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円安はどこまで進むのか(マツダの主力車種「CX-5」、撮影:今井康一)
当面のドルの高値は、1ドル=112円? 1ドル=120円時代は本当にやって来るのか
http://toyokeizai.net/articles/-/49569
2014年10月03日 門田 真一郎:バークレイズ銀行東京支店 為替ストラテジスト 東洋経済
10月1日、ドル円相場が約6年1か月ぶりに、一時110円台に乗せた。今年のドル円相場は2月以降、概ね1ドル=102円前後のレンジで動意の薄い展開が続いていたが、8月10日前後からはかなりのペースでドルが上昇。一気に約8円もドル高が進んだ。
■米国は来年6月利上げへ、一段のドル上昇の材料に
ここまでのドル円の上昇は、ドル高と円安の双方を反映したものだ。実際、ドルの名目実効為替レート(NEER)が8月1日以降に2.5%上昇した一方、円のNEERは同期間に4.3%低下している。前者は堅調な米景気動向やFRBの利上げ観測の高まり、後者は4〜6月期以降の日本経済の下振れや、公的年金の資産運用を巡る憶測などが背景にあった。
では、ドル高円安は今後も続くのか。またその場合はどこまで上昇するのだろうか。ドル円相場を見通すうえで、カギとなるのは日米の金融政策見通しだ。
筆者は米国経済が順調な回復を続けるなか、FRB(連邦準備制度理事会)が10月28日〜29日のFOMC(連邦公開市場委員会)でQE3(量的緩和第3弾)を終了し、来年6月のFOMCでは、最初の利上げに踏み切ると予想している。
一方、日銀については、現時点で年内の追加緩和は見込んでいないものの、金融緩和スタンスの転換には程遠い状況だ。こうした日米の金融政策見通しの乖離は、ドル円相場の一段の上昇を支持する材料となろう。
ただし、日本経済が徐々に再び順調な回復に向かうと見られることや、円安がすでにかなり進行していることに加え、米国では市場によるFRBの利上げの織り込みも進んでいることから、ここから先のドル円の上昇ペースは最近数ヵ月間と比べると緩やかなものになると見ている。具体的には、バークレイズの為替モデルでは、当面112円までの円安進行を示唆している。
■リスク残るが、基本的にはドルの底堅い動きを予想
当社のドル円見通しに対する「上振れリスク」としては、まずFRBの利上げ見通しの前倒しが挙げられよう。米労働市場が予想を上回る回復を達成し、賃金の上昇圧力が強まる環境となれば、FRBが来年3月まで利上げを前倒しする可能性は否定できない。
このほかにも、日本経済・物価見通しの悪化で日銀の緩和観測が高まった場合や、日本人投資家による対外投資が活発化した場合、想定よりも円安に振れる可能性もあろう。こうした要因が重なった場合、ドル円が110円台半ばを超えて上昇していく可能性があろう。
一方、下振れリスクとしては、世界経済の減速や地政学的懸念の高まりなどで、リスク選好が後退した場合が挙げられる。実際、10月1日にドル円は一時110円台に乗せたが、その後は低調な米9月ISM製造業指数や世界的な株安といったリスク選好の悪化を背景に、再び109円を割り込んでいる。
また、最近のドル高や商品価格の下落によって米国のコア・インフレに下押し圧力が掛かった場合、利上げが後ずれするリスクもあろう。ダドリー・ニューヨーク連銀総裁は9月22日のブルームバーグのインタビューに対し、ドル高は「物価を押し下げるため、二重の使命の達成をより困難にする」ため、「既存の金融政策の適正度合いに影響する」と警鐘を鳴らした。
ただし、仮にドル円に下押し圧力が掛かった場合も、下落余地は限定的だと考えられよう。ドル円の水準がここ数カ月間で急速に切り上がったことから、国内外でも買いそびれた投資家などが多いと見られるためだ。
そのため、懸念材料は残るものの基本的には当面底堅い推移を続ける公算が大きいと考えている。
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