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http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20141001/dms1410010700003-n1.htm
2014.10.01 「日本」の解き方
最近の円安傾向を批判する人たちから、「円安は交易条件を悪化させるので問題である」という指摘が出ている。交易条件とはどんなものだろうか。そして、現状の円安で交易条件は実際に悪化しているのだろうか。
まず、交易条件とは輸出価格と輸入価格の比である。これが良くなれば、輸入価格に比べて輸出価格が高くなるので、日本が有利に貿易を行っていると考えることができる。逆に悪化すれば、貿易で不利となる。
確かに貿易部門にとって重要な指標ではあるが、日本経済全体にとってはさほどでもない。というのは、日本の貿易依存度は、世界でも低いほうである。それだけ内需が大きい国なのだ。
そこで、実際のデータをみておこう。財務省の貿易統計における輸出価格指数と輸入価格指数を使う方法と、日銀の企業物価から計算する方法があるが、両者ともに同じような動きなので、財務省の貿易統計でみる。
2000年からみると、05年ごろまでは比較的安定していたが、その後、08年のリーマン・ショックまでは悪化した。そして09年まで急速に改善した後、11年初まで悪化した。その後は大きく変化していない。
一方、為替レートは、00年から02年初まで円安で、05年ごろまでは円高傾向だったが、再び円安に反転、07年央まで続いた。その後、急速な円高が12年後半まで続き、12年後半からは大きく円安になっている。
こうしてみると、どうも為替と交易条件の関係はなさそうだ。ちなみに、最近10年間で、両者の相関係数を計算すると0・15となり、ほぼ相関はないといっていい。
交易条件に影響を与えるのは、むしろ原油価格のほうが大きい。最近10年間の相関係数はマイナス0・85(マイナス1に近づくほど負の相関が強い)だ。つまり、原油価格が上昇すると交易条件は悪化する。
ここで、原油価格の動向は日本にとってまったくコントロールできないことに留意すべきだ。
一部のエコノミストは、輸入のほうが輸出より外貨建てが多いからという理由で円安が交易条件の悪化になると思い込んでいる。交易条件の分母しか見ていない。分母の輸入価格は上がるだろうが分子の輸出価格も上がる。だから交易条件がどうなるかは一概にはいえない。それがデータにも表れているのだ。
こうした経済データをよく見ているエコノミストならば、交易条件は為替レートよりも原油価格の動向に左右されることを知っているはず。
逆にいえば、「円安で交易条件が悪化する」という人は、データも見ず、経済学的な理解もできていないことを意味する。
そうした人たちを思い浮かべると、金融政策の効果が理解できずに、最近の円安を見誤った人たちだろう。その上で、円安という現実を突きつけられて、苦し紛れに「円安は交易条件を悪化させる」と言ってしまったのだろう。交易条件は為替より原油価格で決まるとデータを示したら、どう答えるのだろうか。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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