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製薬各社を悩ます特許切れ問題とは?第一三共が急ぐ次期主力商品、早くも懸念広まる
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140926-00010005-bjournal-bus_all
Business Journal 9月26日(金)6時0分配信
製薬大手の第一三共が今年度中に発売を予定している抗凝固剤の新薬「エドキサバン」の販売戦略に対し、早くも株式市場関係者の間で懸念の声が広がっている。
エドキサバンは血管中に血栓ができにくくする抗凝固剤であり、血管が詰まることで起きる脳卒中防止効果が既存医薬品より高いといわれている。同社はこのエドキサバンで年間1000億円程度の売り上げを目指している。
同社がエドキサバンの発売を急いでいるのは、現在の主力医薬品が2016年以降に特許切れとなるパテントクリフを迎えるため。先発医薬品がパテントクリフを迎えると、他社が同一成分のジェネリック(後発医薬品)を市場投入してくるため売り上げが激減し、先発の旨味がなくなる。パテントクリフは新薬を開発する製薬会社共通の悩みの種であり、パテントクリフを迎える前に次の新薬を発売し、特許切れで売り上げが激減する医薬品の穴を埋める必要がある。
例えばエーザイの場合、主力医薬品だったアルツハイマー病治療薬「アリセプト」の特許が10年から11年にかけて各国で切れ、同薬の12年3月期の売上高が前年同期の2904億円から1471億円へと半減した。
第一三共も、主力医薬品の高血圧症治療薬「オルメテック」にパテントクリフが迫っている。04年発売のオルメテックは同社の主力医薬品であり、14年3月期の連結売上高1兆1182億円のうち26.8%(3002億円)を同薬で稼ぎ出している。この稼ぎ頭のパテントクリフが、日本と欧州は2年半後の17年2月、同薬売り上げの約35%を占める最大市場の米国は16年10月に迫っているのだ。その米国では、特許の切れた先発医薬品は急速にジェネリックにとって代わられ、特許切れ初年度で売り上げの90%が消失するケースもある。
第一三共が、刻一刻とパテントクリフに近づくオルメテックに代わる次期主力として期待しているのが前出のエドキサバン。中山譲治社長がことあるごとに「最短のスケジュールで発売し、早急に大型医薬品に育てる」と市場関係者にPRしてきた新薬だ。
抗凝固薬は1960年代に発売された「ワルファリン」が長く使われ、現在も処方される抗凝固剤全体の約9割を占めている。だが、ワルファリンは投与の前に採血し、血中濃度を測定してからでなければ処方できないのが欠点。つまり処方には手間と時間がかかるわけだ。そんな抗凝固剤市場に近年、こうした手間と時間がかからず、食事制限も不要なNOAC(新抗凝固剤)が登場し、急速に処方シェアを伸ばしている。
●自社単独販売という賭け
第一三共が開発したエドキサバンも、このNOACに属する新薬。同社がPRに力を入れているように、大型医薬品に成長して当然と思われるのだが、市場関係者からは早くも懸念材料が指摘されている。
NOAC事業には米ファイザー、米ブリストル・マイヤーズスクイブ、独バイエルの3社が先発参入しており、第一三共は4番手の参入になるからだ。欧米の先発3社がすでに態勢固めを終えている市場に進出し、先発のシェアを奪うのは容易ではない。
この懸念に応えて、第一三共が打ち出した販売戦略が自社単独販売だった。同社は今年4月1日付で経営戦略部と製品戦略部を統合した。エドキサバンの日米欧販売の司令塔となる部署だ。同社に限らず国内製薬会社が海外で医薬品を販売する場合、販売先の地域で強力な販売網を持っている現地大手と販売提携契約を結び、共同販売するのが基本。ところが、同社は「従来の販売提携では、提携先に販売手数料や販促手数料を支払わなければならず、収益阻害要因になる。当社主導の販促策も打ち難い。そこで刷新した営業体制の下で、効率的な販売を行いたい」との理由で今年5月16日、「エドキサバンは単独販売する」との方針を示したのだった。
だが、第一三共の売上高ランキングは、国内市場(13年調査)でこそ武田薬品工業、アステラス製薬に次ぐ3位だが、世界市場(12年調査)では19位。その第一三共がエドキサバンを欧米で自社単独販売するというのだが、NOAC事業で競合することになる米ファイザーは世界市場のトップで、売上高は第一三共の6倍に近い。米ブリストル・マイヤーズスクイブは世界市場12位で独バイエルは16位。「販売力も経営体力も勝る3強を相手に、本当に売れるのか」(証券関係者)と、不安の声が上がるのも当然と思われる。
●複眼経営の誤算
第一三共は08年に約5000億円で印ジェネリック最大手のランバクシー・ラボラトリーズを買収したものの品質管理問題でつまずき、今年4月、同社を印サン・ファーマシューティカル・インダストリーズへ実質的に売却。15年3月期には相当額の損失計上が予想されている。このランバクシーを買収した目的は、「新薬とジェネリック、先進国と新興国のハイブリッド経営『複眼経営』を実現する」(当時の庄田隆社長、現相談役)だった。しかし、買収計画や買収後の経営管理のずさんさに品質管理問題が加わり、複眼経営は絵に描いた餅となった。
証券アナリストは「エドキサバンの単独販売戦略はランバクシー問題と同じ危うさを感じる。経営説明会やその後の各所での単独販売に関する中山社長の説明を聞いても、どれだけ海外のNOAC事業を分析し、緻密な計画を立てたのかが見えてこない」と述べ、「単独販売ありき」の中山社長の戦略を警戒している。
第一三共は単独販売戦略を成功させ、こうした市場関係者らの懸念を一掃することができるのか。今後の動向に注目が集まっている。
田沢良彦/経済ジャーナリスト
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