が政治リーダーとなり、それぞれに序列がついている。現在のトップが習近平で、2位が李克強である。実はこの2人以外の5人が、2017年に年齢上の理由から引退すると見られている。
2017年に新たに選ばれる5人が、どういう考えの持ち主かということが、その後の中国に影響を与えることになる。改革派と保守派のバランスを占ううえでも、2017年は要注目である。
■短期的には日中関係は改善
一方で、日本の企業から見ると2012年のショックというものが非常に大きかった。2012年9月に野田政権が尖閣諸島を国有化したことで、中国で反日運動が高まり、日本の対中ビジネスが大きく停滞したからだ。
尖閣国有化後の1年間で、日本の自動車メーカーの対中輸出は実に45%も減少している。もっとも、その半分は東日本大震災の影響が残っていたせいもあるのだが、反日運動が主な原因だったことは確かだろう。
この2012年のショックから、「隣国とは仲良くやらなければならない」ということを、日本の企業は痛感することになった。中国も日本も国内政治問題を抱えているが、同時にわれわれはプラグマティック(実利主義的)な民族でもある。そこで最近になり、関係改善を可能にする状況が政治的に高まってきているのだと思う。
あえて楽観的なシナリオを言えば、短期的には日中関係は改善し、この地域の地政学リスクは減るのではないかと私は見ている。というのも、7月末に福田康夫元首相が北京を訪問し、習近平国家主席と会談したことが明らかになっている。その後、日中外相会談が再開している。
安倍晋三首相も、この夏にあえて靖国神社に参拝しなかった。11月初旬には北京でアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議が開かれる。そのときに日中首脳会談が行われる可能性は決して低くはないと思う。
■習主席は安倍首相と付き合っていかざるを得ない
最近になって習近平国家主席は、すべての権限を掌握したと考えられている。これは従来の国家主席に比べると、非常に早い時期での掌握と言われている。これまでは権力の掌握を最優先し、政策に対してそれほど前向きな姿は見せられなかったが、いよいよ具体的な政策が動き出していくことになるだろう。
その一方で、日本でも安倍首相が安定的な支持を得て、長期政権になる可能性が高まっている。中国国内の権力を掌握した習近平国家主席は、否が応でも安倍首相と付き合っていかざるを得ない。
短期的には楽観的に見ることができる日中関係だが、中期的には依然として厳しい状況が続きそうだ。すでに生産年齢人口が減り始めている中国は、中期的には成長率を大幅に低下させていく。もしそうなれば、経済成長を主導してきた改革派は後退し、領土問題などで強硬な保守派が勢いを増していくだろう。
アジアの地政学リスクには、中国の国内事情が大きく反映されている。ひとまず短期的には、中国の国内事情が安定してきたことから、リスクの低減を期待したい。
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