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多種多様な色を生み出す染料。中でも青色は使用量が多く、値上がりの影響も大きい
染料の価格高騰に潜む"あの国"の政策転換 染工場からは悲痛な叫びが上がる
http://toyokeizai.net/articles/-/48680
2014年09月28日 中川 雅博:東洋経済 編集局記者
世の中の繊維製品には多種多様な色がある。国内外の染工場で染め上げられたものが加工され、衣服となり、自動車のシートとなる。しかし今、多くの染色加工業者にとって悩ましい事態が起きている。染料の高騰だ。
現在、世界中で使われる染料、あるいはその原料のほとんどが中国で造られている。値上がりの引き金となったのは、同国の環境規制強化だ。
■習体制下で方針転換
規制の標的となったのは染料工場の排水。方針自体は2011年から始まった中国共産党による第12次5カ年計画ですでに打ち出されていた。ただ、当局に罰金を払っていれば、事業は継続できた。
ところが、習近平体制に移行後、「腐敗は許されない」と規制強化へ転換。排水処理装置の導入が徹底されているのが現在の状況だ。
処理装置の能力に合わせるために、生産量を抑えなければならなくなったり、操業停止に追い込まれた工場もあるという。
この状況は2013年以降、特に深刻さを増している。実際、輸入染料の価格推移を見ると、2013年から足元にかけての高騰ぶりはすさまじい。
特に値上がりの顕著なのが、ポリエステルの染色に用いられる「分散染料」だ。自動車シートに使われる代表的な青色染料原末の価格は、昨年3月に1キログラム当たり825〜1050円だったが、今年8月には2170〜3090円程度まで上昇。黒色を出すのにも使われるので、ほかの色より需要が大きいためだ。
程度の違いはあるが、ナイロンや羊毛に使われる「酸性染料」や、綿に使われる「反応染料」も同様の動きだ。
値上がりの要因は、中国の規制以外にもある。染料や関連する原材料が相対で取引されていて業界共通の相場がないことと、中国の染料業界で寡占化が進んでいることだ。
国内最大手の染料メーカー、日本化薬の石垣克己・色材事業部長は「適正な価格がどうしても形成されにくい。ほかの国でも造っていれば、こんなことにならなかった」と漏らす。同社が購入する原料のほとんどは中国製だ。
価格転嫁は厳しい
染色加工業者にとって、収益源の大半を染色の加工料金が占める。だが、「染料価格が上がっても、加工料金への転嫁は厳しい」(業界関係者)という声も聞かれる。
自動車用シート材の国内最大手、セーレンは自社で染色も手掛けている。「染料の高騰は、2013年度比で億円単位のコストアップ要因」(経営企画部)だという。アパレル向けに染色加工しているサカイオーベックスは、染料を含むコストアップによって2014年度は減益を見込んでいる。
ある染色加工会社の幹部は「異常な値上がりが続いており、戦々恐々としている。おまけに同業他社が価格転嫁をしていないため、我慢比べになっている」とも嘆く。
染料だけではなく、円安などに伴うエネルギーコストの上昇も痛手だ。このまま製品価格に転嫁する動きが広がらなければ、経営体力に劣る染色加工業者が淘汰される動きも出てきそうだ。
(「週刊東洋経済」2014年9月27日号<9月22日発売>掲載の「価格を読む」を転載)
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