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大手損保もNG 交通事故後の歯科治療に自動車保険が適用されない理由〈週刊朝日〉
http://www.asyura2.com/14/hasan90/msg/617.html
投稿者 赤かぶ 日時 2014 年 9 月 27 日 16:19:05: igsppGRN/E9PQ
 

大手損保もNG 交通事故後の歯科治療に自動車保険が適用されない理由〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140927-00000006-sasahi-life
週刊朝日  2014年10月3日号より抜粋


 交通事故で体が痛い、頭痛がする、そんなときは整形外科など医師にかかるのが通常だろう。けれど、医科で治りにくい全身症状が、歯科で改善されることがある。患者も増えているのだが、自動車保険が歯科医療を軽視している。歯科治療に保険金が支払われないケースが多く、保険加入者や歯科医師たちは怒っている。

 愛知県にある日本生体咬合研究所の所長で歯科医師の中村昭二氏が、自動車保険について、こんな問題を指摘する。

「交通事故の被害者を治療する場合、医科の場合には、自覚症状の有無にかかわらず、ほぼ無条件で自賠責保険が適用され、保険で精密検査を受けることもできる。それが、歯科となると損保会社の態度は急変します。被害者が苦痛を訴えて来院しているにもかかわらず無視され、顎関節症や咬合痛があっても、被害者自身が因果関係を示さなければ検査代も応急処置費用も出さないというのです」

 事故に遭って医科で治療すれば保険金が出るが、歯科で治療すると保険金が支払われないというのだ。これは損保会社によっても対応が違うと中村氏は話す。

「私の経験では、三井住友海上とJA共済などは、精密検査や応急処置、診断料だけはとりあえず認めてくれますが、ほかの大手損保は認めてくれないところが多い。私の患者さんの中には、東京海上日動火災や損保ジャパン日本興亜といった会社とトラブルになっている方もおられます」

 主婦のAさん(43)も、中村氏に応急処置などを受けたが、損保会社から保険金支払いを拒否されて困惑している患者の一人だ。

 Aさんは昨年5月、車で直進中、路外から左折してきた車に左後方から衝突された。この事故の直後から右の顎関節が痛み、口が開きづらく、ものをかんだりのみ込んだりしにくくなったほか、自身の舌をかんでしまうようになった。さらに肩、腰、足首、右側頭部にも痛みを感じはじめた。直後は整形外科に通院したが、症状が改善せず、知人の紹介で中村氏を訪ねた。

 損保会社の理不尽な対応を何度も体験してきた中村氏は、Aさんの診断前に、昨年発足した日本歯科鞭打ち症研究会の規定に基づいて、トラブル回避のため、加害者側の任意保険会社「あいおいニッセイ同和損保」に連絡。同損保から、

<精密検査および応急処置等の費用につきましては、当社は直接、貴歯科医院に全額お支払い致します>

 という承諾の書面を受け取った。その上で、検査をした結果、Aさんは「外傷性下顎骨変位に伴う顎関節症および咬合異常、それに伴う咬合関連症状」と診断されて、応急処置を開始。症状は改善に向かった。

 ところが昨年12月20日、Aさんのもとに突然、同損保代理人の弁護士から「通知書」が届いた。書面には、既に開始している歯科治療に関して、

<受傷機転が明らかではなく、受傷の事実を確認できません。また、仮に何らかの症状があるとしても、本件事故との相当因果関係が不明であるため、当方においてお支払いすることはできません>

 と書かれていた。さらに、年明けの1月7日には、中村氏の元にも同代理人から、「治療費は支払えない」という一方的な通知が届いた。中村氏は憤りを隠せない様子で語る。

「事前にとりつけた承諾書を反故にされただけではありません。実は、損保会社の医療調査スタッフは、私が出した診断資料の確認のため、12月25日に私の歯科医院を訪れました。私は客観的資料に基づき、多くの時間をかけて事故と症状との因果関係があることを説明する書類を作成し、32枚にも及ぶ証拠資料をスタッフの要望により提出したのですが、それを無視されたのです」

 前述のとおり、Aさんの元に治療費は支払えないという通知が届いたのは12月20日。同損保は、実際に被害者を診断し治療した中村氏の説明を聞く前に、結論を出していたことがわかる。「これには当院を訪れた医療調査スタッフも驚いたようで、『寝耳に水』と嘆いていました」(中村氏)

 同損保は、中村氏との面談前に「支払わない」と結論を出したことについて、こうコメントする。

「当社としては中村先生の診断結果を否定しているわけではないが、事故態様と中村先生の受診当時の診断書や審査所見を含む診断結果などを基に弁護士に判断を委ねたところ、本件事故と受傷との間には相当因果関係がないとの結論に至った」(損害サービス業務部自動車グループ)

 社内で判断するにあたって、歯科の専門家の意見は聞いたのかと尋ねると、

「当社の顧問医である歯科医師の意見を仰いだ」

 とのこと。しかし、Aさんとその“顧問医”は面談すらしていない。当事者を診察することなしに、「因果関係」を否定したことになる。

 それは許されるのだろうか。あいおいニッセイ同和損保広報室の見解はこうだ。

「提示された資料に基づいて一般的知見を述べること、すなわち、資料の範囲内で医師が考えを述べていることは違法ではない。今回は、その見解を因果関係有無の判断の一つの材料としている。裁判所の鑑定においても、診察することなく資料により医師が鑑定意見を述べることはままあること」

 Aさんの代理人をつとめる名古屋第一法律事務所の川口創弁護士は、こうした損保会社の対応は違法ではないか、と疑問を呈する。

「保険会社の顧問医が、患者を直接診断することなく因果関係を否定するケースは実際には多々あります。しかし、医師法も歯科医師法も、『自ら診察しないで診断書を交付してはならない』としています。意見書も実質的に診断書といえる以上、直接診察をせずに意見書を作成することは違法だという指摘はかねてある。今回も、歯科医師法に違反する可能性があります。背景には歯科治療の必要性についての無理解があると言わざるを得ないでしょう」

 中村氏も語る。

「まさに、歯科医学、歯科医療に対する冒涜(ぼうとく)です。このような損保会社の対応によって早期治療が受けられず、症状が悪化した被害者もいるのです」


 

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