http://www.asyura2.com/14/hasan90/msg/733.html
Tweet |
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-1238.html
2014年10月02日
本日(10月1日)午前11時過ぎに円は一時1ドル=110.09円と、リーマンショック直前の2008年8月以来の110円台となりました。
当時を少し振り返っておきますと、円キャリートレード(後述)が世界の投資資金を支えていた2007年6月に1ドル=124.12円まで円安が進みました。その後サブプライム問題の深刻化とともに円高となり、投資銀行のべアー・スターンズが経営危機(JPモルガンが救済合併)となった2008年3月に一時1ドル=95.69円まで円高となったものの、2008年8月には再び1ドル=110.64円まで円安に戻っていました。
本日の110円台は、この時以来の円安となります。
ところが2008年9月のリ−マンショックを含む世界金融危機で、わずか3か月後の同年12月には1ドル=87.11円まで円高となりました。
大変重要なことは、リーマンショック以前は世界中で投資需要が溢れかえっており、それに対して量的緩和が行われていたのは2001年3月〜2006年3月の日銀だけだったので、結果的に世界中で円資金を調達して外貨に交換して(海外の)資産を購入する「円キャリートレード」が活発に行われ、円安が加速していました。
逆にベアー・スターンズの経営危機やリーマンショックを含む世界金融危機をきっかけに、世界中で資産価格が急落したためその原資として調達・外貨に交換されていた円が一気に買い戻され、急激に円高となりました。
この辺りから、世界経済が混乱したときに「安全資産である円が買われて円高になる」との間違った解説が定着し、いまだにそのままニュースなどで使われています。
もう一度繰り返しますが本日の110円台は、このリーマンショック直前に一時的に円安に戻っていたときの水準です。当時はまだ世界中で投資需要が剥落しておらず、円資金の調達・外貨への交換(つまり円売り)もまだ高水準だった時期です。
それでは現在も、円が世界中で調達されて外貨に交換されて円安となっているのでしょうか?
確かに現時点では、FRBの量的緩和が今月中に終了し来年のどこかで利上げが行われると考えられており、逆に日銀では2回目の消費増税決定を年内に強行するために(2%の物価上昇実現のためとしていますが)躊躇なく金融緩和(量的緩和のことです)を行うと息巻いています。
ところが肝心の世界の投資需要は、株式市場や国債市場は好調ではあるものの、設備投資や資源開発投資は明らかに過剰気味であり、住宅市場を含む不動産投資も決して好調とは思えません。
それよりも世界中で緩和マネーが溢れかえっているため、わざわざ円を調達して外貨に換えて投資する必要は全くありません。
つまり世界中の円の需給関係は、リーマンショック以前と現在では全く違います。この状態にもかかわらず円は当時(2008年8月)の円安水準に並んだことになります。
確かに日本の経常収支の黒字幅は大きく減少して赤字転落寸前となっていますが、この傾向は今に始まったことではなく、最近の急激な円安加速の説明にはなりません。
直近の円の対ドル相場は、7月10日の101.06円と7月18日の101.08円をダブルボトムとし、オバマ大統領のイラク空爆指示のあった8月8日の101.50円が唯一の「押し目」であり、1か月前の9月1日でも104.34円(NY終値)でした。
つまり円は対ドルで「ほんの1か月ちょっとの間」に急落したことになります。
どうしてでしょう?
日本政府と日銀による意識的な円安誘導と、米国政府とFRBによるドル高誘導と、日本人投資家(機関投資家や公的資金を含む)による猛烈な仮需のドル買いの「複合要因」と考えます。
アベノミクス開始以来の円安は貿易赤字を拡大して輸入物価を急上昇させました。最近の円安加速は、ここから1〜2か月の間に発表される貿易統計や物価統計をさらに悪化させるはずです。まさに一部の輸出大企業を除けば「弊害」しかない円安加速となります。
しかし日本全体で考えれば、もっともっと大きな「弊害」があるのですが、続きます。
http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-1239.html
2014年10月03日
昨日の続きですが、本日(10月2日)の日経平均は420円安の15661円と1カ月ぶりの水準となり、昨日一時110円を突破した円の対ドル相場も本日夕方には1ドル=108.32円まで「円高」となりました。
本日の日経平均急落の理由として、前日のNY株式下落(238ドル安の16804ドル)や、香港の民主化デモや、「円高」などが羅列されていますが、円は昨日に比べてスピード調整しただけでまだまだかなりの「円安」です。
昨日のNY株式の下落は、来年どこかの利上げを懸念したわけではなく(来年に経済減速やNY株安となれば当然に見送りとなるため、今から心配しても意味がありません)、資産買入れ(QE3)終了の悪影響がこれから出てくる潜在的な懸念があると考えます。
QE1とQE2終了時と、昨年5〜6月にバーナンキ議長(当時)がQE3縮小を示唆したとき、NY株式や新興国株式にかなりの悪影響が出ました。資産買入れは終了してしまうと簡単には復活できないため、実際にNY株式や新興国株式に悪影響が出てくると拡大してしまう可能性はあります。
その可能性はどれほどでしょう? 理由はあとで書きますが、今のところ「ほとんどない」と考えます。
昨日も強調したのですが日本政府と日銀は本年中に(12月8日だそうです)2回目の消費増税を決定するために株式市場を「堅調」に維持する必要があり、そのためには円安加速が必要と「本気で」考えています。
つまり消費増税のためだけの「官制円安」であり「官制株高」となります。
消費増税や円安加速が、どれほど日本経済に悪影響を与えるかなどはどうでもよいのでしょう。
本日の日経平均の急落は、さすがに円安加速は日本経済に弊害となり、消費増税のためだけの「官制株高」では限度があると懸念されはじめたと考えます。さすがに「違和感」が出てきたのでしょう。
それでは日経平均はこのまま下落に転じてしまうのでしょうか?その可能性も今のところ「あまりない」と考えます。
NY株式が資産買入れ(QE3)終了の悪影響で本格的に下落に転じる可能性が「ほとんどない」と考える理由は、米国では米国政府と米国経済にとって(米国政府の方が優先しますが)最良の金融政策に遅滞なく踏み切り、現時点では「量的緩和を終了させて来年のどこかからの利上げを市場に印象づけることによりドル高政策に転じた」と考えるからです。
米国に限らず世界経済は「経済成長率の減速」と「インフレ率と長期金利の下落」が長期的に継続するはずで、そのなかでは「ドル安のリスクが残る資産買入れは終了させて、FOMCメンバーによる来年以降のFF金利予想を引き上げてドル高を演出し、海外からの資本流入を促進し国内資金の海外流出を抑制して株式など資産価格を上昇させる政策」に転じたと考えます。実際の利上げはあくまでも来年の経済状況次第です。
結果的にNY株式がこのまま下落に転じる可能性は「ほとんどない」となります。
それでは日本政府と日銀は、日本経済や国民の生活などはどうでもよく、ひたすら2回目の消費増税を決定してしまうために「官制株高」と「官制円安」を必死に維持させるため、これもそれなりに威力があるはずです。
米国と動機がかなり違いますが、結果的に日経平均がこのまま下落に転じる可能性も「あまりない」となります。
要するにNY株式も日経平均も同じように当面は「堅調」となるはずですが、日本の「官制株高」と「官制円安」のツケは容赦なく日本経済を直撃します。
円安が継続すると円建ての日本国債を喜んで保有する海外政府や海外投資家などいるはずがなく、1000兆円をこえる公的債務を国内金融資産だけで賄えなくなる時期は「それほど遠くない」ため、日本は一刻も早く量的緩和を打ち切り、円高誘導に金融政策を切り替える必要があります。
円の価値を毀損させる「2%物価上昇目標」ではなく、ちょうど円安となったこのタイミングをとらえ「2%円高目標」に切り替えるべきと考えます。それがこれからの日本にとって最良の金融政策だからです。
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。