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日立造船、造船撤退から10年、漂着した「儲かる環境ビジネス」で世界トップも視野に
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20141003-00010004-bjournal-bus_all
Business Journal 10月3日(金)6時0分配信
「日立」といえば、かつて関東では日立製作所、関西では日立造船を指していたが、今の日立造船に船を建造するドックはどこにもない。祖業の造船事業から撤退した同社は、数々の失敗を繰り返しながらも環境ビジネスに成長の活路を求め、もがきながらも「儲かる環境ビジネス」のビジネスモデル確立に挑んでいる。
日立造船が8月1日に発表した2015年3月期第1四半期(14年4―6月)の連結決算は、売上高は前期比12.1%増の652億円だったが、営業損益と最終損益は赤字に沈んだ。前者は43億円の赤字、後者は17億円の赤字だった。主力の「環境・プラント事業」は好調だったが、船舶エンジン、トンネル掘削機事業などの不振が響いた。このため、週明け4日の株価は嫌気売りで急落、一時は前週末比24円(4.8%)安の501円まで売られた。
とはいえ、投資家の信用を失った結果ではなく、証券アナリストは「嫌気売りに走ったのは利ザヤを稼ぐ投機筋。一般投資家が売り浴びせたわけではない。中長期的にみると、主力の環境・プラント事業が安定している」と解説する。同事業の売上高比率は61.9%(14年3月期)に達するが、その大半はゴミ処理施設(ゴミ焼却・発電・リサイクル施設)事業による稼ぎだ。
日立造船は1965年、大阪府堺市に国内初となるゴミ焼却発電施設を建設したのを皮切りにゴミ処理施設事業に参入、13年3月末現在、国内と海外で各々約200件の実績があり、今や世界有数のゴミ処理施設エンジニアリング会社に成長している。また、同社が自治体から保守・運営を受託しているゴミ処理施設は全国30カ所を超えている。10年5月の廃棄物処理法改正で施設運営も民間に開放されたため、施設建設で抜群の実績を示す同社への運営委託が今後も着実に増え続けるとみられている。
受注の変動が大きい「建てたら終わり」の施設建設と異なり、施設運営は安定的な収益源となる。従って「ゴミ処理施設運営受託事業は、中長期的に収益面での安定的な伸びが期待できる。それが株式市場における日立造船の強み」(証券アナリスト)というわけだ。実際、同社はゴミ処理関連施設の保守・運用サービスで売上高全体の42%(14年3月期)も稼ぎ出しており、業績の安定性は高い。
●陸に上がった造船会社
日立造船は幕末の英国人貿易商、E・H・ハンターが1881年に創業した大阪鉄工所がルーツであり、関西における洋式造船業のパイオニアといわれ、明治時代後期には日本初の洋式捕鯨船とタンカーを建造するなど日本三大造船所の1つに数えられた。その後、1936年に日立製作所の子会社となり、43年に社名を現社名に変更。しかし46年の財閥解体第2次指定により日立製作所グループから離脱したが、社名は変更しなかった。
日本の造船業は高度経済成長の波に乗って急成長し、70年代前半にピークを迎えたが、その波に乗って同社も成長を続けた。だが79年の石油ショック、85年のプラザ合意以降の円高、90年代以降の韓国・中国勢の追い上げなどで日本の造船業は国際競争力を急速に低下させていった。それに伴い日立造船の経営も悪化。造船事業を独力で継続するのは困難と判断した同社は02年、旧NKK(現JFEホールディングス)の造船事業部門と自社の同部門を統合、ユニバーサル造船を設立するかたちで造船事業を分離し、「陸に上がった造船会社」となった。
造船事業から撤退した日立造船に、その代替となる有力事業は何もなかった。生き残るためには、造船事業の周辺事業的に行っていたゴミ処理施設、船舶エンジン、トンネル掘削機、海洋防災設備などの事業強化を図るしかなかった。ポスト造船の有望事業を求め、ヒラメ養殖など約100件の新事業にも手を出したが、ことごとく失敗した。
それから10年。試行錯誤の先にたどり着いたのがゴミ処理施設事業だった。廃棄物リサイクルなど環境意識の高まりや、それに対応した廃棄物処理法の度重なる改正が同事業を成長させていた。
2003年以降、造船事業全盛時代に蓄積した資産の切り売りで通期の最終赤字を辛うじて回避しつつ生き残り策を模索、環境ビジネスに活路を見いだし、ゴミ処理施設事業を成長戦略の要に位置付けられるようになったのは「スイスのイノバを10年末に買収、子会社化したのがきっかけだった」(証券アナリスト)。
イノバの前身のフォンロールは、日立造船ゴミ処理施設事業のいわば育ての親。日立造船は1960年に同社とのライセンス契約により欧州式ゴミ焼却発電施設技術を導入、それを元に65年、国内初のゴミ焼却発電施設建設に成功した経緯がある。以降、フォンロール時代を含め、イノバと日立造船はライセンサーとライセンシーの関係にあった。
ところがイノバの親会社が倒産し、イノバが売りに出されたことから日立造船は、自社ゴミ処理施設事業を飛躍させるチャンスと判断し買収したのだった。これによりイノバが欧州で保持していたゴミ焼却発電施設市場のシェア20%を獲得したほか、同社の営業拠点網を通じて北米、インドなど世界中で同事業を展開できる体制が整ったからだ。
●「儲かる環境ビジネス」の成長戦略
だが問題もあった。それは収益性だった。買収により設立された日立造船イノバの13年3月期の売上高は400億円近くと推計されているが、営業利益は「たった数億円しかない」(日立造船関係者)。実はイノバはゴミ焼却発電施設の設計から建設までを一手に手掛ける欧州随一のEPCコンストラクターだが、日立造船のように施設建設後の保守・運用サービスは行っていない。つまり「建てるまでのビジネス」の会社だった。
建設関係者は「ゴミ処理施設のEPCコンストラクション事業は、1件当たりの受注額が100億円を超えるプロジェクトが多いが、引き渡してみると赤字受注が大半」と打ち明ける。ゴミ焼却発電施設事業で収益を上げるためには、建てた後の保守・運用サービスを受注しなければならないのだが、イノバにはそのノウハウはなく、受注実績で欧州トップとはいえ業績は不安定だった。
そこで日立造船がこれからの成長戦略に据えているのが、ゴミ処理施設事業の保守・運用サービス強化だ。同社が今年5月に発表した14―16年度の新中期経営計画では、13年度に売上高全体の42%(1395億円)だった保守・運用サービスの売上高比率を、16年度に50%(2000億円)まで高める目標を掲げている。それにより環境ビジネス(環境・プラント事業)の営業利益率も4.8%から6.3%へと、1.5ポイント改善する計画だ。また、欧州でも保守・運用サービスを展開できるようになれば、「16年度にイノバの営業利益を30億円程度まで引き上げられる」(日立造船関係者)と見込んでいる。地味な事業ながら保守・運用サービス事業で小さな利益を積み重ね、それを土台に「世界トップのゴミ処理施設エンジニアリング会社を目指す」(同)。これが、同社が描く成長戦略である。
証券アナリストも「10年以上も追い風が吹き続きながら、ちっとも儲からないのが環境ビジネス。その中で保守・運用サービス込みで攻勢をかけている日立造船のゴミ処理施設事業は『儲かる環境ビジネス』に最も近い位置にいる」と評価する。4半期程度の赤字決算では、投資家が見限らないゆえんともいえる。
福井晋/フリーライター
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